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世間知らず


 ラーナ町には予定より2時間ほど遅れて帰還した。


 まずは、ギルドへ任務完了の旨と、オークキングが出没した事を報告に行くことになった。


「任務完了の報告と、オークキング出没に関してだ」

 今回の合同任務のリーダーのロマンが代表して受付嬢に言うと、ちょうど通りがかりのリップスもこちらに合流してきた。


「やあ、君たち、お疲れさま。ウィン君とトウコちゃんも初任務ご苦労だったね」

 リップスは無事に帰還した私たちを見て柔らかく微笑んだ。


 今回の依頼のリーダーであるロマンがそのまま報告を続ける。

「リップスさん、オークキングに遭遇しました」

「そっか。オークキン……、ええっ!?」

「群れとオークキングは何とか倒しましたが……」

「ええっ!? ちょっと待って、ちょっと待って!」

 ロマンの報告にリップスの理解が追い付いていない。


 リップスは慌てて、サブマスターの所へ行き、そのあと私達はサブマスターのゴンゴの部屋へ案内された。



「簡単な報告は今しがた商人達にも聞いた。もう一度お前達から詳細を聞きたい。それとだな……疑っているわけではないが本当にオークキングだったのか?」

 ゴンゴは不思議そうな顔でロマンに話しかけた。

「はい。間違いありません。それに群れの大きさからしてもオークキングだと思います」



 通常オークキングが率いる群れが出没した場合は、Cランクの冒険者だと20人以上で討伐に向かうらしい。それでもオークの数が多ければ負傷者がでるらしい。

 今回はDランクで初心者の私が混じっていた上、人数も6人で怪我もなく殲滅できたのが信じがたいらしい。



「俺とケニックがオークキング、トウコちゃんがオーク13匹、ウィンが5匹、ロゼとナポンがそれぞれ2匹ずつ倒しました」

「「はっ?」」

「トウコちゃんが始めの段階で一気に13匹倒してくれたおかげで俺達は冷静にオークに対峙することができました。それに、ロゼとナポンが2匹ずつ倒す間にウィンは5匹倒しました」

 ゴンゴとリップスは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていた。


「トウコは治癒魔法が得意なはずじゃ……攻撃魔法も使えるなんて」

 通常この世界では、一般的な人間は適正属性が1、2個だから治癒魔法以外にも光魔法や他の魔法が使えることが普通じゃないようだ。


「正直、トウコちゃんとウィンがいなければ俺達は死んでいたかも知れません。商人にも隙をついて逃げるように言いましたが、商人達も逃げ切れていたかどうか……」

 ロマンが私とウィンのおかげだと、これでもかと言うぐらい話すから、そもそも私達が冷静に動けたのはロマンの冷静な指示のおかげだとしっかり伝えておいた。



「えっと、宜しければオークキング見ますか?」


「ああ、そうだな。念のため確認しておきたい」

 ゴンゴは素材解体場に向かって歩き出した。


 素材解体場で、魔法袋のフリをしてオークキングを出した。

 オークキングを見て、ゴンゴとリップスも「間違いない」と頷きあっている。


 オークは普段は大きな群れになることはないけど、オークキングは知能も発達している為、普通のオークを統制して自分の縄張りを作る。そして、縄張りに入ってきた人や魔物を排除するために次々と襲うのだ。

