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うさぎのモリー  作者: tom
3/11

静かなる屋敷

青年トビリアの趣味は廃屋探索 自称 家だという廃屋敷に訪れた、彼とうさぎのモリー



 『なんて素敵なところなんだろ〜、君もそう思うだろうモリー?』


黒髪の青年は廃屋敷の周りの雑草をかきわけながら瞳を輝かせている。


まあ、実際瞳を輝かせているのは宇宙に浮かぶ星々なのだが。


 『トビリア、今はテンションが高くて良いかもしれんが、こんなとこにずっと居たら嫌でも虚しくなってくるもんだ‥‥はやく帰ろうじゃねえか』


一文無しのモリーは嫌々ながらもトビリアの後を追う。


その時のモリーの脳内はこうだ。


ーもしかしてコイツ、この土地の所有者の息子だったりするのか?だとすれば‥‥いわゆる坊々ってやつなのか‥‥コイツのことは計り知れないが、少なくとも俺よりは裕福なはずだ、着いてって間違いはねえはずだ。



『おい、この古い屋敷はお前の親父のか?ん?どうなんだそこんとこ』


モリーは聞いた。


『あははっ だから言ってるでしょ?ここは僕の家なんだって』


『やっぱりそういうことか!?ならこんなとこ、とっとと貸すなり売ったりすりゃあいいじゃねえか!』


それを聞いたトリビアは口を閉ざした。


そして早足で屋敷の玄関のほうへ歩んで行った。


モリーは不審に思い、トリビアの名を呼んだが、彼は振り返ることもしなかった。



『おいっ待てって!どうしちまったんだよ?!』


生い茂る雑草がうさぎのモリーを押しやる中、気がつけばモリーは屋敷の玄関に辿り着いていた。


木製の扉に薄汚れた金色のドアノブ、ドアには窓ガラスが付いていたが、ホコリや土の影響か、中を見通す事はおろか、小さな蜘蛛の巣らしきものが光っていた。


『トビリアの奴、中に入ったのか?』


辺りを見渡してもトビリアの姿は伺えない。

それどころか、ここに本当にもう一人誰かいたのかさえ疑惑が生まれる。

どこからどう見ても人の気配ひとつもしない屋敷に孤独に迷い込んだうさぎだと誰もが思うに違いないからだ。


モリーは不安に思いながらも、ドアノブに手をかける事にした。


ガチャリ‥‥ギイイイイ‥‥


鈍い音がその場にこだまする。重々しい扉は、もう何年も開かれていない気がしてならないとモリーはツバを飲む。


そして一歩、また一歩‥‥と屋敷の床に足を滑らせる。


中の様子は、外よりも暗く月明かりが曇った窓から差し込む程度の明るさで玄関から伸びる廊下を必然的に進まなければいけない構造だった。


『ト‥‥トビリア‥‥居るんだろ?はやく出てこいよ』


モリーはすっかり肝試しに来た気分で足がおぼつかない。

廊下の途中、絵が飾ってあったがモリーはその絵の人物を見るとジャガイモババアにそっくりな嫌な面した女だとすぐに目を背けた。


『趣味の悪い屋敷だ。』そう呟いて、廊下の先まで付くと、広間にでた。


床には赤い絨毯が敷かれ、窓は縦に伸び、中にはステンドガラスも混じっていた。

シンデレラ階段と呼ぶに相応しい蛇のようにクネクネとした階段がこの空間のアクセントでもいうのだろうか。そのくらい空虚な感じだ。


ーハーックション


何ものかのくしゃみのような声が響き渡った。


モリーは失神しそうになった。


『やっぱりここは、ホコリっぽいや、ね、モリー』


モリーはふらふらになりながらも渾身の力をしぼるかのように


『てめえ‥‥』と怒りを露にした。



シンデレラ階段の上段から軽いステップで降りて来たのは言うまでもなく、トビリアだった。


トビリアはニコリと微笑み、モリーに告げた。


『驚かせてごめんよ、でも僕にとってここはとてつもないくらい大切な場所なんだよ』

遠いところを見ている彼の目は今までにないくらい澄んでいた。



『僕はモリーと同じだったんだよ‥‥』


静かに言い放つ声は屋敷内の静けさと調和しているようだ。


モリーはその様子にどこか惹かれて文句など言う気分にもならないでいた。




つづく













次につづきます。


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