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勇気無き村に死を!  作者: 北田 龍一


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答え合わせ・2

 殺人の容疑者――一人は植物オタク兄貴で確定。もう一人は若者であると村長は断じている。しかしその共犯関係は脆かった。強い関係性があるのなら、捕まった翌日に殺害はしない。証拠もない断じ方に、流石に若者も反論した。


「俺が疑われるのは分かるッスけど、そこは何の根拠も無いッスよね? 犯人の動機なんて、犯人にしか分かんないじゃないッスか」

「そうだな。そりゃそうだ。が、植物オタク兄貴の動機は本人がゲロった。自分の研究を認めない老害を、自分の手で葬ったと。犯行声明の『勇気無き村に死を!』の文言とも合致している。主導して書いたのはアイツだろう。あの張り紙には、どことなくインテリのにおいが染みついてもいる。ここまでは、お前が無実の村人だとしても飲み込めるな?」

「……」


 傲慢な、挑戦状めいた犯行予告――『勇気無き村に死を!』頭のイかれた狂人と一蹴したが、本気で村を攻撃したなら……冗談で綴った内容じゃない。そしてどれだけ隠そうとしても、文章には書き手のクセがにじむ。あのセリフ回しは……犯人と確定した後なら、植物オタク兄貴のやった事と断言できた。


「しかし――共犯のお前は動機が違った。『三年前の村八分をしらしめつつ、呑気に生きている村人の殺害。特に主犯格は確実優先に殺害する』つもりだった。そこまでは植物オタクと利害が一致していたが、それでお前は止まらない。自分の好いた相手が未だに苦しんでいるのに、平気なツラで生きている村人が許せなかった。三日目の『村八分について』お前は喋ったが――話題の提供ではなく、村に対する踏み絵だったんだろう?」


 すぅ、と息を吸い……微かな笑みを滲ませる若者。明言はせずとも、これは明らかな自白と取れる。正体を現した犯人に対して、村長は濁った瞳と吐息でくたびれた様子だった。


「俺がお前を『犯人ではないか?』と思ったのはな……お前さん、犯人しか知り得ないような事をべらべら喋り過ぎだ」

「……村八分の事ッスか?」

「それもあるし、オタク兄貴を拘束した時――『これで終わったとは思えない』と俺に囁いただろ? あの段階では『村に犯人が二人いる』事実は、明らかじゃなかった。悪魔の反応が自然だよ」

「……」

「何より最大の違和感は……俺が殺されていない事だ。お前が犯人で無ければ、俺は優先して排除されている」


 若者は呆然と目を開いた。最初から眼中になかったのか、村長の言葉に固まる。もう一度深く息を吐いて、彼は若者へ言ってのけた。


「何もおかしい事じゃないだろう。村を主導している立場で、全体の音頭を取っている。自分で言うのもなんだが、犯人一人を炙り出し、二人目ともこうやって対話している。犯人側から見て、脅威以外の何物でもないだろう。俺としては、三日目か四日目に死ぬのも覚悟していた」

「なんで……だって、村長は村八分に関係ない――」

「関係なかろうが、脅威であれば排除を優先すべきだ。村人の全滅を第一とするならな。だがしなかった。お前の中の拗らせた動機が、それを許さなかったから」


 拗らせた動機と言われ、ぴくりと若者は震えた。犯人自身でさえ気づかなかった部分を、外側から見た村長が照らし出す。


「お前――誰かに理解されたかったんだろう?」

「――――……………………」


 凍り付いたように、銀の弾丸を打ち込まれたように、若者は完全に固まっていた。一瞬の激怒を通り過ぎ、鳴っている歯の震えは畏怖が混じる。何故そんな見落としをしてたのか。こんな簡単な事実を見失っていたのか。初めて気が付いたように若者は震えていた。


「それ以外ねぇよ。俺を殺しのリストから外す理由は。犯人目線から見て、どう考えても目障りだろうが。他の村人たちも基本俺を信用していて、全体の音頭も取っていた。理詰めで考えれば考えるほど、俺を襲撃しない要素が無いだろう」

「…………もう自白しているモンだから言うッスけど、アンタは村八分に関係は……」

「それは感情的な理由だろ? お前が漏らさなきゃ、俺は全く気付かなかった。お前が感情を隠し通していたならば、俺はお前に辿り着く事は無かった。つまり――お前にとって、殺人が最優先じゃなかった。行動の優先順位が微妙に違っていたから『村八分』なんて致命的なボロを出した」


 無理もないとは思う。人間そう簡単に殺人には至れない。戦争中でさえ、殺傷行為に怯える兵士は少なくないのだ。平和な環境であれば……なおさら人を殺すという行動は起こせない。見えざる倫理の壁は高く分厚い故、踏み越えるには強い動機が必要となる。若者にとってそれは、竜人娘への愛着と理不尽、村八分への憎悪だった……

 が、彼は感情を拗らせていた。ただ竜人娘を想うだけでは足りなかった。愛情に根差した動機だったからか、矛盾した基準で彼は動いていたのだ。


「本当に気づかなかったのか、分かった上でやったのか……今のお前さんを見るに前者だろう。無意識の願望から、犯人目線からしか見えない部分を村に公開した。全員にバレた後、動機として語るならともかく――あの段階じゃ、殺人犯と疑われる要素になり得る。お前が村側だとしても、直接村八分と明言して議題にはしない。現に、悪魔やドワーフは後ろめたい物を抱えていた。普通に暮らしている村人であればあるほど『俺に対して、村八分は明言できない』――」


 奇しくもそれは村八分の話題で、若者自身が『村八分に無関係だった』者に向けて放ったセリフ。巡り巡ってあの発言は『若者は普通に暮らしている村人ではない』という自白になった。

 もう完全に隠す気は無いのだろう。若者は殺人犯としての姿を隠す気が失せたらしい。暗い顔で佇む彼だが、やがて感情を強くむき出しにした。

人狼風に言いますと「視点漏れ」ですね。人狼側しか知り得ない情報、村陣営では確定が難しい情報を、妙に断言するような口調で喋ると、致命的なボロが出てしまう事があるのです。寡黙でもダメ。喋り過ぎてもダメ。いやぁ人狼ゲームは難しい……

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