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【完結】二番煎じでも三番煎じでもいいから、スローライフがしたい!  作者: きちのん


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25 早速お邪魔しにきたよ~

「はい、ここが今夜泊まる部屋です」


 少し早い夕飯を食べた後、エーシャが案内してくれた宿の部屋に入ったのだが、普通に相部屋であった。


 いやいやいや、年頃の娘さん達と同じ部屋は駄目だろう。


「……個室は取れなかったのか?」


「いやー、どこも満室でここしか空きが無かったのですよー。本当ですからねー」


 エーシャさんよう。なんで台詞が棒読みなのかな?


「ベッドが二つしか無いにゃ! 誰か一人はソファーで寝る事になるにゃ!」


「あーそれはいけませんねー。私はソファーで寝ますから、いい感じのおとうさんとミユさんはベッドをくっつけて一緒に寝るといいですよー」


 ……俺は知っている。


 宿に着いた途端、エーシャが個室部屋をキャンセルして相部屋に変更した事を。

 まさか、これが狙いだったのか。

 末恐ろしいとうか、何を考えてるのかまったく分からない。


「にゃにゃにゃにゃ! アタシがクラタんと一緒のベッド……!」


「落ち着けミユ。俺がソファーで寝る。エーシャもベッドで寝なさい」


「えー、それはつまらないですよ、おとうさん。空気読みましょうよ」


「お前、流石にそれは悪趣味だぞ」


「むむむ、仕方が無いですね。中年男性が少女をどう手籠めにするのか観察してみたかったのですが……」


 あ、こいつ完全にヤバい奴だ。


「勘違いしないでください。TLの『にゃんにゃん☆キュート・ラブ』も描いているので、そのネタ集めですよ。ちなみに、男性向けの『にゃんにゃん☆キュート・H』は触手責めがあります」


「お前、それ絶対にマナシエに読ませるなよ?」


「…………はい」


「おい!? 今の間はなんだ!? そんな薄い本みたいなの、あの子には百年早いぞ!!」


「世の中には知らなくても良い事はありますが、知っておいて損は無い事も数多くあります。今回もその一つだったのでしょう……」


「おい! なんか良い事言ってる風だけど、お前のやってる事はアウトだぞ!?」


「うふふ。過保護ですね。女の子の精神年齢は、男のそれよりもずっと上なのですよ」


「このやろう!」


「あーれー! おとうさんに手籠めにされてしまいますー!」


「お前なあ!?」



 ドンドンドンドンドンドン!


 突然隣から壁を強く叩かれた。

 本来の意味の壁ドンだ。


「……くそ、怒られちまったじゃないか」


「おとうさんが騒がしくするからですよ。見てください。ミユさんなんて、もう寝てますよ」


 ミユがベッドの上で丸くなって寝ていた。

 その寝付きの良さを分けて欲しい。最近は夜中に目が覚めたりして、中々寝付けないんだよな。


「俺がソファーで寝るから、エーシャはベッドで寝てくれ」


「……そうですか。では、お言葉に甘えて寝かさせていただきます」


 ふと思った。

 別に宿を取らなくても、鏡の精霊とやらの家に泊まれば良かったんじゃないか?



「駄目ですよ。そんな事をしたら、旅の楽しみが薄れてしまうじゃないですか」


「じゃあ、道中で泊まったのはどういう事だ? 旅の楽しみとやらが薄れてもいいのか?」


「……おやすみなさい」


 あ、逃げやがった!!

