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勇気無き村に死を!  作者: 北田 龍一


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昨晩の行動について・1

「ま、落ち着け。真剣に議論してくれるのは良い。俺を信用してくれるのも嬉しいが……結論を出すにはまだ早い。現状は材料が足りなすぎる。悪魔が積極的に動いているのは、頭に入れて置くが……この段階だと少し、派手に暴れ過ぎな気がする。犯人が嘘をついていたとして、ここでマークされると動きづらくなるとも思うが……俺目線だと『怯えて錯乱している』『実は犯人だ』『村人で事実を証言している』のか、どの線もまだ残っている状態だ。絞り込みも兼ねて……俺は全員に、一つ質問をしたい」


 村長が全体の話を整理しつつ、より村人を精査するために質問を求めた。ざわつく広間が一瞬静まり、視線が村長に集中する。場が静まったのを確認してから、村長は質問の内容を話した。


「それは『昨日の夜は何をしていたか?』について尋ねたい」

「な、な、なんでそんなことを?」


 悪魔からの質問に、一呼吸した後、村長は思考を開示した。


「悪魔の聞いた足音が何であれだ……犯人は夜間にオバチャンを殺害した。あれだけの破壊を、一目のつく時間に出来るとは思えん。つまり――犯人であれは、この質問に嘘を吐くしかない」


 なるほど。確かにその通りだ。犯人はこの中にいて、夜間に殺人を犯している。ならば『犯人は夜間、人殺しをしていた』のだから――夜間について質問されれば、嘘を吐くしかなくなる。ちなみに、と前置きの後に、村長は自分から話し始めた。


「俺は昨日の夜は……そうだな。実は遠方からでも、即座に連絡が出来る道具を持っていてね。村から転送した村人たちの様子について、昨日の状況について情報交換していた。ほどほどに仕事を終えてから……日を跨ぐ前に夢の中だな。今日からハードになるのは分かっていたから、体を休めていた。俺の昨晩の話は終わり。んじゃ、ハーピィから話してくれ」


 話題を振られた彼女が、豆鉄砲を喰らったように驚く。周囲の人間が硬直する中、村長は全員に伝えた。


「オイオイ、まだ悪魔の証言は不確定要素だろう? 恐怖で聞いた幻聴だった場合、竜人娘やハーピィが犯人の線が残っている。それに村人であるなら、何の問題も無い質問じゃないか」


 確かにその通りだ。悪魔の証言はあくまで参考にする程度。この質問は、村の人間のアリバイの確認だ。もちろん犯人は嘘を吐くだろうが、後々に矛盾が生まれれば、犯人を追い詰めるのにも役立つ。真剣な村長の眼差しを受けたが、ハーピィ娘は相変わらずだった。


「ん~? そう言われてもさ~? 朝に集まった時話したけど、いつも通り過ごしてぐっすりだったよ?」

「ホント肝が据わってるッスね……」

「何か物音は聞こえた? 悪魔の証言が本当なら、あなたも物音を聞いていてもおかしくない」


 家の立地を考えると、悪魔の家を通過したのなら、ハーピィ娘の家も通過している。ならば同じように足音を聞けるはずだが、拗ねたように彼女は言った。


「熟睡していたからわかんないよ。朝までノンストップだったし」

「う、うぅ……同じ音を聞いていたなら、ぼくの言葉が本当になったのに……」

「いや、それは分かりませぬぞ。悪魔殿が犯人なら、音がしたと証言しておけば……自分より外周に住む誰かを犯人に出来る。まだ貴殿が悪である可能性も残っておりますぞ」

「まぁまぁ落ち着け。全員の話を聞いてから決めよう。んじゃ次、悪魔も話してくれ。どんな状況で物音を聞いた?」


 ぴくりと肩を震わせてから、縋るような目つきで村長を見る悪魔。数回深呼吸してから、彼の昨晩の証言が始まった。


「き、昨日は……し、死ぬかもしれないと思って。怖くて、ベットに入っても、全然眠れなくて」


 声は絞り出すようにか細く、強い恐怖が根付いている。思い出すのも嫌なのか、それともうまく思い出せないのか……はたまた、すべてが嘘なのか分からない。何とか口に出したのは、彼が耳にした恐怖の物音――


「何度目かの、飲み物を取りに行った後に……そ、外で、何かの足音が、聞こえて。ちょっとだけ外を見ようとしたんだけど、その瞬間……目、目が、合っちゃって」

「なんじゃと⁉ 犯人を見たのか⁉」

「い、一瞬眼光が、こっちを見て! そ、それだけだから、細かい所までは……」

「ぬぅ……はっきり見えていれば、犯人を追いやれたものを!」

「どうかしらね……ガン見していたら犠牲者が変わっただけじゃない?」

「……まぁ、仕方ないッスね」


 犯人を見たという証言が出たが……本当に一瞬だったので、人物の判別が出来なかったようだ。その後の様子を尋ねるが、あまり具体的な物は出てこなかった。


「そ、そうだよ! ぼくが殺されるかもと思って! 後は、もう……震え上がって、縮こまっている事しかできなくて……」

「あーあーあー……相当参ってるねぇ」

「オバチャンの惨状を見るに、無理もないがな。だが一つ深掘りさせてくれ。どうしてその証言を、最初の話し合いの時に言わなかった? オバチャンの死体が見つかる前に、一回俺たちは集まっていたが」

「う……あ、あの時は……気のせい、と、思いたかったんだ。ぼくの勘違いで、村の空気が悪くなったら、ヤだし」


 最初に集まった段階で、まだオバチャンの生死は不明だった。誰も犠牲になっていないなら、悪魔の見た物聞いた物は、恐怖が生み出した幻と言うことになる。変に主張すれば笑い話だが、これに対しオタク兄貴が疑問を向けた。


「矛盾しているように思えますな……」

「な、な、何が⁉」

「先ほどまでは、あれほど『犯人は四名の誰かだ』と強気に述べていましたが……しかし今は『気のせいかもしれない』と言っているではありませんか。疑うべき村長も、容疑者から外しておりますし……どうにも信用なりませぬ」


 難しい顔で……いっそ悪魔を犯人扱いするような目つきのオタク兄貴。気持ちは分かると前置きした上で、村長がまとめた。


「嘘をついている可能性もあるが……本当だとして矛盾するのは、感情面の問題だろうな。難しいだろうが、お前は何とか心を落ち着かせろ。でないと、真実を口にしてもノイズ扱いされちまうぞ?」

「が、がん、ばる」


 村長の言葉を受け、悪魔は何とか頷いた。

 三人の証言が終わったが、まだ犯人は見えてこない。残りの村人たちの、夜の行動を聞いてみよう……

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