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とりあえず生活基盤かくほ!

なんだかシリアスな雰囲気で、その場をしんみりさせた私の個人情報……。


ちょうど昼間になったのもあり、深緑色の初老の人がミゲル神殿長に声をかける。

「おや、そんな時間かね」

こちらに向き直ったミゲル神殿長は、にっこり笑い昼食について尋ねてきた。

「ちょうど昼食時間になりましたのでな、皆さまの分も準備させようかと思いますが、如何しますかの?」

そう言われるとお腹がクルッと鳴ってしまい、思わずお腹をグッと押さえる。

主張した私のお腹の音に微笑ましげに視線を向けると、ミゲル神殿長は三人に尋ねる。

「遠慮なさることはありませんよ。食事をしながら彼女の事についても相談なされると良い」

アッシュ達は視線を交わすと軽く頷く。

「では、お言葉に甘えてご相伴に預かりたいと思います」

頷き返したミゲル神殿長は、深緑色の初老の人を見た。

「ハルマン、食事の用意を五人分頼むよ。君も一緒に食べるなら六人分だね」

軽く会釈をしたハルマンは部屋の隅へ行くと、丸い水晶玉が置いてあるチェストの前に立った。その水晶玉に手を当てると上にまたステータス画面が表れ、そこに浮かんでいる文字をスライドしたりタップしたりしながら操作をしていた。


えぇ!近未来なタッチパネルが!

某ファミレスの注文用タブレット端末みたい。

魔法の世界ってなんでこんなに先進してるんだろう。便利そうだわー。


その間は雑談と言う名のシリアス会話が私の頭上で行われていた。

意外と特殊な能力持ちと判明したようで、今後どうするかを三人で検討していた。後見人はもちろん番であるアッシュだが、後ろ楯としてアッシュの家族がなる模様。


キーファとカイルアは、臨機応変に対応するようだ。

カイルアは各東西南北の部隊が集まる中央寮に居を構えているらしく、ここから近いらしい。

キーファは住居をアッシュの実家がある南方に持っているらしく、中央にいる時は寮住まいだそうだ。


なんと、この獣人の国には『国王』がいないらしい。

各東西南北の長が中心となり治めているそう。

王政主義ではない民主主義で、地方にはそれぞれ領主(場所によっては部族らしい)を置いて、四公が中心となって必要に応じ議会を開き、各種族の代表が集まって様々なことを決議していくそうだ。

それを行うのがこの中央神殿がある地区で、アゲリバーサと呼ばれる。

各部隊も中央に集結しており、様々な種族が生活している。まあ、日本で言うところの国会のある所かな。


各四公には私兵の騎士団が設けられて、中央にいる部隊とは扱いが違う。騎士団はあくまで四公それぞれが治める地区を守る師団で、部隊は獣人国全体が関わることに対応する団体にあたる。

中央の部隊は実力主義で、獣人国全体の戦う部族からすれば、エリートの集まりと言われ、上を目指す者には憧れの部隊でもあるらしい。


脳筋集団ではないことを祈ろう……。


自分の住居を構えていないのはカイルアだけのようで、なんとアッシュも家持ちだそうだ。それも中央と実家のある南方、二ヵ所も持ってるとは!お金持ち!


ここからアッシュの家族が住む住居に近いと言うことで、ツガイを見つけた報告(手紙で簡単には報告したらしい)、顔合わせも兼ねて向かう方向に決まる。

キーファとカイルアも、この還り人の護衛任務以外の緊急性のあるものはないそうなので、二人も南方に一緒に来ると言う。この三人、なんと幼馴染みだった。

道理でこの三人はよくつるむな、と思った。

ただ、キーファは一時期、二人から離れた事があるそうだが、アッシュとカイルアは幼馴染みと言うのもあり仲が良いらしい。

この道中、ほぼ無表情に近く口下手そうなカイルアとアッシュの会話をあまり見たことはないが、長年の付き合いで以心伝心なのかな……。


結果的にアッシュの実家に一時的に身を寄せることにして、今後の方針を決めることとなった。


ちょうど話し合いが終わる頃(私は見てるだけだったけど)、ノックが鳴ると、ハルマンが応対に出る。食事が準備出来たらしく、届けに来た人から昼食を受け取ると、ハルマンがこちらのテーブルにワゴンで運んできた。

二段のワゴンは幅広で野菜とフルーツが盛られたサラダと、カナッペの様になった一口サイズの副菜、メインの肉料理が数種類乗せられていた。飲み物もフルーツが入ったガラス製の水差し、グラス、カップとティーポット等が置かれていた。