 恐らく、今回出没したオークキングは縄張りを商隊のルート上に広げていたということだ。

 念のため、町からオークの調査団を現地に送ることになった。



「あの~、他にも素材買い取りして頂きたいものがあるんですが、ここに出してしまっていいですか?」

「ああ、せっかくだから一緒に買取りするよ」

 リップスが応じてくれた。


 出して良いと言われたので、次々と出していく。始めに、往路で倒した4匹。そして私の13匹と、ウィンの5匹と、ロゼとナポンの4匹の合計25匹のオーク。


「「「「…………」」」」


「あ、実は魔犬をまだ買い取ってもらってなかったので一緒に出していいですか?」

「……あ、ああ」


「よいしょっと。これで全部です」

 ふぅ、すっきりした気分だ。


 …………。


 やけに静かだ。ふと周りを見ると、みんなの視線が私に集中していた。

「えっ!? どうかしました?」


『どうかしました? じゃねえぞ!』byゴンゴ

『オークのこの傷、どんな攻撃をしたんだ!?』byリップス

『そんなに入る魔法袋ねえから!』byロマン

『一体何種類の魔法を使えるんだ?』byケニック

『アイテムボックス、容量デカすぎでしょ!?』byロゼ

『俺、いなくても良かったんじゃ……』byナポン

『トウコ……君が世間知らずって事だけはよぉ~く分かった』byウィン


 みんなそれぞれ言いたい事が山ほどあった。



「あの、みなさん? 私の魔法の事とか、口外しないでくださいね!」

 みんなの様子がおかしい気がするけど、取り敢えず念を押して言っておいた。


「……あ、当たり前だ! 冒険者の能力は秘密厳守だ。レッドサンダーのメンバーも人に言うんじゃないぞ! 冒険者の信用問題に関わるぞ!!」

 ゴンゴも念を押してくれた。


 ちなみに、素材買取り代や報酬の受け渡しは明日になるようだ。

 オークキングとロゼとナポンのオーク4匹の代金は、レッドサンダーに渡すようにお願いした。



 その後、一旦解散になった。宿屋を予約したあとでロマンが夕食をご馳走してくれるらしい。

 探し始めるのが遅かったため案の定、宿屋はいっぱいだった。ラーナ町に到着初日に泊まった、古いけど大きい宿屋でシングルルーム1室を何とか予約できた。

 今後は護衛の仕事等で町を離れる場合は、戻る日に合わせて宿屋を予約しておこうと思った。



 待ち合わせのご飯屋に着くとレッドサンダーのメンバーに加えて、なぜかゴンゴとリップスも一緒にいた。


 席に着くと、テーブルにはすでに料理や飲み物が用意されていた。

「ウィン君とトウコちゃんもビールでいいかな?」

 リップスがジョッキを手渡してくれた。


 この世界では15歳で成人なので飲んでも問題ないらしい。それに、昔のヨーロッパのように、生水よりもエールやビールの方が安全らしく水魔法を使えない人は朝からでもエールや薄めたワインを飲むことが多いらしい。


 遺伝子的にもアルコールに強いのかみんな飲むペースが速い。あっと言う間に2杯、3杯とジョッキが空いていく。

 レッドサンダーのメンバーは、冒険者ギルドのサブマスターとお酒が飲めるなんて出世した気分だと言って、上機嫌だ。


 ラーナ町の冒険者ギルドは現在マスターが不在のため、実質サブマスターのゴンゴが一番の権力者になる。


 ウィンはここぞとばかりに、商人護衛の時の隊列のポイントや野営のポイントをリップスやロマンに教わり、それを見てゴンゴが「うんうん」と頷いている。

 私は、基本的な魔法の種類を聞いたりした。


「ところでトウコ、アイテムボックス持ちを隠しているようだが普通にバレているぞ」

 ゴンゴに指摘された。

「えっ?」

 みんなも、「うんうん」と頷いている。


「だいたい、魔法袋は特大サイズでも荷馬車1台分程度だ。それに、アイテムボックス持ちも容量が大きくても荷馬車1台分程度だ。隠したいなら覚えておくといい」

「はい……」


「正直、ウィンとトウコは規格外の能力の持ち主だ。ワシも驚いておる。お前達はまだ経験が浅いから、貴族や権力者に知られれば厄介事にも巻き込まれかねない。自分の身は自分で守れるようにするんだぞ」

 今日、ゴンゴとリップスがこの場に来たのは私達を心配して忠告するためだったようだ。何か困ったことがあれば、自分達に相談するといいと言われた。



 それからも、お酒は進んでみんなワインやウイスキーになっていった。

「それにしても、ウィンの剣捌きすごいスピードだったな」

「ロマンさんとケニックさんの連携もすごく勉強になりましたよ」


「俺は、荷馬車の上から攻撃するトウコちゃんを見た時、女神様かと思ったよ~。普段はローブに隠れて顔が見えなかったし、細い手の先から魔法を出している姿、真剣な表情、美しかったなあ」

「お前! 動きが鈍いと思ったら、よそ見してやがったのか! なんて、俺もトウコちゃんに見とれたけどな。はっはっは」

 ロゼとナポンが小突き合いながら陽気に笑っている。


 その後もレッドサンダーが請け負った仕事の話などを聞いてお酒を楽しんだ。

 みんな良い人達でプライベートな事も聞かれなかった。冒険者は訳ありの人も多いみたいだから、暗黙のルールかも知れない。



「「今日はご馳走様でした」」

「また仕事で一緒になった時は宜しくな」

 楽しい時間が過ぎるのは早く、気が付けば深夜に差し掛かろうとしていた。

 幸い飲み会の場所と宿屋は近いから夜風に当たりながらゆっくり歩いて帰る。



「何だか、飲み会が終わってから誰かと帰る場所が同じって嬉しいね!」

「トウコ、もしかして酔ってる?」

「ん? 今までお酒を飲んでも酔ったことはないよ。あ、でも今日は少しフワフワしてるかも」

「頬が少し赤い」

「ウィンは全然酔ってないね。っていうかいつも通りね」

「うん。俺はお酒に酔わない(タチ)なんだ」

「ふふっ。私初めてフワフワしてるかも」

 飲み会でお酒を飲んでフワフワしたのは初めてかも。


 ゴンゴさんもリップスさんもレッドサンダーのメンバーもみんな悪酔いする人がいなかったから楽しく話してるうちに結構な量を飲んでしまったのかも。

 それにウィンみたいなお酒を飲んでも酔わない人って素敵だな。


 以前は会社の飲み会ではいつも上司の説教が始まったし、前の彼と飲みに行っても介抱するのが私の仕事だったから全く酔えなかった。


 確か前の人生で最後にお酒を飲んだのは会社の飲み会だった。あの時は企画泥棒の上司と、婚約者泥棒の後輩もいたから全然楽しくなかったんだよね。


 暗い過去を思い出してもいいことないよね。この人生は楽しめるようにしっかり生きよう! うしっ!!



 宿屋に着くと今回はウィンが床で寝るとは言いださなかった。

 お風呂で汗を流してから部屋に戻ってウィンと一緒に寝た。ベッド1台に2人は狭いけど疲れていたのと酔いもあったから5秒で熟睡した。




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