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勇気無き村に死を!  作者: 北田 龍一


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16/28

これで解決……?

 酒飲みドワーフの家から縄を引っ張り出し、殺人容疑で植物オタク兄貴を拘束する。全員の監視と協力の下だが、既に無抵抗な犯人は粛々と受け入れていた。

 後は長老宅の外にある、猛獣用の檻に連行し……そこにブチ込めば晴れて事件解決。やっと終わった悪夢に、悪魔は深々と吐息を吐いた。


「はぁぁぁ~~っ……終わった。おわったぁ……!」


 じんわりと目に涙を溜め、両手でこぶしを握って安堵を見せた。

 無理もあるまい。彼は二日目夜に犯人の足音を聞き、その証言をした事で村人から注目された。特に植物オタク……否、犯人から強く疑惑を向けられ、周囲からも信用は得られなかった。殺される恐怖に加え、三日目は村八分の自白もある。今回の事件で、一番疲弊した村人は彼だろう。一方、ハーピィ娘は能天気に言ってのける。


「いやー楽しかったなー! 狼女さん視点で、イイ曲作らないとね!」


 独特なセンスで、終始村を脱力させていたハーピィ娘。村へほとんど馴染んでおらず、愛着があるか怪しかったが……どうやら『彼女なりに』村を愛しているようだ。確かに今回の事件において、狼女は英雄と呼ぶにふさわしい。浮かれるには早い気もするが……

 彼女の態度に触発されたのか、酒飲みドワーフもガハハと笑い始めた。


「いやーこれにて一件落着! 今夜は深酒じゃあ!」


 ……犯人が捕まる前でも、グビグビと毎晩酒を飲んでいた気がする。飲めるならもう、何でも良いのではないだろうか? 若干の呆れ顔を見せる村長に対して、若者はまだ不信感を募らせていた。


「随分と殊勝な態度ッスね……村長、まだ油断しない方が良いかもしれないッス」

「……と言うと?」

「捕まった時といい、抵抗が無さすぎるッス。これで終わった……ってのは、なんか実感が湧かなくて」


 村長は無言を貫く。ただ、胸の内では……若者の意見に頷いていた。村長には確信を持っていた。彼が犯人を『拘束』するのも――『事件はまだ終わっていない』からである。

 だがまだ明かせない。それを明かすには早い。もう少し状況を進めなければなるまい。本心を隠したまま村長は、檻の中にブチこんだ。


「……随分と小綺麗ではありませんか」

「使うかもしれないと思ってな。時間がある時に俺が掃除しておいた。最低限の世話も、人が戻るまで俺がやってやる」

「それはそれは。甲斐甲斐しいですなぁ」

「やかましい」


 きっちりと檻の扉に鍵をかける。これで犯人は檻から出られない。一呼吸してから、一応は彼に伝えた。


「お前の罪状は重い。村へ大きな混乱を起こし、平和と秩序を棄損した。加えて村人三名の殺害……重罰以外はあり得ない。財産の差し押さえや極刑も覚悟しておけ」

「その気概が無ければ、最初から始めませんよ」

「――それはそれとして、だ。お前が犯行動機として述べていた……植物の研究資料等には、分かる奴には価値があると判断する。だがこの村の人間では、理解する前にお前への反感が先に来る」

「……非合理ですが、それも仕方ありません。私の今回の行動も、見方によっては非合理でしょう。それで? 家に火でもつけますか?」

「いいや。魔法使いと伝手を使って、研究を引き継げる奴がいないか探しておく。お前の所業と名前は伏せるが……自分の研究が役に立つのなら、お前も本望だろ」


 罪は罪、成果は成果と切り分ける。植物オタクのやったことは許さないが……資料や研究は認め、別の誰かへの継承は許す。それが村長の決定のようだ。

 村人たちはいまいち理解が及ばないようだが、犯人の心に響いたらしい。一瞬目を開いた後、僅かな後悔と諦観が見えた気がした。


「処断するのは村長です。お好きにすればよろしい」

「そうさせてもらおう。安心しろ。時間はそれなりにかかるが、知識のある奴に引き継ぐ事は約束しよう」

「…………」


 オタク兄貴の犯行動機……『新しい研究成果を受け入れられなかった』または『認められなかった』と言う割には、村長の処置に対して何も言わない。自分の成果を取られるとか、逆に自分が死んだとしても研究は残ると喜ぶか……ともかく、感情を刺激されそうな言葉だが……あまり興味が無さそうな反応に見える。釈然としない気持ちもあるが、村長はまだ仕事が残っていた。


「さて……後は竜人娘に、今日の出来事を伝えるのと、狼女とオバチャンの遺体を処置してやらんとな」

「それどころじゃなかったもんねー」


 犯人探しに加え、昨日まで共に生きていた仲間の遺体に触れるのは……精神的に非常に苦しい。幸い、防腐処理を施す魔法は村長が習得しており、死体の形は殺害された直後で固定されている。長老の名前が出ていないのは、逃げ出す前に処理を終えているからだ。無残な状態を思い起こしてか、若者はため息交じりに言う。


「逃げていた村人にしてみれば……戻ってきたら三人も死んでいて、オタク兄貴が犯人だった……ッスね」

「色々とショックじゃろうが……」

「げ、げ、現場にいたぼくたちは、もっと怖かったよ!」

「あぁ……そっちにも連絡を入れないとな。とりあえず、みんなは遺体をこの布にくるんで……確か、役場の奥に棺があったはずだ。ひとまず皆で、二人の遺体を保管しておいてくれ。俺は竜人娘と逃げた村人に連絡する」


 今後の段取りを話すと、全員が素直に従う。一人村役場に残った村長は……『魔法使い』に連絡を入れてから、竜人娘の所へ向かい状況を報告した。


「――今日の流れはこうなった。やっと犯人を捕縛した」

「……そう、ですか」


 声は相変わらず静かで、どこか影を持っている。納得いかない雰囲気を察した村長は、狼女の手帳を取り出し、その内容を口にした。


「……だが、まだ事件は終わっていない。狼女が残した言葉は真実だろう」

「なんと、書かれていたのですか?」

「ひらがな三文字……『ふたり』だとさ。何を伝えたいかはすぐわかったよ」

「…………」

「犯人は植物オタク兄貴だけじゃない。まだ……村にはもう一人、共犯者がいる」

村視点 (村長視点)で二狼確定です

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