訓練の日々
戦争において無類の強さを誇るロンドネル王国
その中でも圧倒的な武力を誇るグラント家に3男として産まれ
立派な騎士になるため物心がつく前から戦い方を学び、毎日剣を振い続け
数週間前に16歳となった。
しかし、俺には騎士としての才能が無かった。
父のハル・グラントは軍略に優れるだけでなく領民からも慕われており
数々の英雄を輩出してきたグラント家でも歴代最強と評されており、まさしく家紋の獅子に相応しい英雄だ。
身の丈ほどの大剣を軽々と振るう姿は、何度見ても勝てるイメージすら浮かばない。
そんな父に両手剣を教えてもらい訓練に打ち込んでいるが未だにモノにすることができずにいた。
「ガハハハハ!まだまだだなレイ!格闘も見せてみろ!」
「はい!父上!」
訓練用の両手剣で打ち込むも今日も一撃入れる事は叶わず、素手での訓練に移行した。
全力でパンチや蹴りを繰り出すも、やはりダメージを与える事は叶わず。
父の大きな拳の強烈な一撃により意識を失った。
髪を優しく撫でられている心地いい感覚で目を開けると
服の上からでも分かる豊満な胸が視界に飛び込んできた。
(この見慣れた胸は…そ、それにしても超至近距離で大迫力…!いい匂い…)
何も考えられなくなり数分間、視界を奪われたまま膝枕を堪能していたのだがようやく我に返りハッと飛び起きた。
「リ、リア姉!?あっ…痛てて…」
「うふふ…もう少し寝てても良かったのよ?」
起き上がる際に胸に当たった額の感触に、口角が上がりそうになるのを必死に堪えつつ平静を装った
父に殴られた顎の痛みは実は大した事ないのだが誤魔化すのにはちょうどよかった。
「夕食の後、父上と稽古して…どのくらい気絶してた?」
「2時間くらいかしら?それより、お風呂まだよね?」
「うん…うわっ!?」
返事とほぼ同時に、体が軽々と担ぎ上げられ
「一緒に入りましょ~」
そのまま有無を言わさず物凄いスピードで中庭から浴場へと移動していき目が回りそうだったが
あっという間すらなく脱衣所に着いてしまった。
この屋敷では浴場はいくつかあり身分などによって分けられているのだが
連れ込まれたのは姉と妹以外には基本的に使われることがない専用浴場である。
これまでも何度も一緒に風呂に入る事は時々あったのだが
姉といっても俺は正妻の子で、4歳年上の姉は妾の子であり
意識すると反応してしまうため最近は極力避けるようにしていたのだが…
剣聖と呼ばれる姉から逃げられる訳もないため、おとなしく背を向け服を脱ぎ急いでタオルを腰に装着した。
こうなれば速やかに風呂を済ませるのみ。意識しないようにしながら普段の倍速で体を洗い進めていく。
視界の端でチラチラ見てしまうのは仕方がない。理性とは裏腹に本能で勝手に目が追ってしまうのだ。
姉は剣術に優れ、武者修行の旅に出たりしているのだが。
数年前、当時の剣聖を斬ったことで剣聖と呼ばれるようになった。
剣聖と呼ばれるのは世界に何人かいるそうで、腕前も様々だそうだが
共通して言えるのは尋常じゃない強さということ。
剣聖になればどの国に行っても引く手数多であるが、実績のため実力者に挑まれるリスクも増えるため、軽々しく自称したり吹聴したりするのは命取りとなる。