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勇気無き村に死を!  作者: 北田 龍一


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18/28

村人でもいらない

「なぁ村長……いや、皆にも聞いて欲しい事があるんじゃが……良いか?」


 今まで能天気に酒を飲み、適当に議論に参加していたドワーフが挙手する。相槌や意見は述べていたが、正直なところ目立ってはいない。その彼がわざわざ手を上げ、発言の許可を求めている。不思議に思いつつも、村長は続きを促した。


「正直に言うとな……この中に、殺人犯がいるとは思えんのじゃ。ハーピィ娘は……変な目立ち方こそしとったが、村の邪魔はせんかった。悪魔は感情的じゃったが、犯人の植物オタク兄貴に、強く犯人扱いされておったから……共犯なら喧嘩をせん。若いのも、村八分の事を言い出してくれたじゃろ? 当然村長はずっと頑張っておる。となると……怪しいのはわしか竜人娘じゃと思う」

「………………」


 まさか自分から『怪しく見えるかもしれない』と、ドワーフが言い出すとは。思わぬ告白に全員が集中する。思わず身を乗り出したのは悪魔だった。


「で、でも……ドワーフさんは、態度が、変わらなかった、と思う。ずっとお酒を飲んでいたって……犯人とは、思えない、けど」

「そう言ってくれるのは嬉しいがのぅ……ただ、その。ここからは言い出しずらいんじゃが」

「なんだ?」

「竜人娘が仮に、犯人でないとして……無実の村人じゃったとして、なのにここまで一度も、議論に参加しておらんじゃろ? 昨日悪魔が言っておったが……ずっと安全圏にいるようで印象が悪くないか?」


 村長は無言、ハーピィ娘は短めに空を眺め、悪魔は怯えつつも頷いている。確かに、これだけの事態が起きているにも関わらず、村人が死んでいるにも関わらず、ずっと閉じこもった竜人娘は、非常に印象が悪い。しかし、この意見に反論が出た。若者が低く声を出す。


「……自分が疑わしいって言った後で、別の誰かに強く疑念向けるのも印象悪いッス」

「そうかもしれん。じゃが仮に……今日竜人娘をそのままにして、翌日が来て、誰かが死んだとするじゃろ? その時にやはり、竜人娘の扱いに困るのは目に見えておるわい。仮に無実の村人じゃとしても、ここまで村に非協力的じゃと……仮に生き残れたとしても」

「何ッスか? また村八分するッスか? 過ちを繰り返す気ッスか?」


 語気を強める若者。何にそこまで熱を入れているのか。一瞬『竜人娘と若者の共犯』の線が頭をよぎったが、それでは『犯人が二人』の遺言と矛盾する。熱を上げる彼に対して、空気を読まない一言が突き刺さった。


「でもさー? 前の村八分と、今回の事で起きる村八分って違うんじゃない?」

「……は?」

「前の村八分はさー……ちょっとかわいそうと言うか、時代が悪かった感もあるけど……今回のは自分で蒔いた種じゃん。殺人犯がいるのに村に協力しなかったから、起きちゃう事に見えるけどなぁ」

「何を言って……」

「じゃあさ、じゃあさ。事件が解決した後、前の村八分で標的になりかけた悪魔くんは……事件が落ち着いた後、村八分に遭うと思う?」

「え……? えぇ? 全然、考えて、ない、けど」


 悪魔は虚を突かれたようだ。それもそうだろう。今回の事件は、むしろ悪魔は犯人と疑われながらも、必死に村のために行動していた。犯人とも言い合いになったが、最終的には押し返している。これで村八分が起きるとは考えられない。彼の反応を見て、ハーピィはケロリと言ってのけた。


「そりゃそうだよ。だって悪魔くんは議論に参加しているし、村のために行動してるじゃん。でも竜人娘ちゃんは、全く協力してないでしょー? 前の原因は戦争だけど、今回の原因は事件での態度。それで村八分が起きるんじゃない? 現に協力的な悪魔くんは、全然気にしてないよ? こんな態度を取るぐらいなら、最初から村から逃げる側に居ればよかったんじゃないかな? 紛らわしい事なんてせずにさ!」

「……………………」


 この村の村長としては、彼女の発言は問題ある。しかし起こり得る展開の一つだと思う。悪魔もドワーフも沈黙の肯定を示す中、若者だけが奥歯を噛んでいた。

 なんだ? この反応は? 竜人娘が犯人としても、若者が犯人だとしても……どちらにしても腑に落ちない。男たちが頭にハテナを浮かべる中、ハーピィ娘だけが核心を突いた。


「んん~? 変な反応だけど……もしかして君、竜人娘の事が好きだったりする⁉」

「な、なっ、なななっ、なななななななっ……⁉」


 何を言っているのだコイツらは……本気で呆れそうになったが、若者は顔を真っ赤にしているではないか。どういう理屈でそうなったのか、いつの間に関係が出来たのかも知らないが、若者は否定するそぶりが無い。こんな反応では、仮に否定しても一発で嘘だとバレる。村長は事件の始まりを想起しつつ、若者に質問した。


「なぁ若者。お前『村長が残っているのに逃げていられない』って言っていたが……もしかして『村長』の部分が『竜人娘』だったりする?」

「そ、村長まで……! ふざけているッスか⁉」

「一応真面目に聞いているぞ。怒らないから本当の事を言ってみ?」

「じ、事件と関係ないッスよ‼」


 露骨なごまかし。これでは自白と変わらない。思わぬ事実……竜人娘に対し、若者は恋心を抱いているらしい。悪魔はぼんやりと見つめ、ドワーフはガハハと笑う。まだ殺人犯がいるのに、この一瞬だけは和んだように見えた。

 ――さぁ、これですべての伏せ札は開かれた。

 事件の真相に当たりをつけた村長は……村人たちに提案する。


「こいつの恋心に免じて、竜人娘への処罰は一日様子を見ることにする。犯人も……この中にいるのならだが、一日だけ待ってやって欲しい」

「そ、それで止まるかな……」

「いいんだよ。止まっても止まらなくても。止まらないなら……今この場にいない竜人娘を犯人と断じて良い。止まったならこの中に犯人がいて、和解の余地ありと判断する。これから俺が竜人娘に最後通告に行くが……この『一日待て』の話はしない。彼女だけが知らない状況を作れば、これで白黒の判別が出来るはずだ」


 様々な感情が渦巻く中、村人たちはこの方針で話を進めることにする。

 村長は――一度村役場に戻り、準備と覚悟を決めてから、竜人娘の家へ足を運んだ。


寡黙は即吊り安定ですからね……人狼ゲームの場合、竜人娘の立ち回りしていたらほぼ初日で死にかねません。

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