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呪縛

真夜が透視魔法で覗くと、眠っている水鵺の太股の辺りまで延びている銀色の髪を指先に絡め、寝顔を黙って見ていた。


『水鵺、このまま目醒めるな。ずっと此のままで傍に…』

すると顎を持ち上げてゆっくりと首筋へと顔を近付けた。


水鵺の身体からは薔薇の匂いが香る。その匂いを堪能するかのように瞼を閉じる。

赤色の瞳が紅く輝き始めた。それに合わせるように、水鵺の瞼が微かに動く。そして嵩と視線がぶつかった。


『嵩、…何を………。』

両手を拘束されて身動き取れずにいた。首筋へと口付けをされ身体から力を奪われる水鵺。

力という名の神力、つまり水鵺の命の源である。

抵抗も出来ずに、なすがままにされる。


息苦しくなり息づかいが荒くなる水鵺を見つつも、更に力を吸収し続ける嵩。

魔族は力を吸収する為に魔力が集まる首筋へと口付けを行い、力を得る。神族の神力は特に効能がある為に重宝されていた。

魔族にとっての食事の行為ではあるが、愛情表現の1つでもある。


苦しさの余りに、嵩の身体を強く突飛ばすも力なくその場へと崩れ落ちた。

手を伸ばされて、強く振り払った。

水鵺の身体が仄かに煌めいた。するとその背からは純白の六枚羽が現れた。部屋中に純白の羽根が舞う。


『その姿……』

『えぇ。此方が私の真の姿です。仮の姿では上手く神力を制御するのは困難ですから。』

『美しいな……。神族の最期の姫君。』

嵩の言葉に目を見開いた。数拍後に、嵩に身体を抑え込まれる。


『存じて……』

『あぁ。獲物(みや)の事など調べ済みだ。その姿をどれ程、待ち焦がれた事か。』

そう云うと、背中の羽根へと手を伸ばし触れた。

『触れるな!』

嵩に身体を預けてしまう程に、覇気が失われていく。



『いつまで、そうやって覗き見しているつもりだ?真夜。』


扉が勝手に開かれ、言葉を失う真夜。


『嵩、何故……』

真夜は驚愕の真実を目の当たりにして、口ごもる。

『水鵺が女性であった事か?愚問だな。傍に居たから気付いた。それだけの事。』

『………婚約者の私を差し置き、あのような行為を行うなど正気ですの?可笑しいわ!』

狂ったように叫ぶ真夜。

『そうだな。ではこうしよう。』

指をパチンと鳴らすと、水鵺が宙へと舞い身体の周囲には魔力で出来た結晶を形成する。

あっという間に水鵺を包み込んだ。蒼い結晶の中で眠るように浮いている水鵺の両腕・両足には金色の鎖が繋がれていた。羽根にも鎖が絡まっており魔法による印がされていた。


『美しいであろう?』

冷笑を浮かべ、悦んでいる嵩は真夜へと問い掛ける。


『これは殺したとは云いません!』

『黙れ。真夜、この場で消されたいのか。』

慈悲の欠片もない瞳が真夜を映した。


真夜は何も云えずにその場を後にするしか無かった。

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