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パーティ結成と久々の日本食

 

 冒険者ランクはウィンは『C』、私は『D』から始まった。


 治癒魔法が優れていても魔力ランクの一つ下、ギルドの決まりで『D』ランクになるらしい。


 そして、私とウィンがパーティを組んだ場合は、『D』ランクパーティになるらしい。

 もし、あと1人『C』ランクがいたら、『C』ランクパーティになる。

 

 要するにパーティランクは3分の2以上の人数がいるランクになるということだ。ランクの数が同じ場合は、低いランクになる。

 冒険者ランクはこなした依頼の数や評価で上がるらしい。


 ランク決定以外の手続きは簡単なもので、名前や年齢など簡単な情報を書く。

 


 しかし、ここで問題が発生した。


「ねえ、ウィンって16歳よね。さっきから私の事を妹って言ってるけど、同じ歳ぐらいっていうか、むしろ私の方が年上だと思ってたんだけど……(精神的に)」

「えっ? トウコ何歳なの? 年下だと思ってたんだけど」

「ちょっと、それどういう意味よ」

「いや、すまない。確かに見た感じは同じ歳ぐらいに見える」

 ウィンの含みのある言い方にムッとする。


「でも、困ったな。ウィンが私のこと妹っていうもんだから16歳って書き辛いじゃない」

「じゃあ、母親が違うとかでいいんじゃないか? 登録の時ぐらいしか、年齢見られないし。それに、ギルドって個人情報を漏らさないみたいだから」

「そうね。腹違いってことね」

「腹違いって……」


 年齢問題は解決して、あとは小さな魔法陣が埋め込まれたカードに自分の血を1滴たらして手続き完了だ。


 せっかくなので登録を待つ間、受付にあった冊子で薬草の種類や魔物の討伐証明部位なども見ておいた。

 この世界に来てから特に疑問に思った事がなかったんだけど、会話も読み書きも全て当たり前のようにできている。


 治療院での予定外の出来事もあったけど、晴れて冒険者になることができた。

 今日は何だかんだでお昼もとっくに過ぎてしまったから仕事は明日から探そう。




「ウィンは明日からどうするの?」

 ふと、ウィンはこれからどうするんだろうと気になった。


 森の中では『町に着くまで宜しく』ってことだったけど、これでお別れだ。 

 冒険者ギルドに登録すると各町や国を跨いでも活動できるらしい。ウィンだったらどこに行っても活躍するんだろうな。

 これからはウィンには、哀しい出来事を忘れるぐらい楽しく自分のしたいことをしてほしい。



「俺は明日から暫くはトウコと一緒に依頼を受けるよ。一人にしておくと心配だ」

「ウィンが一緒なら心強いけど、心配しなくても私は大丈夫よ。ラーナ町まで来ることができたし冒険者登録も無事できたんだから。後はなんとかなるよ」


「でも冒険者は初めてでしょ? ダンジョンや魔物の事をもう少し知った方がいい。それとも教えてくれる予定の人がいるの?」

 何かウィンの目力がコワイ。確かに教えてくれそうな知り合いとか誰もいないわ。


「う、そうね。ではお言葉に甘えて暫く宜しくお願いします……」

 ウィンが言うように私は魔物やこの世界のことを知らなさすぎだ。

 探知魔法や防御力Sランクがあるから何とかなりそうだけど知識は大切だよね。知っているのと知らないのではいざという時に雲泥の差がでる。

 ウィンに迷惑かけないように早く独り立ちできるように頑張ろう。



「ところでトウコは何で冒険者になろうと思ったの?」

「取り敢えずお金を稼いで生きて行かなきゃならないからよ」


「それは冒険者じゃないとだめだったの?」

「う~ん、知り合いもいないし帰る場所もないから冒険者が一番手っ取り早いと思ったから」

 改めて考えると、この世界には帰る家も友達も知り合いさえもいないって結構詰んでるかも。


「……そうか。帰る場所がないのは俺も同じだね、改めてこれからも宜しく」

「うん、よろしく」

 そうだ、ウィンもあんなことがあったから帰る場所がないんだよね。




 今日は宿屋を探す時間帯が早かったおかげでツインの部屋が取れた。


 昼食を簡単に済ませた後は街の中をぶらぶらと散歩と買い物をすることに。食材も買い足しておきたい。


 この国の食事は一般的に塩、胡椒、酢、マスタードやハーブ類での味付けが多い。日本食に慣れていた私としては少し味気なく感じてしまう。

 ケチャップやマヨネーズもないみたい。


 食料品店に寄って、小麦や卵、油などを買い足す事にした。自作のパスタや調味料を作ろうと思う。ミートスパゲティーやグラタンの濃い味が恋しい。

 お米や醤油、お味噌等は売ってなかったけど仕方がない。醤油があれば、照り焼きや豚の生姜焼きとか作れるのにな。


 ウィンは再び服屋に行き、ローブを買っていた。万が一でも、猛者の子孫であることが漏れるリスクを減らしたいらしい。

 私も服や寝間着や下着も追加で買ってアイテムボックスに入れておいた。


 2人でローブを被って怪しく見えそうだけど、ここではローブを羽織っている人が多いからあまり目立たない。




 夕食の時間帯が終わってから宿屋の厨房を借りて、マヨネーズとケチャップを作ってみた。日本の市販品には適わないけど、まあ近い味にはなったと思う。


 家族がいなくなって独りの時間を持て余していた時に趣味で調味料作りをしていてよかった。初めてだったらマヨネーズとかケチャップの作り方が分からなくて失敗していたよ。結構コツがいるからね。


 

