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冥土の土産ではなくメイドを土産にするんです。

 ピーンポーン


 泣いていると、チャイムの男が鳴り響いた。

 こんな時に・・・・・・誰だ?今の状況では俺は出れない。母さんがいるはずだから、大丈夫だろう。


「って!親にどう説明すればいいんだ!?」


 やばくない!?ほんとにどうしよう。何て言ったら納得するだろうか。


「なんか、ゲームしてたら、女の子になっちゃった」(てへっ)


 没。おかしくなったのかっていわれるな。警察につき出されるかも。


「自分の家と間違えました~」(てへっ)


 これからどこに住めばいいので?没。


「泊まる家がないので泊まらせてもらえませんか?」(てへっ)


 色々と聞かれそうだな。没。(てか、てへっ、ってなんだよ。)


 というか、親父にそんなこと言ったら、失神してしまうし、母さんの場合、対応に困る喜び方をするだろう。


「億劫だ」


 一生このままってことはないよな?お願いだから、戻してくれよ。


 ピーンポーン


 チャイムが鳴る。母さん気づいてないのか?それかいないのか。親父は、休日出勤でいないし。この姿の俺は出るわけにはいかない。


 ピーンポーン


 母さん!いるなら、はよでて!


 ピーンポーン


 ピーンポーンピーンポーン


 ピーンポーンピーンポーンピーンポーン


 ピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーン


 ピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーン


「ああ!!もう!!」


 うるさくてしかたがないので、出よう。

 階段を転げ落ちるように下りる。その間もチャイムは鳴り続いている。迷惑きわまりない。

 玄関に向かう途中、リビングを覗いてみたが、いなかった。部屋にいるかもしれないが、基本リビングにいるから、可能性は低い。とりあえず誰が来たのか確かめよう。

 玄関に向かい、覗き窓から見る。女の人・・・・・・って、ん?何か違和感・・・・・・。いや、気にしないにしよう。


「あー、はい、ちょっと待ってください」


 そう言って、ドアを開ける。そこには──いや、今は誰が来たのかなんてことはどうでもいい。

 ドアを開けた瞬間、そこは────


 ────異世界だった。


「なん、じゃ、こりゃあ!!!」


 思わず叫んでしまった。それも仕方がないこと。何故ならば、異世界も異世界。そして、辺り一面、緑の海が広がっていた。緑の海ってのは、比喩だ。草原が広がっていたのだ。その他何もなかった。いや──目の前にひとつ。一本の道が。舗装されていない簡素な道があった。

 えーっと、ちょっとまて。異世界転生?しかも、TS転生?あはは。とうとう、頭がおかしくなってしまったのか。うん、そうに違いない。ラノベの読みすぎだろう。きっと。

 それにさ、家と一緒に転生って、おかしいでしょ。親がいたら、大変だったんじゃないか?──って、あれ?今ここに家があるのだから、元の地球にあった家は・・・・・・どうなってるんだ!?考えただけで恐ろしい。親の住むところがなくなるじゃないか!

 まあ、そこはとりあえず置いといてだ。俺って、なんで転生したんだ?死んだってことなのか?しかし、自分の部屋にいたから、交通事故に遭うってのもないし、カーテン閉めてたから、射殺されたという線もないだろうし、不審者が入ってきて殺された・・・・・・?全然わからん。

 と。


「宜しいでしょうか」


 俺が色々と考えていると、訪ねてきた女の人が喋った。


「あ、すみません」


 おもわず、謝って返した。

 って、なにぃ!?

 彼女は、メイド服を着ていた。胸もデカイ。腰は細く、スラーッと長い足が。顔は、俺好みで姉っぽいかんじで美少女。美人より、可愛いといった方がいいだろう。それと、髪が白く、腰辺りまで伸びていた。いい、実にいい。俺の髪が黒だから、対になってるかんじがする。


「えっと・・・・・・」


 なんと言ったらいいのかわからず、様子を伺う。と、メイドさんが喋りだした。


「すみません、申し遅れました。わたしは、()()()()()()()()()、澪と申します」


 女神のメイド?なんだそれ。てか、女神の名前、日本人過ぎるだろ。ここ異世界じゃないのか?日本とかだったりして。って、あれ?スズネって確か……どこかで………まあいいや。そして、目の前にいるメイドの澪さん。こちらも日本人なのか?


「えっと、俺、相川茉那といいます」

「あなた様に御用が御座いましたのでお迎えに上がったのですが……」

「すみません、あまり──いや、全然状況を飲み込めていなくて、混乱していて」


 彼女は、なるほど、と呟いて言った。


「そのことも含め、あなた様にお逢いしたいというお方がおります。強制ではありませんが、あなた様がこの地で生きていく上で重要なお話があるとのことなので、できれば来ていただきたいのです」


 俺に逢いたい人が?ああ、異世界転生といえば、神やらなんやらに逢って、話を聞いたり、能力貰ったりするよな。そういうことか?

