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【完結】二番煎じでも三番煎じでもいいから、スローライフがしたい!  作者: きちのん


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43 クラタんが言ってたにゃ!

 家の増築費用はリグミナが持っていた龍涎香から捻出できるみたいなので、取り敢えず見積だけを取ろうと町へ向かった。

 それはそうと、リグミナは自分だけ金を出すのは納得いかないと憤慨していたけど、龍涎香は元々ガイラさんの物だぞ。

 言うなれば、ガイラさんが全ての費用を出してくれるって事だ。

 これで、我が家でのガイラさんの発言権が高まってしまった。

 彼女にもう出て行けとは言えなくなってしまったのである。


 まあ、それはさておき。

 ふと思ったのだが、こういう大工仕事みたいなのはどこに頼めばいいんだろうな?

 工務店とか無いだろうし、困った時のなんでも屋に頼むとしよう。

 早速、情報屋のオヤジが営んでいるトルゲ商会に向かうと、待ってましたと言わんばかりの営業スマイルで出迎えてくれた。


「へへ、旦那! 早速新たなめかけを増やしたそうで。帰ってきた早々、お盛んですなあ!」


 こいつの情報網はどうなってるんだろうな。

 フィルデを連れて帰ったのは、ついさっきだぞ。


「人聞きの悪い事を言うな。奴隷から解放したら勝手についてきただけだぞ」


「とんでもない大金をポンと支払っておいて、後は好きにしろって? 冗談を言っちゃいけませんぜ?」


「世の中には酔狂なやつもいるんだよ。それはそうと、手配してもらいたい事があるのだが」


「旦那程、酔狂な御仁は見た事がないですぜ。……それで、あっしに何を頼みたいのですか?」


 呆れ顔だったオヤジが商売人の顔に変わる。

 金の匂いは絶対に逃さないって顔だ。


「家の増築をしたいんだが、見積もりもお願いしたいんだよな」


「ほほう、妾が増えたから家を広くしたいと。やっぱりお盛んですなあ」


「……あんまりふざけた事を言ってると、お前にはもう頼まないぞ」


「へへ、すみませんねえ。クラタの旦那はからかい甲斐があるんで、ついね」


 ネズミのオヤジにからかわれても嬉しくない。

 どうせなら、美人や美少女にからかわれてみたいものだ。



「それで、どうなんだ?」


「ちょうど、大工仕事の経験のある奴隷がいましてね。そいつを含めた何人かを手配しますぜ。ほら、前に旦那の提案した派遣業ってやつですぜ」


「ちゃんと機能してるんだな」


「依頼主からも結構評判もいいんですぜ?」


 なんだかんだで、奴隷の待遇が良くなればいいことだ。

 便宜的に奴隷となったヴァネリーとギルデオも住み込みで働ける場所が見つかったみたいだし、犯罪奴隷でもなければ、すぐに元の生活に戻れるのだろう。


「だけど、旦那。お金の方は大丈夫ですかい? あの奴隷は安くは無かったでしょう。なんせ、元Aランク冒険者ですからね」


 こいつ、何もかもお見通しって感じだな。


「ああ、俺の手持ちは無くなったけど、龍涎香が手に入ったんだ。それを売って費用に充てる」


「龍涎香!? クジラのですかい?」


「いや、本物のの方だぞ」


「旦那……中央の町で一体何をしてきたんですかい?」


 流石にオヤジでも、中央での俺達の行動までは知らないか。


 中央の町では人に化けた夢魔に襲われかけたり、ダンジョンでゴーレムやドラゴンと戦って何故か夢魔とドラゴンを連れて帰ってきた……とは言えないよな。


「まあ、俺にも色々あるんだよ。そんな訳で金の方は心配するな」


「分かりやした。ですが、旦那の方でも確認しておいてもらいたい事がありましてね」


「なんだ?」


「土地関係の確認ですよ。増築するなら土地の権利も確認しておいた方がいいと思いますぜ。もっとも、あの場所では杞憂かもしれませんけど」


 確かに言われてみればそうかもな。

 自分の土地がどこまでなのかも、不動産屋で確認しておくか。


「じゃあ、その間にあっしは大工の手配をしておきますんで」


「ああ、頼む」


 オヤジと別れた後、不動産屋を尋ねて土地関係の確認をしたのだが、なんか家の周辺一帯を自由に使っても構わないと言われてしまった。流石にアバウト過ぎないか?

