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復興とその後

次話で一旦、完結となります。

最終話は少し短いお話になるので、本日の17時すぎにアップ予定です。

完結までお付き合いいただけると幸いです。


 

 キャッティー村に残った私達は畑の整備や村の周りを囲む柵作り等、復興の手伝いに勤しんだ。



 村の手伝いを始めて5日程経った時、村の近くを通る川の辺りが騒がしくなった。先日、筏船がフギ町へと帰っていった場所だ。


 獣人達は警戒しながら川辺へと向かっていく。私もウィンやヒダカと一緒に見に行くことにした。


「あらあら、出迎えてくれたのかね」

 年配パーティのおばあちゃんが、みんなから預かった魔物を精算した代金を持ってきてくれたみたい。


「ギルドマスター! 村の復興は進んでますか?」

 一旦フギ町へ帰還したはずの後衛部隊のリーダーだ。

 後輩の冒険者を30名程引き連れて戻ってきた。

 他にも、スタンピード討伐では見なかった顔ぶれも何人かいた。

 みんな村の復興を手伝うために戻ってきてくれたみたい。


 船には荷物用の筏に沢山の物資が積まれていた。

 フギ町の領主から、復興の足しになればと煉瓦などの資材を調達して戻ってきたのだ。

 どうやら、キャッティー村の薬草を見せられた領主はその品質の高さから取引をしたいという事らしい。

 獣人に敵対心がないと分かり少し心を開いたようだ。

 きっとおばあちゃんが上手く話したのだろう。


「村の復興の為に……! ありがとうございます!」

 獣人達は驚きを隠せないようだ。



 その後も復興は着々と進んだ。

 元通りとまではいかないけどかなり当初の村の形に近付いた。



 ヒダカやビッグバンビは仕事があるため一週間程で村を去ることになった。


 今日はヒダカを見送るために川沿いまで来た。


「じゃあ俺たちは先に帰る。ところでお前たちはこのままキャッティー村に留まるのか?」

「いいえ、私たちもあと1週間ほどで出発しようと思います」


「もう行く町は決まっているのか? できればフギ町で活動してくれるとありがたいんだが……」

 私達が()()の冒険者ということはヒダカも分かっているのだろう。

 ダメ元で言ってきたようで少し眉尻が下がっている。

 でも、こういう時はしっかりと断らないと誤解を招く。


「すみません。実は隣国に行こうと思っています」

「そうか、残念だ。ところで、国境越えとなると出入国許可証は持っているのか?」

「出入国許可証ですか?」

「ああ。じゃあ、王都のギルドに知り合いはいるか?」

「いませんが……隣国に行くのにわざわざ許可が必要なんですか?」


 実は、最近は隣のポメアン王国がキナ臭いらしい。

 そのため、各国の出入国審査が厳しくなっているようだ。


 以前にラーナ町のギルドで説明を受けた通り、冒険者ギルドは各国の兵力とは独立した組織だ。

 だから、王都のギルドが発行した出入国許可証を持っていると身分証代わりになって審査がスムーズになるらしい。


 キャッティー村から直接国境へ行く予定だったけど、一旦、王都へ寄ることになりそうだ。

 王都のギルドへはヒダカが紹介状を書いてくれるらしい。



 ヒダカ達を見送ったあと、残りの時間はできるだけ復興を手伝い、余った時間はネロとモモと沢山遊んだ。


 一週間はあっという間に過ぎた。


「トウコお姉ちゃん、また遊びにきてね!」

「ウィンお兄ちゃんもまたね!」


 隣国に行くとなかなかキャッティー村へ戻ってくることはできないだろうけど、生きている限りはまた会える。

 ネロとモモを抱きしめてキャッティー村との別れの挨拶をした。



 幸いなことに、キャッティー村には若手の冒険者たちが代わる代わる滞在をしては復興を手伝ってくれている。

 こうして私達が去った後も日に日に獣人と人間の絆が強まった。


 後にフギ町とキャッティー村は川の関所を開放して、交流が進んでいくこととなる。


 キャッティー村は薬草栽培が盛んなため薬草をフギ町に売って村は潤い、フギ町は通常価格で品質の良い薬草を入手できるルートを手に入れて良い関係を築く。


 そして、復興の手伝いをしていた冒険者の中には獣人と恋をして住み着く者も現れたため獣人を誘拐する奴隷商人もキャッティー村には近づかなくなっていった。


 いずれキャッティー村以外にも、その奥のイノシシ獣人のボーボア村やその奥の村とも親交が膨らむことになる。




 *****後衛部隊の一人


 俺が見たのは悪夢か? それとも幻か?

 俺以外、誰一人としてその()()を見ていなかったのか?



