表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/27

トウコ無双

 

 この護衛の旅は片道2日、目的地で1日の自由時間があって計5日間の旅になる。 


 護衛2日目は何事もなく村の手前で野営をすることになった。

 村の宿屋に泊るとお金がかかるから、みんなここで野営をするようだ。



 そして、3日目の朝に村に入った。

 1日の自由時間があるからウィンと1泊だけ宿屋に泊ることにした。

 なんだかんだでウィンと同じ部屋でツインルームになった。いつの間にか自然に同じ部屋に泊まることが前提になっている気がする。



 宿屋の確保が終わってから村を散策する。

 確かこの村は農産物が豊富だから美味しい食材もあるかもしれない。


「ウィンは村で何か見たいものはない?」

「特にないかな。田舎の村だからね」

 では、私の買い物に付き合ってもらおう。


 食料品店に入ると、いろいろな野菜やキノコ類が売っていた。

 その中でとりわけ地球に似た野菜やキノコを発見した。ナスとレンコン、生姜、シメジ等である。値段も高くはなかったから色々と多めに買い込んでおいた。

 レンコンの肉詰め美味しそう。むふふ。



「トウコは料理が好きなの? この前も宿屋で何か作ってたみたいだし」

「う~ん、料理っていうより食べるのが好き……。いや、こ、故郷の味の再現に挑戦中なの!」

 日本にいる時はそんなことなかったけどこの世界にきてからは日本の味が恋しくて食いしん坊みたいになってて恥ずかしい。


 夕食は村の郷土料理屋で食べることになった。

 農産物が豊富な村というだけあって野菜の素焼きにオイルで味を付けたもの等、ヘルシーな料理が多かった。これはこれで美味しい。ヘルシーだからいくらでも食べられる。




 翌朝からは、また護衛をしながらの帰路になる。

 往路と同じく私とウィンは荷馬車の2号車と3号車の間に配属された。


 帰路の2日目、往路でオークに襲われた現場の近くを通っていると、再びレーダーが反応した。ウィンと目を合わせ、みんなに報告する。


「みなさん、魔物の反応があります! 数は20匹以上。真っすぐこちらに向かってます。1匹は5、6m程の大きいものが混じっています!!」


「なんだ? 1匹は大きいだと!? オークキングが混じっているかも知れない!」

 ロマンが素早くみんなに指示を始めた。

 オークが本気を出せば馬車だとすぐに追いつかれる為、荷馬車を寄せて停止させる。商人達は全員、1台の荷馬車へ集まって避難をするように指示を出し、前衛は剣士で固め後衛に私とケニックの魔導士組みで待機する。


 先日襲ってきたオークが統制した動きをしていた為、オークキングの存在を視野に入れていたけどロマンと商人とで話し合った結果、過去に人里近くにオークキングが出没した事例が少ないという事と、商人の意向で通常通りにラーナ町とサナダ村を往復しようとなったようだ。


 退治できれば、今後はこのルートでオークに襲われる可能性はなくなるということだけど、何せ6対20以上では分が悪すぎる。



「みんな、覚悟をしてくれ。商隊の皆さんは俺達がオークを止めている間に隙ができれば荷物を捨てて馬で逃げてください。そして、ラーナ町まで逃げきる事ができれば、オークキング討伐隊を編成するようにお願いします」


「すみません。私達がロマンさんの忠告を無視して商売を優先したばかりにこんな事になって。本当に申し訳ない!」

 商人の顔色が蒼くなって、ひたすら謝罪をしている。

 何だか、ここでみんなが死ぬことが前提のような話しぶりだ。


 今までだって、突然暴走車が突っ込んできても空から鉄パイプが降ってきても何とか生きていた。こんな所で死ぬのは嫌だ。


 

 今更だけどこの時初めて、エニフが言っていた『魔物や猛獣は躊躇することなく殺せ。殺さないと殺される』という言葉を理解した。


 私はどうにかオークを一気に退治する方法はないか考えた。でも、みんな纏まって整列して襲ってくるわけではないので難しい。

 纏まっていれば、ドーム型のバリアで囲んでバリア内に攻撃を仕掛けたりできそうなんだけど……。


 攻撃力の高い魔法は何かないかな。

 でも、仲間を巻き込んだら危ないし……。

 何か、何か……あっそうだ、あれだ! もしかしたら魔法でできるかもしれない!



