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感想戦

「バトラー、どうだったかな?」

 オットー様がこちらに近づきながら、この時代のバトラーさんに声をかけた。その後ろには富蔵さん達が面白くなさそうに付き従っている。ああ、俺の負けなんだ。

「非常に変わった面白い能力でしたね。この年になって新しいタイプの力に出会うとは思っていませんでした」

 老紳士は続ける。

「なによりもチグハグなのがなんとも奇妙でした」

「チグハグ? 確かに魔法と魔法力の移動や身体能力がマッチしていない感じだったが……」

 オットー様の感想に老紳士が首を横に振る。

「彼のは魔法ではありませんよ。根本的に異なるナニカです」

 魔法以外ってことを見抜いて、新たな未知の力を信じることができるのって柔軟なんだろうな。それとも魔法を完全に熟知しているから確信をもってわかるのか? そして当然ながら俺に視線が集まる。どうしようかな? 俺が迷っていると老紳士が咳払いを一つした。

「彼の力は社会秩序の維持を優先する者にとって歓迎されざるものです。興味本位で詮索するべきではないかと存じます」

 そして一呼吸置く。

「それでもと仰るのならば、不肖バトラーも解明に協力いたしますが……」

「あ~、もうよい。ただの好奇心だ。私もゴーレムのような余計な物がなければと思う程度には貴族なんだ。奇妙なことには首を突っ込まんよ」

 オットー様は面倒そうに手を振った。

「なんにせよ、地下ここで手合わせをしてよかったな」

「左様でございますな」

 オットー様に旧バトラーさんが恭しく同意した。


「それでは感想戦の続きをしてくれ」

 オットー様が老紳士を促す。なにを言っているのかわからない。俺は富蔵さんに助けを求めるような視線を送ってみた。

「バトラーがお前の問題点を指摘してくれるってことだよ。ちゃんと聞いておけよ」

 当のバトラーさんは少し考えている様子で俺を見ていた。

「……先ほど申し上げたようにわたくしとしても初めて対峙する能力なれば、的確性に自信はありませんが」

 そう前置きして続ける。

「大前提として、その力はあまり人に見せるべきものではございません。新たな力は危険視されますので、ご自分のみならず、周囲にも迷惑がかかります」

 王都とかで散々見せちゃったよ!

「通常は不思議な魔法と思われる程度ですが、見る者が見れば一目で魔法ではないことがわかります。加えて言えば、新たな力を嫌う層に限って、魔法ではないと見破りますからな」

 そして老紳士はオットー様の方をちらりと見た。

「かく言う私も主の為にならないと判断すれば、あなた様の敵となりましょう」

 絶対に敵にはしたくない。けど、向こうから敵って思われたらそれまでなのか。

「しかし、手合わせした感じではその能力がなければ人並みの活動すら困難でしょう」

 図星である。黙ってうなずく。

「さらに自分でもコントロールができてない部分が多いですよね? 先ほどの戦いでは回復などですが」

 あの短い間にどこまで見破られたんだ?

「ですから、その力は使わざる得ない。あるいは無意識に使ってしまうのは回避できません。それを前提にすれば、上手に、不自然なく、巧妙に隠しながら使うとよろしいでしょう。いえ、そう使うしかないのです。もしあなた様がなにかをなしたいと望むのならば、あるいは近しい者に迷惑をかけたくないと望むのならば……ですが」

 聞き様によっては、俺の事情さえも知っていそうな口ぶりである。まさかこのバトラーさんも俺とか言うんじゃないだろうね? 体付きとかが白人のそれだし、強さがこの世界のそれだから流石に違うだろうけど。


「具体的に指摘いたしますと、例えば不自然な回復力の高さに対して、異常な非力さと脆弱さは違和感以外のなにものも与えません。この様な不自然さをなくす努力をするのがよろしいかと」

「具体的には?」

 思わず質問してしまった。

「そうですね。一つには筋力が圧倒的に足りません。ただ、それでは限界があるでしょうから、受け流す練習をするか、その独自の力を利用するしかないないでしょう。どう利用するのかは見当がつきませんが、その程度のことを容易とする力は秘めていることでしょう」

 答えてもらった様な煙に巻かれたような回答である。

「他に何か質問はありますか?」

 老紳士は柔和な表情で俺に聞いてきた。

「あの、俺のが魔法じゃないってなんで気が付いたんですか?」

「言葉で説明するのは難しいのですが……これは『違う』と自信をもって言えたとだけ申し上げておきましょう」

 答えてもらえなかった。

「それじゃあ、俺の居場所がわかったのは?」

 ホログラムを設置したうえに、透明にまでなったのに的確に胸ぐらを掴まれたのを思い出した。

「視覚情報だけで動くほど未熟ではございませんので……気配、風の流れ、臭い、勘、その他諸々で、私にはあなた様のいる場所と姿がはっきりとわかったのでございます」

「それじゃあ、一気に距離を詰めたのは?」

「執事術の初歩、縮地でございます。『執事の穴』の秘儀の一つなれば詳しくお教えできませんが……」

 この世界の執事って……いまさらだけど、なんだろうね。

「俺も『執事の穴』に入れますかね?」

「無理でございます。私の推薦が必要ですが、あなた様に推薦状を交付することはありませんので」

「実力不足ですか?」

「……申し上げにくいのですが才能不足でございます」

 取り付く島もないとはこのことだろう。

「他にはなにかありますかな?」

 色々聞きたいし、確認もしたいんだけど……聞くべきところがわからない! 勉強のわからないところがわからないってのと同じ奴だ。

「特別になければこのあたりで----」

「待ってください!」

 思わず止める。さてどうしよう?

「……」

「……」

 注目が集まるが何も言えず薄ら笑いを浮かべる俺。恥ずかしいけど、やっぱり言うしかないよな?

「あの、よかったら……いえ、是非俺に稽古をつけてください! お願いします!」

 おそらくだけど、この人が一番強い。間違いなく達人の域なんだろう。


 老紳士は少し困った様な顔でオットー様を見る。そのオットー様は少し間を空けて老紳士に問いを発した。

「我々への影響は?」

「短期間で、かつ、この地下から出なければ影響はないかと」

 オットー様はそれを聞いて頷く。

「……魔鉱石の積み込み等はどれくらいで終わるんだ?」

 オットー様は続けて富蔵さんに質問を出した。

「三日……いや、一週間くらいかかるかもしれませんね」

 それを聞いてオットー様は少し微笑んだ。

「わかった。この地下室を一週間貸そう。バトラーも暇を見つけたら相手をしてあげたまえ」

「御意」

 老紳士が恭しくオットー様に頭を下げた。

「あ、ありがとうございます!」

 俺も慌ててお礼を言うが背中を向けたオットー様は振り向きもせず、手だけを振って寄越した。

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