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スタンピード衝突

 

 翌日、明け方。


「約3km先、魔物を確認! 数10匹が猛スピードでこちらへ向かってます」

 双眼鏡のような魔道具で先方を警戒していた冒険者から声が上がった。


「何だって! みんな、戦闘準備だ! 各パーティで安全を確保しながら魔物の撃退準備! できるだけ前線の俺たちでキングクラスを狩る」

 ギルドマスターのヒダカの指示で各パーティが動き出す。



 私は少し大きめの木に登り視界を確保する。


 遠距離で魔物を倒すことができるから最前線に配置してもらった。

 こちらに到着する前になるべくキングクラスや大きな個体を倒す。


 それから、ウィンと最前線に立っているビッグバンビのメンバー4人にバリアを張る。

 メンバーにも一応、攻撃から身を守る『バリア』という魔法をかけた事を言っておいた。


 本当は部隊の全員にバリアを張りたいところだけど、今は魔力の消費を控えたい。


 魔物は理性を失っているかの如く、猛スピードでこちらへ向かって来ていた。


 300m程の距離になった。

 大きい個体は目立つから焦点を合わしやすい。

「光レーザー照射! 光線銃!」

 レーザーを1体に集中させて飛ばした。


 シュンッ!


 「「「な、なんだ!? オークキングが倒れたぞ!」」」

 冒険者達から声があがる。


「トウコが魔法を使って倒しました」

 ウィンが冷静に答えている。



 その間にも、魔物は迫ってきていて、距離200m程になった。

 動くから焦点を合わせにくいけど集中して、再度光レーザーで大きい魔物2体を撃つ。オーガだ。


 シュン! シュンッ!


