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Blue sky  作者: 立花くろは
第一章 夜陰
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 邪魔をしているつもりがないだろう二人にも、明らかに邪魔をしてくる彼にも腸が煮えくり返るが、それを顔に出すわけにはいかない。すぐさま机の中に手を入れ、怒りを逃がすためにギギギ……と音が鳴るくらい強く掌を握りしめたはいいが、一度覚えた怒りはなかなか消えることはなく、昼休みになった今でも腹にはずっと怒りが残っていた。


 お昼は必ず完食をしないといけないのに、腹に残っている怒りのせいでお弁当を半分以上食べることが出来なかった。


 食べたくないのに食べなくちゃいけない。そのことに息が詰まるほどストレスを感じるけど、食べないと誰かが私を異常と判断する。



 散々傷つけられてきた心に、これ以上傷を増やしたくない。自分が異常者ということを改めて自覚もしたくない、だから私は無理をしてでもお昼だけは完食しないといけないのだ。


 一日一食の生活を長年続けているため、胃は幼い頃から大きくなっていない。それだけならよかったが、年々小さくなっているような気がして少し危機感を覚える。



「実際のところ、ましろはどう思ってるの?」



 歯磨きを終えた私と違って、友人たちはお昼ご飯を食べ終えた後だというのにお菓子をボリボリと貪り食っていた。



「えっと……なにが?」


「だーかーらー、玲青のこと!」


「……天王寺君がどうしたの?」


「歯磨きしに行ってて私たちの会話聞いてなかったでしょうが」


「あ、そうだったの?」


「ましろを困らせるな」



 本当、絵麻にとって私は存在感ないんだな。

 情緒が不安定になってしまっているため、どんなに些細な言葉さえも傷つくのには十分すぎた。



「じゃあ、先輩たちと玲青どっちがいい?」



 くだらなすぎる質問に、思わずため息が漏れそうになった。

 しかも、今ものすごく触れてほしくない話題。


 どこまでも妹と似ていて嫌になる。



「……みんなは?」


「年上はだから先輩たちに決まってるじゃーん」



 決まってるじゃんって言われても知らないよ。

 他人の愛だの恋だのがこの世で一番興味ないんだから。



「私も」


「そうなんだ」


「奢ってくれるもんね」


「それは玲青もじゃん」



 この二人も彼に奢ってもらったことがあるのか。それは当然か。先輩たちと二人はよく遊びに行ってるし、その先輩たちと彼はとても仲が良いのだから。


 先輩たちと遊ぶ際、私はいつも知らされない。

 あの事があったから誘われないってことはないだろう。知られているわけじゃない。きっと、ただ単純に私の存在が邪魔だから誘われないんだろう。盛り上げ役でもない、奢ってあげるわけでもない、先輩たちからも気を遣われるような人間なんて当然邪魔でしかない。それを改めて痛感した。



「かっこいいし」


「玲青も顔かっこいいじゃん」


「ああ、もう! うるさいなぁ!」



 キーンッと耳に響く声に、思わず目を伏せてしまった。

 きっと絵麻の声に驚いてこちらを見ている人たちが何人かいて、私はハッとしてすぐさま驚いた表情に変えて前にいる絵麻を見つめれば、絵麻は咄嗟に笑みを浮かべた。



「ほら! 先輩たちからはカリスマっていうオーラがあるじゃん? 一緒に居ると自分の価値が上がってみたいにならない?」



 私以外にも、ましてや先輩たちをアクセサリー感覚で見ていたなんて。それが友人の一人だなんて心底幻滅した。


 高嶺の花なんて元々そういう風にしか見られないというのに、よく私の前で言えたもんだ。

 それに、この学校にどれだけ先輩たちのことが好きな人がいると思ってるの? 私は先輩たちをアクセサリー感覚で見ているので仲良くしてます、なんて宣言をされて良い気分になる人なんて誰もいないでしょ。


 誰が聞いているのか分からないところでそんなことを言えてしまう絵麻のメンタルをある意味尊敬してしまうが、これじゃ私の価値が下がる一方だ。そうしなくても彼のせいで私の価値は下がっているというのに。



「それはアンタだけの意見ね」


「凪沙だってそうじゃん!」


「一緒にすんな。私は違うから」



 少し前屈みになったと思えばお菓子を持っていない方の手で頬杖をついた凪沙は、解りやすく遠い目をした。



「顔のタイプが普通に先輩だから」



 へぇ、それは初耳。


 なんとなく、凪沙は恋愛に興味がないと思っていた。いつもクールだし、凪沙からそういう話を一度も聞いたことも聞かれたこともなかった。それに、ちょっと悪い人になつく傾向があるとは思っていたけど、先輩たちの場合は顔が単純にタイプだったんだ。意外とはこういうことを言うのだろうな。



「ちなみに、どっちの先輩?」


「ましろが食いついてくるとか珍しいね」


「気になっちゃって。私が協力できることは協力してあげたいし」


「ありがとう。でも、別にそういう感情はないから」



 嘘をついているのか、ついていないのか判断できない表情を浮かべながら淡々と呟いた凪沙を思わず見つめていると、目が合った瞬間、凪沙はふっと小さく笑った。


 これが彼だったらすぐに導火線がついて目に力を入れているというのに、凪沙にされても腹が立たない。これが友人と嫌いな相手との差か。



「それで? ましろは玲青? 先輩?」


「なに? 僕の話?」



 彼のことを話している人なんてそこら中にいて、いつもは聞いていないふりをしているというのに、どうして私たちの時にはこうやって会話に入ってくるわけ?


 本当……いい性格してる。



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