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勇気無き村に死を!  作者: 北田 龍一


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容疑者への追求

「そうだな。いい加減にしてもらおう」


 ヒートアップする悪魔とオタク兄貴の間に、村長は冷や水をかけた。悪魔は絶望的な表情で凍り付き、逆にオタクは不適不遜に笑っている。ドワーフ、若者、ハーピィ娘さえも静まる静寂の中……村長は、犯人を指しつつ言った。


「そろそろ観念してもらうぞ――なぁ、オタク君?」

「「「「「えっ……?」」」」」


 その発言に、誰もが凍り付いた。悪魔さえ「自分が糾弾される」と身構えていたものだから、不意を突かれて固まっている。そして指名されたオタク兄貴も、一瞬たじろいで……すぐに反論した。


「御冗談を、村長。言い合いを止めるにしても、少々やり過ぎですぞ?」

「冗談? いや。俺は本気で……お前を犯人と考えているが」

「そんな脈絡もない。非合理的ですな。せめて、何らかの根拠を示していただきたい」


 呼気を荒くして、オタク兄貴が村長に食ってかかる。犯人として疑われれば、誰だって反論したくなるだろう。二人の間に走る緊張を、村人たちは刮目した。


「オタク兄貴……お前さんが今まで、昼に主張していた事柄は、実はさほど悪魔と変わりがない事に気が付いていたか?」

「は? 何を仰って……」

「お前さんは悪魔に対して、結構強火に『感情論だ』『根拠がない』と言っていたな? それは別に、悪魔に限定した話じゃない。この場にいる全員に言える事だ。お前さん自身にもな。全員が水掛け論をやるしかない」

「……よく理解しているつもりです。それが私に疑いを向ける理由ですか? 悪魔殿の方が、露骨に怪しいではありませんか」

「お前さんを疑うのはな……ずっとお前さんは『誰かを強く疑ってばかりだった』点だよ」


 村長はオタク兄貴の言動、その問題点を指摘する。


「悪魔は確かに怪しい点もある。が、村のためになる情報を提供する意思はあった。今回の『村八分』についても、二日目の『足音』にしてもそうだ。真偽不明なのは確かだが、村の利になり得る発言をしている。若いのも今日の議題を提供してくれたな」

「ですからそれは、嘘かもしれぬと……」

「お前はさ。誰かに疑問を向けたり、信用できないって言うばかりじゃねぇか。ドワーフやハーピィ娘の様に、発言や態度が一貫しているかも怪しい。竜人娘の非協力的な態度にも文句を言っていた」

「この状況で、疑心暗鬼になるなと仰る⁉」

「そうは言わない。が、お前さんは一見理性的に見えて、疑わしい言動に対して強く声を上げる。これは――『自分以外の誰かに、犯人である疑惑を擦り付けたかった』んじゃないか? お前が犯人であるから、ふらふらと怪しい部分を強く主張していたんじゃないか? 誰でも良かったから、いまいち意見が安定しないし……発言が多く、内容も疑惑を向けやすい悪魔を強めに叩いた。違うか?」


 本気で疑われていると知り、いよいよオタク兄貴は怒りを顕わにする。だが村長は怯まず、胸から切り札を取り出した。


「なんですか? それは」

「……狼女の忘れ形見さ。死に際に村へ託してくれた」

「な……そんなものはどこにも……」

「扉、開いていただろう? みんなが来る前に……先んじて俺が回収しておいた」

「で、でしたら村長‼ あなたこそが犯人なのでしょう⁉ そんなものを偽装して……」

「そりゃ無理筋の主張だな」

「何故⁉」


 村全体を見渡してから、村長は記憶を掘り起こすように促す。狼女の家をちらりと見て、彼は事件現場を思い出しつつ解説した。


「小屋を見ただろう? もみ合いがあったのは外。狼女が犯人に襲われ、その後家の中に逃げ込んだ。犯人は扉を破ろうとしたが、抵抗が続いたので引き下がった。だが既に致命傷を負った狼女は助からなかった……ここまでは全員納得できるな?」

「う、うん。そうだと、思う」

「むしろ、それ以外の筋書きがないよねー」

「外の荒れようが酷かったッスから、間違いないッス」

「外の荒れ方の割に、部屋の中は綺麗じゃったしのぅ……」

「……流れは間違いないと思いますが。でも、それと何の関係が?」


 最後まで食い下がるオタク兄貴に、村長は語気を強くして詰めた。


「簡単だ。『犯人であれば、扉が開くとは思わない』だろう? 昨晩殺し損ねて、扉越しに抵抗していた相手が……扉の鍵を開けているなんてのは、想像できない。先に一人で部屋に入って、証拠を回収しようなんてのは……犯人だと絶対に思いつけない」

「そ、それと証拠の捏造が――」

「証拠のもみ消しを考える事は出来ても、犯人は証拠の捏造は考えられない。最後まで抵抗した狼女が『本物』を用意している可能性は、想像できるからな。偽物と本物がかち合ったら、村目線ではどちらかが偽、どちらかが本物だ。二人纏めて隔離されたら、犯人側は詰みかねない。出来ないんだよ。この盤面、この状況じゃあ……犯人は証拠を捏造できない!」


 ――この発言には、一つだけあえて嘘を混ぜた。

 実は犯人側は『詰まない』のだが……それを知っているのは、村長と犯人だけ。そして犯人は『まだ気づかれていない』と誤認している。だから、この発言を真実と肯定するしかない。


「それを見越して、狼女は……広場までの通り道にいる俺を信用して、扉の鍵を開けていたんだろう。死ぬ寸前に書き残して、口の中に挟んでいたよ」

「く、口に……何故、そんなことを」

「これもメッセージだよ。手帳と牙の間に……血に濡れた布切れが挟まっていた。これがどういうことか分かるか?」


 全員が沈黙し、村長とオタク兄貴を交互に見やる。だがよく観察すれば……オタク兄貴の顔色が悪い事に気が付くだろう。村長は、決定的な証拠を叩きつけた。


「オタク兄貴……お前、昨晩怪我をしたと言っていたな? 標本の整理中に、うっかり落として負傷したと」

「…………」

「それは嘘だ。本当は……狼女に噛まれたんだろ? わざわざ口に、血に濡れた布切れ挟んだ理由は――『反撃で犯人を噛んだ』と伝えるためだ。傷口を、見せてもらおうか」

中盤当たりの、オタク兄貴への追求内容を人狼風にすると「お前周りと大して意見変わらない割に、周囲への黒塗り強かったよな?」って感じです

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