仲間
海紗が放った灯が闇夜に花咲く。
七色の輝きがその空間を飲み込んだ。
『おのれ……小娘如きが…。』
仮面の女の素顔こそ見れないが、舌打ちをしているのか。チッ…と小さな音を立てていた。
『私達は貴女を畏れたりしません。負けません。』
庵が仮面の女を睨みつける。
『そうですね。庵の仰る通り……私達もその言い分に賛同しますよ。そして導きましょう。』
『我々の道標の聖の君が云うならば、どのような壁であろうが道は在るだろうな。』
『その声は……貴と湊鵺か…。』
戸惑いの声が漏れる。
『えぇ。貴女は……』
言いかけると、赤紫色の双眸を見開く。
『湊鵺……。』
仮面の女も言いかける。
『貴女という人は。仕方がない真実なのですね。良いでしょう。我々で息の根を止めるまで…。』
『そう……。なら私も容赦はしないわ。神の一族の君。』
『その呼び名は皮肉ですか?』
溜め息混じりに見据える。湊鵺の瞳には珍しくひと欠片の優しさもない。
『水鵺が相手をするまでもない。俺が処理やろう…?』
『嵩…』
『わ、私達も戦うよ!』
海紗が口を挟む。すると驚いた表情をしたのが水鵺と嵩。
『僭越ながら私も戦いますわ。』
『僕だって、ハーフだけど力はあるよ!』
『それは私も。悠だけじゃ不安だし。』
庵達も海紗の言葉に続く。
『それじゃあ、皆であの仮面の女を倒そう!』
海紗が天に向かって手をかがける。
その姿に互いに頷き合う庵達の姿。それを冷ややかに見つめる仮面の女は静かに舌打ちをした。
『下等なる生物ほど束になる。』
ふふふ、と下卑た笑いを仮面の下から覗かせる女。
不気味以外の何者でもない光景と姿。
『人は我等が思う程、下等では無い。』
言い切ったのは嵩だった。その言動に目を見開く水鵺。
『人は確かに我々よりもか弱く、脆く、儚い。寿命も全く違い散って行くが気高く誇り高い者達だ。』
嵩の言葉を聞いて微笑む水鵺。その表情は慈愛に満ちている。
『魔族の一族の癖に、人間寄りです事。愚かな。愚か過ぎますわよ。嵩殿。それでは貴方様の婚約者も哀しむ事でしょうね。』
『黙れ。下衆の塊め。』
怒りに満ちる嵩。
『水鵺殿?我々と組ませぬか?』
仮面の女は水鵺へと手を伸ばす。すると茂みの死角から無数の影が飛び出す。
『何か来る!』
海紗が俊敏にその影を魔法で迎え撃つ。
『此処は私に任せて下さいね。』
にっこりと微笑む庵。魔法陣での防御で仲間を守護による援護魔法を唱える。
ほっとする一行だったが、直ぐに場の空気が凍った。