 だけど、これは素直にあの家を建てたマナシエのご両親に感謝しておかないとな。




  ◆◆◆

  ◆◆◆




 一方、その頃。

 クラタ家の居間に新顔を含めて、いつもの女性陣が集まっていた。

 新顔のルネイアナが集まったメンバーの顔を一人一人確認しつつ、満足そうに頷く。


「みんな集まってくれてありがと~」


「あのう、いい加減にギルドに出勤しないと……」


「アイニちゃん、真面目よね~。もう遅刻は確定なんだから、何時に行っても誤差の範囲よ~」


 そのいい加減なルネイアナに、リグミナが激しく同意とばかりに頷いている。


「そうよそうよ、ルネイアナもいい事言うわねー。もっとも、私は在宅勤務みたいなものだから、出勤なんてしなくてもいいんだけどね」


「アタシ、知ってるにゃ! リグミナみたいな人を駄目人間っていうにゃ!!」


「ちょっとミユちゃん! いくらあなたでも、その言い草はどうなの!?」


「クラタんが言ってたにゃ!」


「ソウジのやつ! 後で覚えてなさいよ!」


「なんと、ソウジ様は的確ですね!!」


「フィルデも感心しないの!」


「申し訳ありません! 女神リグミナ様!!」


「女神じゃないって、なんど言わせるの!!」


 そんなやり取りを見ながらエーシャがクスリと笑う。



「流石はおとうさん。言いえて妙ですね。マナシエちゃん、あんな大人にならないようにしてくださいね。あれは反面教師ですから」


「は、はい……」


 マナシエは密かに思っていた。

 この場にいる全員が駄目人間なのではないかと。

 最初は頼れるお姉さんだと思っていたのに、本性はポンコツばかりで心配になってしまう。

 そう思いながら、ふとガイラの方に目を向けると不敵に笑っていた。

 まさか、心を読まれた!?


「ふふふ、そう怯えるものではないぞ。もっとも、我だけはまともだからな?」


 それはどうなのだろうとマナシエは思うが、慌てて思考から追い出す。

 また心を読まれたら恐ろしい。


「それで、ルネイアナよ。我らを集めて何をしようと言うのだ? 我は暇では無いのだぞ。ただ駄弁りたいだけなら、相手を選べ」


「もう、ガイラさんもせっかちね~。いい女ってのはドンと構えるものなの~」


「……二度とは言わないぞ。我は暇では無い」


 ガイラが凄むと部屋の温度が一気に下がった気がする。

 リグミナに至っては、顔面蒼白でミユの背後に隠れてしまった。


「も、もう分かったわよ~。冗談が通じないんだから~。えっとね、さっきのソウ君の事だけど、どう思う?」


 ソウジの事と聞いて、その場の全員が前のめりになった。

 無論、ガイラも例外ではない。


「ソウ君って、自分で恋愛に向いてないとか言ってたけど、あれは私達をバカにしてるよね~。あんな事を言われたら逆に燃えてくるんだけど!!」


「で、ですが、クラタさん本人がそうおっしゃってますし、しつこく迫ると嫌われてしまうのでは……」


「本当にアイニちゃんって、真面目よね~。男なんて単純なんだから、落としたもの勝ちよ~」


 ルネイアナの言葉に頷く者、頬を染める者、不敵に笑う者等、反応は様々である。



「はいはーい! アタシはクラタんの愛人にゃ!」


「ミユちゃんはそのままでいてね~」


「ルネイアナさん、本当におとうさんを狙っているのですか?」


「エーシャちゃん。私はね、夢の中でソウ君に一度拒絶されたのが納得いかないの! 途中でミユちゃんの邪魔があったけど、最初に虜にできなかったのは夢魔として屈辱なのよ! だから絶対にリベンジしてやる!」


 マナシエは思った。

 夢魔は夢の中でえっちな事をするらしいけど、具体的にどんな事をするのだろう。

 聞きたいけど、恥ずかしくて聞けない。


「それは駄目にゃ! クラタんはアタシが守るにゃ!!」


「へえ~、ミユちゃんは私の敵になるって事なのね? 受けて立つわ~」


「ほほう、それは面白い。我も参戦しよう。あの男は興味深い。我も欲しいぞ」


「むむ、姉さんが参加するなら私も参加します! おとうさんは渡しませんよ!」


 マナシエは再び思った。

 これが物語に出てくる修羅場というものなのだろうか。

 まさか、現実に目にする機会が思わなかったけど、これも後学の為。

 どんな結果になろうとも、きちんと見届けようと。



「みなさん、ズルいです! 私が一番新顔ですが、ソウジ様に尽くしたいと思う心は誰よりも強いはず!!」


「出たわね、わんこのフィルデちゃん~」


「私はわんこなどではありません! 孤狼族の戦士です!!」


「まあ、そんな事はどうでもいいけど、アイニちゃんとリグミナはいいの? 私達でソウ君を狙っちゃうわよ~?」


「い、いえ、私はクラタさんには父親みたいな憧れを……」


「ホントにホントに~?」


「本当です!」


「ま、そういう事にしておくわね~。それでリグミナは?」


「私? 私はソウジの妻よ? それが何か?」


「そうくるのね~。凄い自信だけど、敵に不足なしって事ね~。受けて立つから~」


「うふふ。おとうさんは譲りませんよ」


「勝者は我に決まっている」


「ご主人様は渡しません!」


 そして、三度みたびマナシエは思った。

 やっぱり、このお姉さん達はポンコツなのだと。

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