それをハルマンは手慣れた手付きでテーブルへ並べると、それぞれのグラスに果実水注ぐ。それぞれの脇に取り分け皿が置かれ、カラトリーが入った籠が二ヵ所に分けられた。


ミゲル神殿長が簡単な祈りを捧げると食べ始めたので、私は普通に「いただきます」と言って食べることにした。

手近な皿を取り、いざ食べよう!としたら、アッシュが私を抱き上げようとした。それを阻止して、一人で食べられると押し問答をしばらく続け、何とか一人で食べる権利をもぎ取った。


……普通に食べさせて……。


少し恥ずかしさと呆れで乾いた笑いが出た。その横ではマイペースにカイルアとキーファは食べ始めている。例のごとく、カイルアの皿にはモリモリにおかずが盛られていて、よく食べるよなぁ、と横目に見ながら、野菜と肉が炒められた物を食べることにした。

右隣のアッシュは、残念そうにこちらを見つつ食事を進めていた。諦めてよ……。


食事半ばになり、ミゲル神殿長と三人でこれからの方針がまとめられていた。

当初の予定通り、アッシュの実家へしばらく身を寄せた後、もう一度どこに生活基盤を置くのかを決めることになった。何はともあれ、宿無しにならなくて本当に良かった。少し雑談をした後、見送ってくれる二人に歩く挨拶をすると、神殿を後にした。

去り際、ミゲル神殿長がこっそり私に耳打ちをした言葉に何となく不穏な感じを覚えたが、扉を出る前にアッシュに確保され、縦抱きの状態でまた一人で歩くことを阻止された……。

その時にアッシュに神殿長から何を言われたのか尋ねられたが、確定もしていないことなので、ただ心配されただけだ、と言うに留めておいた。


馬屋に向かうと、水飲み場を掃除していた馬屋番の人は、一礼をすると、柵を開けて中へ入れてくれた。

何故内側に入るのだろうと首を傾げていると、三人はそれぞれ自分の愛馬を呼んだ。

厩舎と呼んでいいのか分からない、この林の様な自然牧場(?)は、確かに近くで所々軍馬が草を食んでいる。


牧場って草原の様なところだよね、確か。


なんとなく異世界の不思議に悩んでいると、こちらに向かってくる駆け足の音が聞こえた。

まず青毛のヴィルタを先頭にシリック、ルチェルがやってきた。


……スゴいな、放し飼いで名前を呼んだら来るって、どんだけ賢いんだろ、ここの馬は。


他の部隊の人達と柵の外で待ちながら、三人の馬がそれぞれの主人に手綱を握られると、外に出てきた。それと入れ違いに他の部隊の人達が自分達の軍馬を呼び寄せていた。アッシュは各自の確認が終わると騎乗し、私は前に抱えられながら乗った。


「ここからは各自中央駐屯地へ報告。その後、5日の休暇とする。解散!」


部隊へ今後の予定を伝えると、一緒に付いてきた部隊の人達はそれぞれ散っていった。彼らへお礼がてらに手を振ると、嬉しそうに手を振り替えしてくれた。


彼らが去っていったのを見ると、アッシュは二人に声をかけた。

「お前達ふたりはどうする?寄るところはないのか?」

背後にいたキーファとカイルアに尋ねると、二人は目線を合わせ互いに頷く。

「このままアッシュに付いていくよー」

なんだか楽しそうにキーファが言う横で、カイルアはひとつ頷いていた。

「久しぶりに閣下に遊んで貰おうかなぁ~」


ん?遊んでもらう??おかしな言葉が出たぞ。


思わずキーファに視線を向けると、にっこり笑い返された。隣のカイルアは安定の無表情。

キーファの言葉にアッシュは呆れ気味に息を付くと、肩を竦めた。

「程ほどにしとけよ」

「大丈夫だよ。この任務は余程の邪魔が入らない限りキツくないし、今回はユルーいお仕事だったから、ガス抜きしないと」

機嫌良さそうにキーファはそう答える。

カイルアが何か言いたそうにキーファを見つめるが、あえて何も言わない方向にしたようで首を振った。


なんだろ、閣下って、誰?


疑問符だらけの私を置いてきぼりに、三人は馬を方向転換させると、アッシュの実家である方向に足を向けて走り出した。


その時、何となく視線を上げると、神殿の二階の大きな窓から、ミゲル神殿長が私に気付き手を振っていた。


ずっと見ていたのだろうか。モコモコのヒツジおじいちゃんだから、うっすら笑っていても怖さはないが、先ほどの言葉が気になって、意味深に見えた。


ミゲル神殿長はこう言ったのだ。


『何かあったら、どこかの神殿でも町教会にでも良いから行きなさい』と。


……やめてよね、変なフラグが立ってない?立てないでよ!恐いから!!


アッシュ達は馬を走らせながら、これから帰路へと着く。

ミゲル神殿長と視線が合ったせいもあり、あの言葉が頭をグルグルし始め、神殿の方向が気になって仕方がなったのだった。


……意味深な言葉いらない!絶対!

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