宮下亜矢子
初めてのホラーもの故、駄作ですが…
よければお読みください。「着信アリ」と似てるな?と思われても、心の中に秘めておいてください。
「はぁ、はぁ……」
荒い息遣い。
男は狂ったように喉を掻き毟り、携帯をいじっていた。
操作音がし、一通のメールが送信される。
暗い道に、部屋の灯りが零れていた……
「痛っ」
宮下亜矢子が戸棚に肘をぶつけるのは何時もの事だった。
赤くなった肘を気にしながら、淹れたばかりの緑茶を運ぶ。
「あいどーも」
上司はその緑茶をさも不味そうに飲み干した。
亜矢子が隣に積み上げられた書類を見て、溜息をつくのも何時もの事だ。
″生活安全課 少年係″
…そこが亜矢子の職場。
刑事とは名ばかりで、少年少女の万引きを捕まえるのが大事件という平凡な仕事だった。
鳴り響くサイレン。手錠を掛ける時の感触、音…
それが彼女の夢見ていた理想の刑事。
しかし、すぐに″雑務″という名の現実に襲われる。
「……」
もう昼近くだというのに、電話は一本もない。
あるのは上司たちの耳障りな会話のみ。
…まぁ、『暇=平和』となるのだからいいのだが。
今日は何か面白い番組あったっけ、と呑気な事を考えながら、書類の山に手を付けた。
″♪~♪♪~♪~♪~″
12時半を知らせる音楽に手を止める。
亜矢子は早速メモの用意をした。
…この時間になると、上司から「弁当を買って来い」と言われるからだった。
「宮下ー、いつもの弁当買って来い~」
案の定の言葉に、″来てくれだろ″と呟いて席を立つ。
署を出たのと携帯が鳴ったのは、ほぼ同時の事だった。
「お姉ちゃん、助けて!」
電話越しだが久しぶりに聞く妹の宮下歌奈の声は、抑えきれない焦りと恐怖を持っていた。
「何? どうしたの?」
亜矢子はレジ係の店員にぺこりと頭を下げてから、袋を受け取った。
「チェーンメールが…」
「チェーンメール?」
チェーンメール…『これを回さないと不幸が訪れる』、『誰かに話さないと死ぬ』などといった悪戯メール。
亜矢子は、今時こんなものが…と思ったのと同時に、ある事件を思い出した。
「そんなの悪戯に決まってんでしょう。絶対に回しちゃダメよ、分かった?」
「で、でもお姉ちゃんだってあの事件知ってるでしょ? 悪戯って皆も言ってるけど、実際五人も死んでるじゃん…。もし他の人にも来てて、それがあたしにも送られたんだとしたら…」
「歌奈! あんたもうすぐテストじゃないの!? 勉強しなさいよ!」
姉らしいことを言って、終話ボタンを押した。
ただの偶然よ…
そう自分に言い聞かせ、上司の待つ署に矛先を変えた。