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勇気無き村に死を!  作者: 北田 龍一


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後日談

 かくして『勇気無き村に死を!』の事件は、苦々しい結末と共に解決した。

 主犯は植物オタク兄貴と、村の若者。

 動機は――変革を恐れる老害へ怒ったオタク兄貴と、三年前の村八分を根に持つ若者が部分的に結託。大々的な予告と共に、殺人事件を起こした。

『長老格』『噂好きのオバチャン』『クールな狼女』の村人三名が死亡。『植物オタク兄貴』も確保するが、情報漏洩を恐れた若者によって殺害。

 さらに悲劇は続いた。事件発生からずっと閉じこもっていた『竜人娘』を犯人と疑った村の面々は、その住居に火をつける。疑心暗鬼が広まっていたとはいえ、村の人間は無実の人間に手をかけた……生き延びた村人たちには、そんな後悔もあった。


 しかし、それを責められる者はいない。村から逃げ、過去の過ちから逃げ、そして明かされた『勇気無き村に死を』の動機――ここで無責任に糾弾するような事があれば、過ちを繰り返す危険性がある。自分たちの勇気の無さが、自分たちの無責任さが、狂気と憎悪の断罪者を生んだ現実が、彼らの口を閉ざさせた。

 そもそも……家に火をつけた段階で、竜人娘が生きていたかも怪しい。若者が何故家にいたのか、そこで二人が死体になっている経緯は、全く分からない。

 ただ推測は出来る。火をつける前日、村は竜人娘に強く庇おうとしていた。そして若者が、竜人娘を想っているのも明らかになった。

 このままでは、翌日に村から竜人娘が犯人と誤認されて……何らかの制裁が下される。思いつめた若者が何を考え、何を実行しようとしたのか……詳細は不明。しかし尋常ならざる情動から、犯人たる若者が竜人娘の住居に押しかけた。


 村から脱出しようとしたのか、誰かに殺されるぐらいなら、自分の手で殺めようとしたのだろうか……何にせよ庇おうとしたのだろう。が、恐らく両者の関係は決別した。

 家に火をつけた時、誰も脱出しなかった事から――片方が死亡したか、両方が相打ちの形で死亡したのだろう。片方が生き延びたとしても……殺人の罪悪感か、既に重症を負っていたのかもしれない。何にしても、悲しい行き違いがあった。

 真相は炎と煙に消え、動機も感情も……若者が遺書と称して書いていた、犯行動機と声明のみに絞られた。三年前の戦争で起きた村八分、失われた恋人の笑顔、そして罪を罪と認識しない村人たち……加えて、今回も誤解と疑心暗鬼によって、無実の竜人娘は――


 この話は『若者と竜人娘の悲劇』と題する戯曲として、村に語り継がれる事になる。

 作詞作曲はハーピィ娘。一年前に村にやって来た彼女は、逃げ出さずに真実に向き合った人物の一人であり、三年前の部外者でもある。故にこの村の誰よりも、冷静に真実を見極め、特技の歌として村に残した。

 悲しく響く悲劇の物語。同じ過ちを犯さぬようにと、反省と自戒を込めて語り継いでいくだろう――


***


「ここまでの罪と事態を起こさなきゃ、人間反省しねぇってやってらねぇよ――なぁ、竜人娘?」


 場所は魔族領の国境付近の村。三年前の戦争で、村長が攻撃命令を拒絶した村だ。極端に人間が少なく、身体に翼や角を生やしている知的種族も多い。事件の最中、一切姿を見せなかった彼女だけど、村長を目にしても焦る事はない。

 黒髪に黒の衣服。尻尾も角も黒色が強い。僅かな紫色のラインが入っており、邪悪な印象を受けるかもしれない。

 けれど、じっくり言葉を交わしてみれば……彼女は理知的な女性だった。


「私は……村の事を恐れて、誰にも話しませんでした。誰にも訴えませんでした。そうした姿を見せていたり、せめて村長には相談すべきでしたね。無言でじっと耐えていても、他人は結局、都合のいい解釈をするだけ……信じ切れないにしても、静かに訴える勇気は持つべきでした」

「確かに一因かもしれん。今回の事も……いや、これは村陣営にいた私が言えた義理ではないが、せめて広場の会議に出て欲しかった。村側の感情悪化が防げれば、ここまで過激な演出は不要だったかも……あぁでも、それだと『若者』が納得しないか。あいつは、村に強く後悔と罪悪感を、抱いて欲しかったみたいだからな」


 犯人たる若者と、村長の間で交わした『取引』――それは若者と竜人娘を村から脱出させつつ、村側には『二人は死亡した』と誤認させる事だった。

 あの後――竜人娘の家近くで話し合った若者と村長は、周囲の村人にバレないように行動開始。若者は村役場に移動し、村長は竜人娘に交渉を始めた。

 村の議論の流れから、竜人娘が生きていくのは難しい。故に、魔族側の国境近くの村への移転を命じた。もちろん、主要な日用品や金目の物の持ち出しも――『彼女に関しては』許可している。ただ若者の方は、必要なモノだけ持ち出しを許可し、金目の物も一つか二つだけだ。後々の処理を考えると、若者の家からブツを持ち出し過ぎると、偽装が難しくなる。


「話を聞いた時は、難しいと思いましたが……上手く行ったのですか?」

「あぁ。君の家は入念に焼却したからな。遺体の二つとも女性だったが、バレる事は無かったよ。家財や道具が持ち出されていても、気が付く奴は誰もいない」


 村長が『竜人娘の家に火をつけた理由』は、夜逃げした事実を隠蔽する目的が大きい。何もかもを燃やし尽くしてしまえば――中身の詳細はごまかせる。これなら竜人娘から持ち出しても、村人は全く気が付かないだろう。

 目的はもう一つある。家の中に焼死体を二つ作る事で『竜人娘と若者が死亡した』と偽装するのが目的だ。そう……今ここで竜人娘が生きているのだから、家の焼け跡から見つけた『二人分の死体は、竜人娘と若者ではない』――その正体は、村長の口から明かされた。

次回、最終回です!

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