「ロマンさん! 私、荷馬車の屋根に上っていいですか!?」

「ああ、魔導士組は安全な場所からの攻撃をしてくれ!」



 間もなくオークの群れが視認できる距離まで来た。ロマンの予想通りにオークキングも混じっていた。オークキングはロマンが引き受けるとのことだ。


 私は視界が見えやすいようにローブのフードは外して、荷馬車の上から遠くを見据える。


 オークの移動速度は想像よりも速く、既に200m程の距離まで近づいていた。


「光レーザー照射! 光線銃!」


 シュン! シュンッ!

 焼けるほど熱く、高出力の光をイメージして、オークの頭や心臓を打ち抜いていく。ほとんど音もなく、レーザーを当ててから数秒後に次々と倒れていく。

 爆発もないのでオークは仲間が倒れた理由が分かっていないようだ。


 ウィンや前衛組も目の前の現象について行けず、思わず荷馬車の上の私をみたが、何か攻撃をしているのが分かったらしく、みんな目の前に迫りくるオークを見据えた。


 光レーザーで7匹程を倒したが、オークの群れは迷わずこちらに向かっている。

 仲間が倒れた事に警戒しているのか、オーク達は隣同士の間隔を狭めてスピードを緩めてじわじわとこちらに接近中だ。



「ウォーターカッター!」

 手の先から水魔法を超高圧で噴射する。そして、噴射を続けながらゆっくりと手を横に動かしていき、1匹、2匹とオークを倒していく。

 切れ味は鋭く、6匹を一気に倒す事ができた。


 日本にいた頃、テレビの町工場の特集で水圧で固い物を切る技術があるというのを見たことがあったので、それをイメージしてみたのだ。傍から見ると、私は冷静そうに見えるかも知れないけど、心の中はそれはもう必死で魔物を倒す事を考えた。


 

 オークにも私が攻撃していることが理解できたようで、攻撃目標が私になったけど前衛の剣士達は私を守るようにオークの前に立ちはだかった。

 数もかなり減っていたので前衛組は落ち着いてオークと対峙していった。



 ウィンは相変わらず剣舞のような優雅な動作で次々にオークを切っていく。2匹同時に攻撃を仕掛けられても、魔犬を倒した時のように素早い動きで攻撃を回避している。

 ウィンの攻撃は、ほぼ一振りでオークを絶命させていった。さすが猛者の血筋というだけあって、他の冒険者とは比べ物にならない程の生まれ持っての素質があるのだろう。


 そして、剣士のロゼとナポンは1匹ずつオークと対峙できるように、お互いの立ち位置を考えて2人で連携している。


 ケニックはオークキングと戦っているロマンを魔法で援護している。

 魔法で水の幕を作り出し、オークキングの息ができないようにして、その隙にロマンが剣で攻撃をする。さすが、戦い慣れているのか連携がスムーズだ。

 しかし、オークキングの皮は分厚く固いので何度目かの攻撃のあと、やっとオークキングが大きな唸り声とともに倒れた。




 こうして、オークとの戦いは幕を下ろした。




 荷馬車の屋根から降りると興奮したロマンに抱きしめられた。

「トウコちゃん! よくやってくれた! ありがとう!!」

 ギューッ! 

 ロマンの髭がじょりじょりと頬に当たって痛い。


「トウコちゃん~すごかったね。俺の天使~マイハニー」

 ロゼもすかさず抱きしめてきた。

 熱気に負けて、なすがままにされているとウィンが2人から解放してくれた。


「ロマンさん、小動物みたいな扱いはやめてください。それに妹はロゼさんのハニーではない」

「ハッハッハ、悪いな。しかし、本当に命拾いしたよ。お礼に、ラーナ町まで戻ったら夕食をおごらせてくれよな」

 ロマンの興奮はまだ醒めていないようだ。



 馬車に避難していた商人達も戦いの様子を見ていたようで、みんな興奮してお祭り騒ぎだった。


 倒したオークは、無駄死には可哀想なので全てアイテムボックスに入れて持って帰ることにした。

 レッドサンダーも商人も、すでに魔法袋や荷物がいっぱいだったから好きにしていいと言われたのだ。

 それに、このまま死体を放置していると匂いを嗅ぎつけた別の魔物が寄ってくるので危険だということだ。


 魔法袋に入れていくフリをしているけど、魔物を往路も合わせて20匹以上収納できる魔法袋は、あったとしても相当高価なものだ。スーツケース3つ分の大きさでも金貨50枚はするのだ。

 みんなも何も言わないので、気にせずに回収することにした。



 私は魔力を使い過ぎて、体中から力が抜けていたのでラーナ町へ着くまでは荷馬車の中で寝かされた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