呪いのビデオレター
信じて送り出したカノジョから送られてきたビデオレター。
そこに、幽霊が映っていたとOさんは言う。
「ビデオの内容自体は、なんていうんですかね。ぼく以外の男が、カノジョ、いえ、正確には元彼女なんですけど、その元カノとセックスしてる動画っていう、ありふれたものだったたんですけど」
ありふれていていいのだろうか、そんなモノが。
「実際に見ていただくのが、早いと思います」
そう言って、Oさんはビデオを再生してくれた。
「おかしなところ……おかしなところは、結構早いところから、ずっと変なんですけど」
冒頭。
『いえーい、ザザッ……カレ──くんみってるー?』
ノイズが最初から多い。
「声が二重に聞こえるんですよ、相手の男の」
なるほど、確かに、いわゆる音割れも多いのかもしれない。
男の前に女が座っている。男に肩をつかまれて近づかせるように、引っ張られているようだ。
「これが、元カノなんですけど。ここです、ここ。ここを見てほしいんです」
Oさんは画面を静止してくれた。
Oさんの元カノがNTR男に左肩を抱かれている。その反対側、つまり右肩にも、指のようなものが乗っていた。
「どう考えても、手が多いんですよ。この相手の男の指だと考えると、姿勢的に腕が3本ないと無理ですし」
それはたしかにそうだ。
他にもおかしな箇所はあるといって、Oさんはビデオをさらに進める。
こいつ、どんだけ元カノの浮気動画を再生してきたのだろうか。
『あ〜、オタクくんのよ──ユルサナイ──大きい』
「声が混じってるのわかりましたか。ここはやけにはっきりと、聞こえてる箇所なんですけど」
確かに、はっきり恨みごとのような声が録音されている。他にも、別の声が混ざっているような箇所が多かった。
幽霊サイドも、もうちょいほかのビデオに呪いをかけたかったのではないだろうか。
「この元カノとは25年前に何となく合わないなと思って別れたんですけど。まあ、お別れは円満だったんですけどね」
このビデオが送られてきてからのことらしい。残当すぎないか。理由は何となく合わないとかそんなふわふわした理由でいいのか。
「今も交流があって毎年、こんなふうに写真が届くんですけど」
スマホの画面をOさんが見せてくれた。
ダブルピースをしている女性の写真である。送り主は謎の男性。名前も謎の男性である。
その女性は、Oさんの元カノの面影を残している。その写真にも──見間違いでなければ──肩に指が乗っていて。
「心霊写真、だと僕は思っているんです」
◆
取材を終えて、私は帰路についていた。そして、思う。
「なんで相手の男は律儀に毎年ねとった女の写真をOさんに送ってるんだろうか……」
そしてOさんはOさんで、ブロックくらいしろよ。
「人間、怖いなあ…………」
どうやったら円満に別れられるんだよ。
「幽霊サイドも困っただろうなあ」