明日へ
ネロとモモとの涙ながらのお別れをして、フギ町まで戻ってきた。
「悪いな、今日はもう満室だ。お前達、兄弟かい? ならベッド1台だけど1部屋なら空いてるよ」
いつか聞いたことのあるようなセリフだ。
やはりこの服装でフードを被っていると男の子にしか見えないのか。
最近はずっとウィンと一緒にいるからフードまで被らなくても良いんじゃないか。考えている間に、ウィンが宿泊の手続きを済ませてくれていた。
「ねえ、私ってそろそろフード被らなくてもいいんじゃない?」
「ん? どうして?」
「だっていつもウィンと一緒にいるから大丈夫かなって」
「うーん、でもトウコ知らない人について行くでしょ」
「いや、流石に行かないでしょ!」
胡乱げな目で見てくるウィンにムッとした。
「じゃあ、『助けてくれ! うちの嫁が怪我して動けねえんだ!』とか言われたら?」
「……ついて行くわ」
「はぁ」
そもそも旦那でさえも動かせない嫁を、非力なトウコに助けを求める訳がない。とかなんとか言われた。
なんか引っかけ問題みたいじゃない。
こうして今後もフード被りが決定してしまった。
なんでも私は騙されやすそうな外見をしているらしい。解せない。
部屋を取ったあとは冒険者ギルドに顔を出した。
王都で出入国許可証を発行してもらうために、ヒダカに紹介状を書いてもらうのだ。
「ヒダカさん、お久しぶりです」
「ああ、ウィンにトウコか。村の様子はどうだ?」
「ええ。あの後も若手の冒険者が応援に来てくれているので、少しずつ以前の街並みを取り戻しています」
「それは良かった。紹介状の準備はできているぞ。なるべく早く王都の冒険者ギルドに向かった方がいい」
王都のギルドでは日に日に出入国許可証の取得が難しくなっているらしい。
明日は朝一番に出発することになった。
「明日からは王都へ向けて出発ね」
「ああ、この国の王都はとても賑やからしいよ」
「楽しみね。珍しい食材とか売ってるといいな」
フギ町の冒険者ギルドを出て宿屋へ帰る途中、ウィンと何気ない会話を楽しんだ。
遠目に見えた白い馬が、夕日と影とのコントラストで光輝いて見えた。
いつかのエニフを思い出しながら、未来に少しの不安と期待に胸を膨らませた。
以前は仕事もプライベートも散々の日々を過ごしていたけど、こちらの世界に来てからの方がトウコにとっては安定の日々なのかもしれない。
明日からの旅もきっと良いものになるだろう。
*****神界にて
「エニフよ、久しぶりじゃな」
「なんだよ。さっき会ったばかりじゃねえか」
人間にとっては月日が流れていたとしても神界に住まう神達にとっては一瞬のできごとである。
「酒を持ってきたのじゃ。お前の世界の破滅率が安全圏に入った祝いじゃ」
「ああ、それに関しては礼を言う。破滅率が加速的に上がっていたはずなのに透子が来てから加速するどころか減少した。お前が言ったようにバタフライ効果かも知らないな」
「ふっふっふ。もっと妾に感謝してもよいのじゃぞ」
「ふんっ。お前は昔からすぐに調子に乗る」
「まあ小さな世界といえども、この短期間に減少方向に転じたんじゃ。一体なにがあったんじゃ?」
一つ一つは大きなことではない。
まず、死ぬはずだった猛者の子孫であるウィンが生き残ったこと。
ウィンは争いごとに反対する勢力のうちの一人だが、その平和を好むような人間が至る所で抹殺されていっていた。
死ぬ予定だったウィンがいなければトウコがラーナ町の商隊護衛をすることはなかったかも知れない。
そうすると、レッドサンダーは死んでいた。
レッドサンダーは善良な冒険者だったからその影響は大きかったはずだ。
一番大きいのは、キャッティー村を救ったこと。
トウコがいなければ魔物の暴走によりフギ町ギルドの冒険者達に甚大な被害があり、ギルドマスターのヒダカも冒険者たちもほとんど死んでいただろう。
そうなると怒りや恨みの矛先はキャッティー村の獣人に向かう。
キャッティー村の奥にはボーボア村や他にも獣人の村がいくつかある。
人間の町に一番近いキャッティー村が人間と仲良くなったことにより、今後は獣人と人間が和解する未来も広がった。
小さなことだがトウコがいなければ、ウエチ村でゴブリンに刺された商人のカールは死んでいた。
カールが死ねば小さなウエチ村に物品が滞り貨幣の価値が暴落して1つの村が混乱する予定だったが、それを防いだ。
また、ラーナ町の「間の悪い冒険者3人組」も死なずにすみ、後輩の冒険者達に良い影響を与えるようになっている。
「明日からは王都に出発らしいな。これからどんな展開があるか楽しみだ」
この先もトウコが行く先々で良い影響が広がることを期待する神々であった。
【閑話】
――また別の日
「エニフよ、久しぶりじゃな」
「ごふっ、げほっげほっ!」
「お主! まさか、そんな……!」
「お前急に現れるんじゃねえ。今日はハンバーグだ」
「呆れたぞ。ちゃんとトウコに言っておるのか?」
「あいつは言わなくてもきっと分かっているぜ」
「なんでそんなことが分かるのじゃ?」
「最近1つ多めに入っている。前まで偶数個だったが最近は奇数個だ。つまり1つは俺の分だ」
「……お主のような男は地球ではジャ〇アンと呼ばれておるぞ」
「??」
これにて一旦、完結とさせていただきます。
今後の予定は未定ですが、続編として王都編、隣国編を考えております。
オレオレな王子様が現れてウィンが嫉妬したり、ちょっと貴族のごたごたに巻き込まれてトウコのパワープレーで押し切ったり……ある程度書き溜めができたらアップできたらと思います。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
ブックマークや評価、いいね、をくださった方々にも日々支えられておりました。
すごく嬉しかったです。
ありがとうございました。




