トビリアの過去
『僕はモリーと同じうさぎさんだったんだよ』
※この国に住まうものすべては初めはなんらかの動物で、悪い行いや態度が悪いとそのままで、良い行いや普通に過ごしていたら、人間になれるという意味不明な国なのである。
『‥‥うさぎだと?』
『そう、時には泳ぎ、時には寝るようなうさぎだったんだ』
『寝るのはあたりまえだが、なんで泳いでんだよ』
『まあ、細かいことはいいじゃないかい。僕には将来を約束した人がいたんだ』
『なんなんだ急に‥‥』
『まさしくここで共に暮らそうとしていたんだけど、僕はいつまでたってもうさぎのままでね、人間になれなかったんだよ。悲しい事に彼女の方は人間だったからそれが理由で振られてしまってね。うさぎと人間じゃ話にもならないだろう?』
『いや、そうでもねえと思うが』
『でも実を言うと、彼女は僕が人間になるまで待つと言ってくれていたんだけど、親や周りはよく思わなかったんだ。僕だって彼女を束縛しているようでいい気分ではなかったよ』
『あるとき僕は彼女にもうこれ以上は無理だよって告げたんだ。他の人を見つけて幸せになってくれよと。すると彼女は目に涙を浮かべながら頷いていたけど‥‥』
こいつ急に昔話始めたな‥‥とモリーは呆れていた。
『その次の日、彼女は自殺してしまったんだ。』
え。
その言葉を聞いた瞬間、辺りが凍り付いた。
なんだってそんな話‥‥。
『彼女の書き残した手紙には、僕への想いが綴られていたよ。』
『あなたに捨てられる人生などもはや私の人生ではない。他の誰かと幸せに暮らすなんて卑怯者には私はなれそうもない。ただ、あなたの傍にいたかっただけ、それだけのことなのに許されないこの世界に忘れ物は一つもないの。』
『僕はそれから数年間生きた心地がしなかった。なにもかもがどうでもよくなったんだ。』
モリーはなんと声をかけてよいのか分からなくなった。
シンデレラ階段に腰かけたトビリアは両頬に手をあて、切なげに俯いた。
暗い感じです。