 エーシャが布団を被ってしまったので、それ以上は追及もできないから俺も寝る事にした。


 明日は早い。俺も早く寝よう。





  ◆◆◆





 俺は夢の中にいた。


 何故ここが夢の中なのだって問われたら返答に困るが、なんとなく夢の中だって分かるのだ。


「こーんばーんはー!」


 突然背後から声を掛けられて振り向くと、黒髪で瞳が紅玉みたいに赤い女が微笑んでいた。


「早速お邪魔しにきたよ~」


「……えっと、君は誰だ?」


「え~、会ったばかりでもう忘れたの~? ひどくない?」


「すまん。だけど、黒髪の女に会った記憶は無いのだが……」


 前の世界では普通に周囲にいたが、この世界で黒髪は初めて見たかもしれない。

 それに瞳が赤いのも見た事が無かった。


「あ、そっか。だったらこっちの姿なら分かる?」


 黒髪の女はそう言うと、金髪碧眼の女に姿を変えた。


「ルネイアナ!」


 ハンターギルドの受付嬢だった女だ。

 こいつがどうして、俺の夢に……。


「これは仮の姿だけどね。言ったじゃん。私は夢魔だって」


 そう言いながら、黒髪の女に戻った。


「せっかくこうして知り合ったのだから、あなたの精気を少し分けてよ。大丈夫、死んだりしない程度だからさ」


「ちょ、ちょっと待て──」


 いきなり抱きつかれると、体が動かなくなってしまう。

 そのまま押し倒されてしまった。


「大丈夫だって。それにずっと我慢してたのでしょ? 同じ部屋に女の子が二人もいて大変だったんじゃない?」


 ルネイアナの手が俺の太腿を撫で回す。

 正直、色んな意味で大変な事になりそうだ。

 俺が十代の頃だったら、とっくに生理現象が起きていただろう。


「危ない事はしないって。私は精気をもらえてラッキー。あなたは欲求不満が解消されてハッピー。どう? 悪い話じゃないでしょ~?」


 ルネイアナが淫らな笑みを浮かべて、舌なめずりをする。


「ぐぬぬ……」


 確かに悪い話じゃないと思うが、ミユ達を前にして欲求不満だとか認めたくない!!


「いい加減、私に全部委ねちゃいなさいよ。気持ちよくなっている間に全部終わるからさ~」


 ルネイアナが俺のシャツのボタンを上から一つずつ外していく。

 その指先が随分と艶めかしい。

 そろそろ理性がマズい事になってきた……。


 もう無理に我慢しなくてもいいかな、そんな事を思った時だった。



「クラタんから離れるにゃ……」


 凄まじい殺気とともにミユが現れた。


「え? うそ!? なんでこの空間にミユちゃんが入ってこられるの!?」


「そんなのは知らないにゃ……。エーシャが送り込んでくれたのにゃ……」


 もう、なんでもありだな。


「早くクラタんの上から退くにゃ……」


 目が据わっているミユも中々の迫力である。

 殺気が漏れ出てるのか、蜃気楼みたいに揺らめいている。


「あははは……流石にここまで入って来られるとは思わなかったな。降参、私の負けよ」


 俺を押し倒していたルネイアナが退いてくれた。

 なんとか助かったぜ。


「困ったなあ~。私、精気をもらえないと餓死しちゃうんだよね……」


 潤んだ瞳でルネイアナが見つめてくる。

 こいつ、卑怯にも程があるな。


「駄目にゃ! クラタんはアタシの……」


 ミユさんや、何故そこで言い淀む。


「んん? アタシのって、なあに?」


「と、とにかく! クラタんはアタシのにゃ!!」


 ミユさんや、完全にルネイアナにからかわれているぞ。



「でも、冗談抜きで本当に困ったなあ~。少しでいいから精気をくれない? 結構ヤバいんだよね」


 割と真面目に困っているらしい。

 そんなに困ってるのなら、少しぐらいなら分けてもいいだろう。

 そう思ったのだが……。


「クラタんのは駄目にゃ! どうしてもと言うのなら、アタシのをあげるにゃ!!」


 ちょいとミユさんや!?

 一体何を言い出すのやら……。


「え~、ミユちゃんの?」


 そこ、あからさまに嫌そうな顔をするな!

 ミユも見た目は可愛いから、そういった層には人気があると思うぞ!


「男の方が簡単に搾り取れるから好きなんだけどなあ。仕方ない。今回はミユちゃんので我慢するね」


 何か物騒な発言が聞こえた気がするが、ルネイアナがミユの顎を親指と人差し指でくいっと上げると、いきなり唇を奪った。


 あの様子だと、かなりディープな感じがしますな。

 まったくもって、けしからんという言葉しか出てこない。




「……ふう。これでしばらくはお腹いっぱいかな。またよろしく!」


 満足げな笑みを残して、ルネイアナは消えてしまった。

 残されたミユだが、固まったまま膝から崩れ落ちてしまうのを抱きとめる。


「おい、大丈夫か? どこか痛いところとか無いか?」


 呆けていたミユだが、俺の顔を見て泣き出してしまった。


「うわぁぁぁん! アタシ初めてだったのに!! 初めてはクラタんって決めていたのにぃぃぃぃい!!」


 大泣きである。

 しかし、これはどうしたらいいんだろう。

 途方に暮れているうちに、段々と意識が薄れてきた。





「……ん、朝か?」


 目を開けると、部屋はすっかり明るい。

 そして、なんか体が重い。

 よく見たら、ミユが俺に覆いかぶさって寝ていた。


 何をやってるのかな、ミユさんや。


「おとうさん、おはようございます」


「……ああ、おはよう。それで、これはどういった状況なのかな?」


「いえ、昨晩ですね。おとうさんがうなされていたので、ミユさんが泣きながら助けてあげてと言うじゃないですか。調べたら夢魔の仕業だったので、ミユさんを魔法で夢の中に送り込んだのですよ」


