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短編集

誰が夏を殺したんだ?

作者: 幕田卓馬

誰が夏を殺したんだ?


熟れた柑橘のように濃厚な太陽から放たれる、瑞々しい陽の光。

それが髪を熱し、頬を焼き、瞼の裏を黄色く染める。

そんな夏を。


 

誰が夏を殺したんだ?


青空と新緑、入道雲、どれも色濃く、物々しい。

その狭間に立つ存在が、とても小さく感じてくる。

そんな夏を。


 

誰が夏を殺したんだ?


暑さで広げたTシャツの襟に、潜り込んでくる湿った風。

蒸発した汗を纏って、遠くの草原へと消えていく。

そんな夏を。


 

誰が夏を殺したんだ?


世界を埋め尽くしていく、様々な生物が生き抜く音。

たくさんの音が混ざり合い、音があるのかすらわからなくなる。

そんな夏を。


 

誰が夏を殺したんだ?


熱せられた葉の匂い、水田に溜まる泥の匂い、腐葉土の匂い。

排気ガスの匂い、湿って乾いていくアスファルトの匂い、隣を歩く君の制汗剤の匂い。

そんな夏を。



打ち合わせまでの数分間、クーラーを効かせた車内で、プレゼンのための書類を眺める。

外は夏、にも関わらず、光も景色も風も音も匂いも、何一つ感じられない。

 

誰が夏を殺したんだ?


それはきっと、俺自身だ。

 

あの頃の夏を生かすも殺すも、俺自身に他ならない。

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― 新着の感想 ―
戻りたい? いや。コロンは涼しいお部屋にいたい。 幕田サマ、どうぞ行ってらっさい。
[良い点] 最近なんか夏が長くなったような気がしております。 子供の頃は夏休みがある夏は好きだったのですが、今はただ暑いばかりの夏が嫌いになってしまいました……。 夏、誰かに殺してほしい。
[一言] ぽえむ…。センパイ色々書いててスゴイ。 きっと夏休みの子供達と遊ぶと、 夏が蘇生する気がします(´∀`) そして暑さと体力不足で自分が死亡しますw
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