ゆいこのトライアングルレッスンU 〜和服の試着は至近距離〜
「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」の人気企画、「ゆいこのトライアングルレッスン」に投稿した作品です。
「ゆいこのトライアングルレッスン」とは?と思われた方は、
ゆいこのトライアングルレッスン〜軌跡〜
https://ncode.syosetu.com/n1009ic/
をご一読いただくと、より楽しめると思います。
ひろしの勤める着物屋に、花火大会に着る浴衣を買いにたくみとやって来た。
「いらっしゃいませ。」
と迎えてくれた和装姿のひろしは仕事用なのかどこかよそ行きな雰囲気で、ドキッとする。藍色と白の細い縞の入った浴衣に、臙脂色の帯を締めていて、和服を着ると3割増しで素敵に見えると言われるらしいが、なるほどそのとおりだなと思う。
「わーいろんな柄のがあるね。これ可愛い!あっでもこっちも可愛い!」
「それ似合うんじゃない、いやーこっちかな。」
たくみと和気藹々と選んでる中、ひろしはスタッフらしく一歩引いて一緒に回ってくれた。
「ひろしは、どれがいいと思う?」
「顔映りがいいのは、この水色。甘さを求めるならこっちのピンクかな。帯でもガラッと変わるよ。まずは試着してみない。どっちが気になる?」
水色に決めて試着コーナーに移動する。洋服屋と違い、大きな鏡のあるオープンスペースなので、着付けられていく様子をたくみが横で見ている。
ひろしは、手際よく浴衣を着付けていき帯を締めてから、
「帯留めや帯揚げは、半幅帯ならしなくてもいいんだけど、せっかくだから、他の人と差をつけたコーデをしてほしいかな。」
と言い、帯留めと帯揚げをいくつか持ってくる。その中からガラスの帯留めとレースの帯揚げを選ぶと、ひろしは慣れた手付きで、帯留めを紐に通して後ろで結ぶ。そして、今度は後ろから帯揚げを前に持ってくる。
(ち、近い。)
目の前25センチあるかないかの距離に、ひろしのY字の襟元がある。どこを見ていいかわからず、下を向く。すると視界に入って来たのは、ひろしが私の胸元のあたりで帯揚げを結んでいる指先だった。ますますどこを見たらいいのかわからない。ひろしの体の横に視線を向けると、たくみが椅子にむっとした顔でこちらを見てる…。
ふいに耳元で囁かれる。
「近くて緊張してる?」
「えっ?」
「俺も、結子相手だと緊張してる…はい、い、出来上がり。」
ひろしは何事もなかったように、たくみの方へ向く。
「どう?」
「似合ってるけど…ひろし近すぎるんだよ。」
「そうかな。着物の着付けなんてこんなもんだよ。」
二人の顔を見れないまま、鏡に写った浴衣姿の自分を見ては、ドキドキが止まらなかった。
トライアングルレッスン交流できたら楽しいので、コメントなど残していただけると嬉しいです。