印
水鵺が捕らわれの身になり、幾日も過ぎる。
蒼い魔法の結晶の中で浮いている彼女を見やる。
『水鵺…』
彼女を封じ込めている結晶石に軽く指先を触れる。すると結晶石が仄かに輝きを放つ。
刹那、彼女を覆っていた結晶は姿を消して四肢を繋ぐ鎖が存在を強調するかのように、シャランと音を立てた。
嵩は手を伸ばし彼女を腕に抱く。
『嵩、…食事ですか?』
『あぁ。』
眠っていた彼女は目を醒ます。意識が朦朧としているようだ。
嵩が寝台へと寝そべらせると、規則正しい呼吸が聞こえる。
『直ぐに眠ってしまうのだな。』
神族の純血の聖気を糧にしている嵩の魔力は日に日に強く成りつつあった。
特に純血の姫となると希少価値が更に高まる。
『美味たるもの。流石は神の一族の末裔……か。』
『神よ神よと祀らないで頂きたい。いつまで私を糧になさるつもりですか?』
『俺が手放すとでも?未来永劫だとも。お前は糧でしかない。そして……俺の愛しい玩具だ。』
『玩具……』
『ずっと傍に居れば良い。ずっと………』
そう云うと頬へと手を滑らした。
『殺したい程に愛しい玩具……』
『私は貴方の玩具になるつもりはない。』
すると嵩は頬から頚へと手を動かした。両手でゆっくりと締め上げた。
それでも水鵺は狼狽えずに嵩を見つめる。
『それが出来ないのなら価値は無い。』
『それで構わないわ。今の貴方を慕う事は出来ない。私は嵩を待っています。貴方ではないわ。』
『ならば未来永劫、眠り続ければ良い。どんな事をしてもお前だけは手放す事は相成らん。眠るが良い!』
怒りに我を忘れた彼は彼女を封じてしまった。
魔法による結晶という檻の中へ。彼女は再び眠りについた。