 ――前線部隊から緊急応援の連絡が入った。

 聞いた魔物の数に意識を奪われそうになったが、俺の後ろには沢山の後輩がいる。

 町の為にも冒険者としても、ここで逃げ出す訳にはいかない。


「前線部隊が俺らの力を必要としている! 先輩方が逃した魔物を狩るぞ! お前らの力を見せつけるチャンスだ。いつも通りクールにチームワーク組んでいくぞー」

 後輩たちの士気を高めるために、絶体絶命の状況とは言えなかった。


 そもそも俺が後衛部隊のリーダーなのがおかしい。まだCランクに上がってからさほど経験もない。

 経験豊富な先輩方は前線部隊だから俺しかいなかった。ただそれだけだ。


 自分で言うのもなんだが見た目の良さと、優しいってことで後輩たちには人気がある。

ただの優柔不断の事なかれ主義なだけなのに。


 スタンピードが、わざわざ山を越えてこちらに向かう可能性なんて低いと思っていた。だから、薬草採取しか経験のない子の参加にも反対はしなかった。

 ここで死なせてしまうなんて。胸が苦しい。自分の考えが甘かったことを痛感した。


 とはいえ、時間をかければ事態はより悪化する。

 俺たちはとにかく急いで山を越えた。



 前線に近付くほどに1匹、2匹と魔物が飛び出してきた。

 キングクラスでなければ後輩たちでも連携すれば倒すことができる。


 自身の体力を温存しながらも、できるだけ急いで前線まで辿り着いた。



 そこでは多すぎるほどの魔物が死んでいた。


 それでもまだ大サソリが3体。

 それぞれのパーティが戦っていた。



「大サソリ、もう1体現れました!」


 声の方向を見ると1人の少女が木の枝に乗って、大声でみんなに知らせていた。


 遠目からでも美しい少女ではあるが、なんせ小柄で弱そうだ。

 足手まといになるから木の上の安全な場所にいるんだろう。


 そんな大声を出したらサソリに狙われると注意をしたかったがもう遅い。

 案の定、大サソリは少女の方に向かっていった。


「バリアっ! 水中っ!!」

 少女が魔法を唱えると、大サソリが水に覆われた。


 あの大きなサソリ全体を覆うほどの魔力があることは分かったが、サソリは水なんて関係なしに動きを止めない。


 助太刀しようと走ったが間に合わない。


「バリア内――」

 その後、少女が何を言ったのかは分からないが、次の瞬間大サソリだけが砕け散った。

 まるで周りの空間を無視してそこだけ切り取ったかのように。


 一瞬、何が起こったのか頭が真っ白になった。未知への恐怖だ。


 大サソリは殻が硬い。剣を通すにしても、一番やわらかい関節に通すのが通例だ。

 その大サソリが関節やら何やら関係なしに砕けた。

 恐ろしい。魔物といえども、こんなえげつない最期は望んでいなかっただろう。



 その夜、恐怖のサソリがみんなに振舞われた。

 誰一人、疑問に思わないのか?

 おい、お前。その手に持っている大サソリは手のひらサイズだ。

 どうやってそんなに小さく砕いたのか疑問に思わないのか!?


「先輩、手が震えてるっすよ。よっぽど美味かったんすね!」

 事情を知らない後輩の陽気さが恨めしい。



 翌日、復興を助ける者と帰還する者に分かれたが、俺は帰還することを望んだ。

 もともと後衛部隊は獣人に対して思い入れもないし、後輩のほとんどは長旅に疲れて帰りたがっている。

 まあ、特に深い意味なんてない。船で帰らせてもらえるならラッキーって具合だ。

 早々に船で帰ろうとした時、あの少女がこちらに歩いてきた。


 一瞬、呼吸をすることを忘れた。それほどまでにあの光景は恐ろしかった。


「船なら半日で帰れます。徒歩で帰ったことを考えると3日程時間に余裕がありますよね? 復興にご協力いただけると嬉しいです」

 美しすぎる顔でニコリと微笑まれた。


 正直、生きてる心地がしなかった。

 逆らえばお前なんていつでもミンチにできる。そう言われている気がした。


「おい、お前ら! 3日間復興を手伝うぞ!」

 船に乗ろうとした者ども全員呼び戻して復興を手伝った。



 ――まあ、結果的には手伝って良かったと思っている。

 元々獣人に何かされた事があるってわけでもなく、単にみんなが嫌っているから俺も嫌いぐらいだった。

 復興を手伝ってみると、獣人も悪い奴ばかりじゃないってことも分かった。

 後輩を引き連れて再び修繕の応援に行った時には、思った以上に喜んでくれたから俺の方が嬉しくなったことも良い思い出だ。

 

 何より俺の奥さんみたいな気立ての良い美人もいる。

 へへっ。まさか俺が獣人と結婚するなんて想像もつかなかったな。


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