序章
表面の80%が水で覆われている、惑星ラーグ。
そこは、中心となる五つの王国が、政治や経済、軍事といったバランスを保ち、平穏に治められています。
しかしながら、その惑星ラーグも、一時は絶望の最中にありました。強大な魔力を行使し、世界を支配しようとする悪しき人物。魔王が現れたからです。
世界を己のモノにするにしても、地上には力のない人間が何万といる。それをひとつひとつ潰していくのは面倒だ。
それならば、と考えた魔王は、惑星ラーグの80%を覆っている水に目を付けました。
常人にとっては、水の世界に進出するなど不可能な話です。ですが、魔王の力をもってすれば、造作もないこと。瞬く間に、惑星の80%は魔王の手に落ちました。
惑星の80%が魔王のモノとなり、もはや世界は魔王のモノと言ってもいいようなものでした。
しかし、完全を求めていた魔王は満足しません。残りの20%に手を付け始めたのです。
五大王国は、どこも例外なく水で囲まれています。つまりは、魔王に完全包囲されているのも同じ。
王国は次々と壊滅状態に陥りました。
そんな中で、王国の人々の最後の希望だったのは、魔王の手から救ってくれる勇者の存在でした。
五大王国が結束し、勇者を心から求めた結果。ついに勇者を探し出す「召喚魔法」が編み出されました。
召喚された勇者達は、皆がそれぞれ、惑星ラーグの常識を覆すような知識や技術を持っていました。
我々の魔法と、勇者が我々に与えた力。これを融合させることによって、今までを遥に凌ぐ力が完成しました。
その力によって、長らく続いた魔王との戦いは終焉を迎えます。惑星ラーグは、再び平和を取り戻したのです。
しかし、その弊害が判明したのは間もなくのことでした。
召喚魔法は、こちらの世界と異世界への道を作ることで成り立つ魔法です。
勇者を迎えるために、道は幾度も繋がりました。これによって、開かれた道が塞がらなくなるどころか、新たに道が出現するようになりました。
つまり、予期せぬ勇者を招くようになったのです。
再び五大王国は結束し、魔法の開発と改善を繰り返しました。
魔法は進歩し、迷い込む勇者は確かに減りました。それでも、完全とはいきません。
異世界と道を繋げることを制限している今でも時折、勇者が迷い込んでしまうのです――。