表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

まだ日が出てる

夕日をゆっくり見たのはずいぶんと久しぶりだ。


柔らかい空。

透きとおった雲。

役目を終えてとろけていく太陽。



ピンク。薄紫。白。オレンジ。

水彩画のように。

にじんで。ぼやけて。とけあって。


夕焼けは優しい。

髪をなでていく風も優しい。


やわらかな光で包まれた世界は、とても優しく見える。




今の世界は生ぬるい優しさに包まれてる。


権利だなんだと喧しく騒ぐ人間が、うるさいと叱責されない優しい世界。


わがままを言う人間が、誰からも眉をひそめられることのない優しい世界。


人に迷惑をかける人間が、拒絶されない優しい世界。



見せかけの慈愛。

優しさという言葉で隠された諦め。



無数の誰かの犠牲を踏み台にして成り立つ優しい世界。



一皮むけば。


不満。嫉妬。苛立ち。嫌悪。


どす黒いものが蠢いているのに。


優しさという美しいベールで覆い隠してる。




貪るやつだけが好きなだけ貪って。


弱いやつが喰われて。

頭の良いやつは上手く立ち回って。


誠実な心の持ち主は次々とつぶされていく。



どんなに姿形を変えたって、この世界が弱肉強食であることに変わりはない。




不均衡。

破綻秒読み。

偽りだらけの優しい世界。



反吐が出るほど嫌だけど。



でも今は。


その気持ちの悪い優しさをあちこちに表明しないと生きられない。



だって今は。

優しい人間に優しい世界だから。




でもいつか。


世界は振り子のように移ろうものだから。


きっと今の世界は終わりを迎えるし、そのうちまた今の世界もなに食わぬ顔で戻って来るんだろう。





移ろう世界で最後まで生き残るのは。


タカでもない。

ハトでもない。



きっとハトの皮をかぶったタカなんだろうな。



ハヤブサたちの声が聴こえる。

ずいぶんと賑やかだ。

うまいメシにでもありつけたのかもしれない。



もうすぐ日が暮れる。

俺もそろそろ巣に帰ろう。



今はまだハトとして。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