「「「ま、また!?」」」

「おい! お前達、よそ見するな。魔物に集中しろっ!」

 ヒダカがよそ見をしていた冒険者を一喝する。



 距離100m。

「ウォーターカッター!」

 手先を揃えて水平に、左から右へゆっくり動かした。

 手先から超高圧の水の刃が出ているイメージだ。

 手先がゆっくり動くと、それに合わせて対象の数十匹の魔物の上半身と下半身がサヨナラしていった。


「「「「ええっー!!」」」」

 ヒダカの声も混じっていた。


 二足歩行の魔物は大方倒せたが、四つ足の魔物は背が低いからウォーターカッターから逃れた。

 キングクラスの頭の良い魔物も刃から逃れた個体がいるが、いっきに30匹ほどは減らせたと思う。



 距離50m。

「バリアっ! 水中!」

「バリアっ! 水中!」

「バリアっ! 水中……」

 4回目以降は無詠唱。


 できるだけ大きい個体から狙いを定める。

 1体ずつ頭部だけに集中してバリアを張り、バリア内を水でいっぱいにする。

 これで、水中にいるかのように上手く呼吸ができなくなる。

 さっきのウォーターカッターで思ったより魔力が持っていかれたから、魔力の消費が少ないバリア水中はありがたい。


 次から次へと押し寄せる魔物に、同じく魔法をかけていった。20匹程にはかけただろう。


「「「次は何だ!?」」」

「魔物が呼吸できないようにしています」

 またウィンが私の代わりに説明してくれた。私の短い詠唱の内容を理解してくれたのだ。

 一応、何をしているかという事を他の冒険者に知らせておいた方が戦いやすい。


 頭部が水で満たされた魔物は、当然動きも鈍く途中で倒れる個体もいた。

 勢いのまま走ってきた魔物は冒険者達に容易く倒されていく。



 キングクラスも各パーティの攻撃範囲内に到達した。


 オーガ2体にゴブリンキング2体、オークキング1体。

 それぞれ『バリア水中』で弱っている。


 オーガは体長3、4m程だ。

 大きな鉄剣を持ち、鬼のような形相で角が2本ある。

 魔物の割に頭が良く、怪力の上、剣技も優れている魔物だから厄介とされている。

 しかし、今はその剣技どころではない。

 必死に自分の頭部のバリアを取ろうと引っ張ったりしてもがいていた。


 そこを逃さず、ビッグバンビのメンバーが次々と攻撃をしかけていった。

 オーガはもがきながらも鉄剣を振り回しているが、カーシが鉄剣を受け止めて動きを止めている間に、後衛の弓矢担当と、ハートの魔法で攻撃していた。


 さすが、Bランクパーティだけあって、みんな冷静だ。

 ハートの風魔法の威力も強く、頭部のバリアと首元の境を上手く見極めてオーガの首を飛ばした。


 もう1体のオーガはウィンが単体でサクッと首をはねて倒していた。

 首をはねただけでは胴体がまだ動くからその後に心臓を刺すまでが、やはり剣舞のように無駄な動き一つなく、戦いだというのに美しくさえ見えた。



 ゴブリンキングは人間に似た姿をしているだけあって頭が良いが、オーガほどの怪力はない。

 しかし、個体によっては、やけに切れ味の良い武器を持っていたり、剣技を極めているから侮れない。

 でもそんなゴブリンキングも今はそれどころではない。

 バリア水中によって息ができないからもがいている。

 自力で外せないと分かったら、次はバリアに攻撃を始めた。


 ゴブリンキング2体のうち、刀剣を持っている個体をお姉さんパーティが攻撃をしかけていく。

 女性だけのパーティだけど、全員Cランクというだけあって落ち着いている。特に剣士のお姉さんが戦乙女のようにカッコかわいい。


 もう1体のこん棒を持ったゴブリンキングは、バリア水中を外そうと思い切り自分の頭を石棒で殴っていたから、それに合わせてバリアを解除したら自身のこん棒がクリティカルヒットしていた。

 そこを中堅のパーティが攻撃を仕掛けていく。




 少し遅れて大サソリが3体やってきた。


 大サソリは体長5、6m程ある。殻が固く、刀剣が通りにくい上に尻尾に毒を持っている。

 火には弱いが、ここは草木が多いから火魔法は使えない。


「大サソリはビッグバンビ、若手10人組パーティ、俺とウィンでそれぞれ担当だ! 年配組は続けてサポートをお願いする!」

 ヒダカの的確な指示で各パーティが混乱することなく動いている。


 お姉さんパーティや中堅パーティはまだキングクラスと対峙中だ。

 さっきまで、年配パーティやヒダカはみんながキングクラスと戦いやすいように、横やりを入れてくる魔物を撃退してくれていた。この役割はかなり大きいと思う。


 若手10人組パーティは個人差が大きいから先ほどまではサポートしてくれていたけど、いよいよキングクラスの相手をするみたい。

 パーティのリーダーがしっかりと指揮を執っているみたいだから大丈夫だろう。


 そして私も木の上から周りを見渡して今は後援に回っている。



「大サソリ、もう1体現れました!」

 みんなが3体と対峙しているうちに、もう1体現れた。

 大きな声で知らせる。

 

「バリアっ! 水中っ!!」

 大サソリの体全体に魔法をかける。大サソリはどこから呼吸しているのか、いまいち分からない。

 水中にしただけでは、動きは鈍らない。


 私の声に反応したのか、すでにこちらに狙いを定めていた。


 仕方ない、これは使いたくなかったけど。

 一瞬で水を抜いて風に切り替えた。


「バリア内……かまいたち」

 一瞬で粉々になったけど、絶対に『ミキサー』とは言わない。

 


「ヒッ!」

 後方から人の気配がしたから振り向くと、後衛部隊のリーダーがいた。


「応援ありがとうございます」

「は、はいっ!」


 昨日ヒダカが応援を頼んでいた後援部隊の人が来てくれたのだ。その後も続々と到着した。

 キングクラスの魔物は大体倒したが、まだまだ普通の魔物が3、40匹程残っている。

 後衛部隊の到着はありがたい。

 前線部隊はキングクラスの魔物との対峙で、体力や魔力をかなり消耗していたところだった。

 

 後衛部隊の大人数が駆けつけたことにより、辺りは魔物と冒険者で更に混沌としていった。



 やがて戦いはキャッティー村の付近にまで広範囲に広がり、魔物や冒険者達の叫び声、剣がぶつかる音で喧騒に包まれていった。



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