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湯浴み

汗を流し体を洗い汚れを落として湯船に浸かる。


「ふぅ…」


やはり訓練後の風呂は格別だ。

こうして家で自由に熱い湯に浸かれるのは国内でも王族か上級貴族くらいのもので

魔法が使える使用人や奴隷を召し抱えているため可能な事であり、大きな街であれば大衆浴場はあるものの安くないため湯船に浸かるということは平民にとっては贅沢の部類に当たる。


目のやり場に困るので、目を閉じ今日の訓練の内容を反芻する事にした。

あの時どうすれば剣は届いたのかを思い描く。思案を重ねていき違う武器だったならどうだったかを考える。

幼い頃から様々な訓練を続けているだけあり、いくつかの武器は扱える。

盾で防ぎ片手剣で斬りかかるのはどうか。

槍で突くのはどうか。弓を射かけたり、接近しての短刀に持ち込むのはどうか。

しかし今日も自分が納得いく答えは浮かばない。

ビクンッと体が跳ねるように、現実に引き戻される。


「リア姉…?」


肩が触れたことで気付いたが、いつの間にか隣に姉が密着していた。

広い浴槽なのだが何故…。


「何考えてたの?お姉ちゃんに教えて?」

「うん…父上に勝てるにはどうしたらいいのか考えてたんだけど。隙が全くなくて…」


姉はクスリと笑い、簡単そうにこう答えた。


「ある程度の強さの相手に隙が無いのは当り前よ。その上で、隙を作るためにこっちから駆け引きを仕掛けるか。隙が出来るまで相手の動きに対応する。でも今のレイにはどちらも無理ね。」

「っ…やっぱりそうだよね…」


分かってはいた。

剣聖の姉の目から見ても結果は同じだった。

答えは既に知っていたはずなのに少しへこんでしまう。

すると、落ち込んだのを悟られたのだろうか

ゆっくりと両手で顔を抱きしめられた。


(む、胸が…!柔らかっ!!)

「大丈夫よ。レイは絶対今よりもっと強くなる」


恥ずかしくてすぐさま抜け出したい気持ちだったが、その言葉だけで不思議と心が落ち着いた。


「レイならきっと自分の強みを見つけられるわ。お姉ちゃんが約束してあげる」


ようやくホールドを解かれ、顔を見上げると微笑む姉と目が合いドキッとした。

再び早まる鼓動を抑えつつ。誤魔化すように会話を続ける


「そうだリア姉。明日一緒に訓練してくれない?」


照れ笑いながら誘ったのだが、姉の顔色がみるみる曇っていく。

いつもならハグしながらOKしてくれるところなのだが。


「ごめんねレイ。お姉ちゃん今夜家を出ていくの」

「えっ……?」


理解が追い付かず頭が真っ白になった。

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