 せっかくケチャップが完成したから、次はミートソースグラタンを作る。

 ウエチ村で貰ったオーク肉のブロックを包丁で叩いて小さくミンチ状にしていき、肉がミンチ状になったら、玉ねぎと炒めて、熟したトマトと自家製ケチャップで味付けしていく。ちなみにオーク肉は豚肉に似た味だ。

 器に茹でたイモを敷いて、その上にミートソースをかけて、上にチーズを乗せていく。あとはオーブンで焼くだけだ。


 次はパスタ。

 小麦粉と卵と塩と油を混ぜて、練って伸ばして……程よい太さに切っていく。そして湯がくと、もちもちの生パスタのできあがりだ。


 次はハンバーグ……と考えていると、宿屋の主人から苦情が入った。どうやら就寝の時間が過ぎていたようだ。気が付けば3、4時間は厨房を借りていた。

 いろいろと味の調整をしながら作っていたから時間がかかったのだ。


 作ったものをアイテムボックスに入れて終了だ。これで、ミートソースグラタンとミートソースパスタはいつでも食べられる状態になった。



 部屋に戻るとウィンはベッドで本を読んでいた。

「もう就寝の時間が過ぎてるって、厨房を締め出されちゃった」

「おかえり、何を作っていたの?」

「ふふふ、ヒ・ミ・ツ。ウィンはまだ起きてたんだね」

 久々に日本の味が食べられるかと思うとテンション高めだ。


「ああ。本を読んでいた」

「そうなんだ。ウィンのポーチ型の魔法袋って便利ね」


「まさか暗殺されるとは思ってなかったから、お金と本や小物以外は何も入れてなかったよ」

「そうなんだ……」


「そんなに暗くならなくていいよ。俺はトウコに助けてもらえたし。それに、トウコのおかげで新しい人生を歩むことができる。正直、猛者の子孫ってだけで特別扱いされて居心地が悪かったんだ。トウコには本当に感謝しているよ。ありがとう」

「大丈夫! これからは私がウィンを守る!」

 ここはちゃんと私の意思表示で力強く目を見て言った。信じている人に裏切られるほど辛いものはない。私と同じ孤独を感じてほしくない。


「はははっ、そんなこと初めて言われたよ。逆だよ。俺がトウコを守る立場でしょ」

 ウィンが私の頭をぶっきらぼうにワシャワシャと撫でてきた。何だかくすぐったい。


 今まではウィンにとって、常にアリーサや誰かを守るのが役目であり、ダンジョンに行っても先陣切って進むのが当たり前だった。初めて「守る」って言われたウィンは心が温かくなるのを感じながら眠った。





 翌朝、冒険者ギルドに行ったけどやっぱり朝は混み合っている。


 掲示板で仕事を探しているとリップスがやって来た。


「ウィン君にトウコちゃんか。今日は2人ともローブ着用なんだね。昨日は助かった。ありがとう。これは昨日の治療代だよ。本来はこんな金額じゃぜんぜん足りないんだけど……」

 そう言って金貨10枚を差し出してきた。


「もしかして、リップスさんの自腹ですか?」

 確か、昨日は金貨5枚と言っていたはずだ。問い詰めると半分はリップスの自腹だと分かったから金貨を5枚だけ受け取って自腹分は返しておいた。


「気を使わせて悪かったね」

「いいえ、魔法なので元手はタダみたいなものですし、その金貨はまた困っている方にお使いいただければと思います」

 この会話を隣で聞いていたウィンに呆れられたけど、親の借金取りに追われていた時と比べると今はエニフに貰った金貨の貯えもあるし、ウエチ村で頂いた金貨も少し残っている。明日食べるものに困ることはないから私は大丈夫。

 


 

「仕事を探しているならEランクやDランク用の護衛の仕事があるよ。でも実は、昨日怪我していた連中が請け負っていた商人の護衛なんだ」

 

「また襲撃がある可能性があるということですか?」

 ウィンがリップスに質問する。


「正直、その可能性はある。だから今回は念のためにCランクパーティにも同行をお願いしているんだけど、他のEランクやDランクパーティは魔物の襲撃を恐れて仕事を請け負わないんだ」


 ウィンは顎に手をあてて暫く考えていたけど、この依頼を受けることにした。


「ありがとう。助かるよ。恐らく君たちの力量ならオークぐらいだと大丈夫そうだしね。それに、護衛の仕事は初めてだろうから先輩と合同だと色々と参考になると思うよ。同行するCランクパーティーは面倒見の良い奴らだよ」


 片道2日、目的地で1日の自由時間があって、計5日間の旅になる。

 報酬は5日間で1人金貨8枚。いつもより金貨3枚多いようだ。


 ちなみに、依頼料の目安として、商人の移動の護衛で盗賊や魔物出没の報告が上がっていない場所では1日当たり銀貨6~10枚程度のようだ。


 本来なら今日出発のようだけど、昨日に襲撃があったところなので、明日の出発になる。




「ウィン君とトウコちゃんは2人でパーティを組むんだよね。パーティ名は決まった?」

 単独で仕事を受ける以外は、報酬はパーティに支払われる為に名前が必要だそうだ。


「う~ん、ペガサス……」

 思わずエニフの事を思い浮かべて呟くと、リップスに釘を刺された。


「伝説の神様の象徴を使うなんて碌なことにならないからやめた方がいいよ。

 登録したてでそんな名前を使うと目立ってしまう上に上級者に目を付けられたり、この前の乱暴者のような連中に絡まれちゃうよ」


「では『ペガススアイ』は大丈夫ですか?」

「ペガススって言葉は聞いた事が無いけど、まあ大丈夫だよ」


 ウィンも納得してくれたから、『ペガススアイ』に決定した。名前の由来は、ペガスス座のエニフだ。星座の中でエニフと言えば、ペガスス座の中で一番明るい恒星だ。




 こうしてウィンとパーティを組むことになった。


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