怒りの詠唱
『ごめんなさい。でも、もう取り返しのつかない事が……』
真夜の口調が重々しくなる。
『何があったか話してくれ。』
『それは………』
真夜が有りのままを話し始める頃、悠達一行は目的地まで足を進めていた。勿論、本人と対面を果たしていた。
『竜臣殿、これは一体どういう事なの⁉それは……』
海紗がショックの余りに言葉を失う。
『あれは、あれは……水鵺ですよね。』
『そうだ。』
庵の戸惑いに一言。悪びれもせずに。
『美しい者を飾る事の何が悪いと云うのだ?』
『大切な人では無かったのかよ!』
『悠、神族は魔族の餌として生きれば良い。俺の玩具としてもな。』
嵩の言葉を聞き、怒りに満ちるはかつての仲間だった。
『許さない‼』
海紗はそう叫ぶと同時に両手に力を込めた。
『庵!私の援護をお願いね。真紅の心の焔よ、我らの怒りを糧にせよ。怒りの裁きをこの両手に示せ……火炎双剣‼』
海紗の両手に双子の炎の刃が宿った。そのまま走り続けた。続けて庵が詠唱を始める。
『我、汝を守らん。総ての刃よりその身を交わさん事を……守護暴風!』
海紗の身体が淡い翡翠色の光で覆われた。
『純血ではない者の攻撃など……』
『嵩、それはどうかな…嶺、俺達も続くぞ。』
『駿に云われずとも把握してますよ。汝、行く手を阻む者を相殺せよ。我らの仲間の為に……雷刃台風!』
嵩の行く手を阻もうとする大きなつむじ風が周囲を飲み込まんとする。空気抵抗により摩擦が生じ、バチバチと電流までもが発生し容易には風を消せなくなった。
その状況下で嵩は舌打ちをする。嵩の後ろには魔法の結晶石の中で眠っている彼女。
『相性が悪いな…』
ボソリと吐いた言葉は風の音により消される。