「エーシャ、簡単に言うけどさ、それってとんでもない事なんじゃないか?」


「そうなりますね。母が開発した魔法なので、凄いのは母ですけど」


 いい加減、頭が痛くなってきた。


「ほら、ミユも起きろ」


 流石に若い娘さんに抱きつかれたままなのは、色々とよろしくない。

 おっさんの加齢臭が染みついたら申し訳ないし。


「うぅ~んにゃ……」


 にゃむにゃむ言いながら、ミユが目を覚ました。

 そして、俺を顔を見てニッコリと微笑むも、またもや瞳に涙を浮かべて泣き出してしまった。



「おとうさん、夢の中でミユさんに何をしたのですか?」


「そんな軽蔑した目で見るなよ。言っておくが俺は何もしてないからな」


「うぅ……初めての相手はクラタんって決めていたのに……」


「おとうさん、夢の中でミユさんを寝取らせたのですか!? 鬼畜過ぎません!?」


 どうしてそんな発想になるんだよ。想像力が豊かすぎるだろう。

 このままでは埒が明かないので、夢の中でルネイアナに襲われた事を説明してやった。




「ほほう。それではファーストキスをおとうさんに捧げるつもりだったのに、ルネイアナという夢魔に奪われてしまったという事ですか……」


 エーシャさんよう。

 わざわざ詳細を口に出さなくていいからな。


「そうにゃ。アタシ、もう生きる気力が無いにゃ……」


「流石にそれは大袈裟すぎじゃないか!?」


「おとうさん、女の子にとってファーストキスはとても大切なものなのですよ。軽々しく扱わないでください」


「そうにゃ。クラタんはもう少し乙女心に配慮するにゃ!」


「なんか……すみません」


 というか、ミユは生きる気力が無いとか言ってる割には普通に元気だよな。


「でも、考えてみれば、ファーストキス奪われたのは夢の中の事ですよね?」


「そうにゃ。思い出すだけで、凄いキスだったにゃ……。あんな事をクラタんにされるのを考えたら……アタシ……どうしようにゃ。えへへへへ……」


 ちょいとミユさんや?

 こっちの世界に帰ってきておくれ。


「でしたら、この現実世界ではまだ未経験って事ですよね?」


「確かにそうにゃ!!」


 ……はて?

 二人して、なんでこっちを見てるのかな?



「クラタん、アタシとキスするにゃ!!」


「おとうさんも男らしく、ミユさんの気持ちに応えるべきです!!」


「はあ!? なんでそうなるんだよ!!」


 朝から心臓に悪い事を言わないで欲しいものだ。


「あのなあ、ミユは俺にとって娘みたいな女の子なんだよ。だから、そういう対象には……」


 くそう、思いっきり瞳に涙を浮かべやがって。

 あんな顔されたら、面と向かって拒絶できないだろうが。


「一つ断っておく。俺はセクシーな女性が好みだ。ミユがもっと大人っぽくなったら考えよう」


「ホ、ホントにゃ!?」


 これで時間稼ぎになるな。

 ミユが大人になる頃には、俺の事なんて忘れて別の男に夢中になってるだろう。


 ……あ、いけねえ。ミユが彼氏と一緒にいるのを想像したら、父親の気持ちになって涙が出てきた。


「ふふん、上手く誤魔化したつもりでしょうけど、このままミユさんが行き遅れになってしまったら、どう責任を取るおつもりですか?」


 エーシャさんよう。

 人聞きの悪い事を言わないでもらえないかなあ。


「クラタんが責任を取るにゃ!」


「それが妥当ですね。ミユさんが素敵な大人になったら、クラタさんが責任を取ると」


 なんか知らないうちに外堀を埋められているのだが……。

 まあ、その時はその時になったら考えよう。


「では、その時は私がおとうさんの愛人枠に収まる事にしましょう」


「それは駄目にゃ! クラタんの愛人はアタシにゃ!」


「ミユさん、それはワガママってやつですよ」


「エーシャでも、そこは譲れないにゃ!!」


 ……こいつら普通に馬鹿だよな。





  ◆◆◆





「おはよーさーん!! おかげで私は元気よ~!!」


 ハンターギルドで俺達を出迎えたのは、肌艶が良いルネイアナだった。

 こいつ、どの面を下げて俺達の前に顔出すのやら。

 ミユも引きつった笑みを浮かべている。


「夢は夢、現実は現実。プライベートは職場に持ち込まないタイプなの」


 ここまで言い切られると逆に清々しさを感じるな。


「ほほう、あなたが夢魔さんですか。夢の中ではうちのミユさんが大変お世話になりました」


 なんか、エーシャからどす黒いオーラが出てるのですけど。

 笑顔だったルネイアナの顔が真っ青になっている。


「ちょっと、向こうで二人きりで話しません?」


「え? あ、はい」


 有無を言わせない勢いで、エーシャがルネイアナを連れて行ってしまった。

 どうか穏便に済ませてやれよ。


「クラタん、アタシ達はドラゴン調査の準備をするにゃ」


「あ、ああ……」


 ミユも割と切り替えの早い子なんだよな。

 俺も見習おう。

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