 これは、行くしかないよな。転生した理由とか知らないし。ここがどこかもわからないし。親とかも心配だし。


「わかりました。何もわからないので、助かります」

「ありがとうございます」

「いえ、こちらが礼を言わなくては。ありがとうございます」


 んー、なんか、異世界かぁ。風からして日本とは違うっていうのがわかる。


「それでは、マナ様、御車をこちらにまわしますので、少々お待ちください。」

「ふぇ?」


 今何て言った?車?車があるのか、この世界に?まあ、異世界って言っても、技術が発展してかもしれないし、当然と言えば当然なのか?しかし、アニメとかだと、異世界転生もので技術が発展している世界へ転生するってのは、見たことがないな。技術があったとしても、地球の技術とは、方向性が違うものってのは、あるけど。


「お待たせいたしました」


 どうやら、考え事をしているうちに車を持ってきたらしい。気づかなかった。


 ──車は、黒のリムジンだった。


 普通にリムジンだった。車と言っても、異世界なのだから、全然違う形をしていたりするものだと思っていたが、裏切られた。


 「(リムジンは乗ったことあるんだよなぁ。)」


 俺はそう思った。嘘ではなく、本当のことだ。とは言っても、その〝乗った〟は、普通の〝乗った〟ではなく、異常の〝乗った〟であるが。つまり、普通に、シートに座ってリムジンで道路を走ったのではなく、俺を拘束してシートに寝転がし、リムジンて道路を走ったのだ。

 確かあれは、小学六年のころだったか。首謀者は、ショタ好きの巨乳美女さんだった。美女と言ったが、俺の好みではなかった。40代半ば辺りに見えた。彼女は、小さな男の子を誘拐し、遊んでいたらしい。その〝遊んでいた〟に関しては、口には出さないが、察しはつくだろう。俺の場合、直ぐに保護された。誘拐されるところを自宅から出てきた警察官が偶々見ており、遊ばれずにすんだ。しかし、なんでリムジンなんて持ってたんだよ、あの人。


 さて、そんなどうでもいいような俺の過去話はこれくらいにしておくとして。

 俺は、澪さんが開けたドアから、リムジンの中へと入り、座った。

 その後に、澪さんが運転席に乗り込み、俺の家を出発した。




「どこ走ってんの、これ」


 窓を覗くと、そこは、さっきの異世界ではなかった。


「(うぇ・・・。車の意味あるのかこれは)」


 今車が走っているのは、なんとも言えない空間──いや、狭間と言った方が正しいのかもしれない。端があるのかもわからない、白と白以外の()()()が混じっている。時折、黒に変わるが、どういうことなのだろう。

 そしてこの車、地面を走っているようには思えない。なにかを()()()()()()()ように感じる。風──あるいは空気。はたまた空間かもしれない。それもこれも、見えないものであるから、そこを車で走るなどできるはずもない。故に、ここが異世界なのだと結論付けることができた。


 ──異世界転生。


 それは、俺たち地球の人類には、理解し得ないものである。ある意味、VRゲームも同じであるが、それは現実ではない。しかし、ここは現実。なんということだ。

 ああ!女性アバターにしなければ、転生せずにすんだのかもしれない。どういう過程で異世界転生などしたのか。それはわからないが、転生するくらいなら死んだほうがまし・・・とは言っても、命を軽々しく扱うつもりもなく、ましてや自分の命なのだから、そういうことはあり得ない。と思う。わからないが。・・・煮え切らないな。


「マナ様、ご到着です」


 到着?そう思った次の瞬間、光が視界を埋め尽くした。


 ──フロントガラス越しに見える、なにか。


 それを見たとき、なんの言葉も出なかった。出せなかった、と言った方がいいだろうか。


 ──大きな白い木が()()()()()


「────っ!?」


 窓から下を見る──浮いていた。


「って、は!?」


 車が浮いていた。


「いやだから、は!?」


「マナ様、少し振動がきます。舌を噛まぬようお気お付けくださいませ」


 あー、ハイハイ、振動ね─────「ぇえええきやぁぁぁあああ!?」


 振動もするんだけど、まず──なにこの浮遊感!?スゲー気持ち悪いんですけど!てか怖っ!


「ちょ!み、澪ささ、ん!?お、落ちてるんですけど!?」

「肯定。現在、当車両は、降下状況にあります」

「冷静だなおい!わかってましたよーそういう意味でいったわけじゃないんだけれど───って、いつまでこうなってるの!?まだ地面じゃないのか!?」

「肯定。高さは、あなたの世界にあるスカイツリーの高さとほぼ同じです」

「どーりでたかいわけだぁぁぁぁぁああああああああ゛あ゛あ゛゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?!?」


 へんな浮遊感に陥いっている。ふわふわーと、どこにでも行けそうな、そんなかん───────


「じ!?」どっすぅぅぅぅぅうううううううんんんんんんんんんんんん!


 振動が全身に伝わってきた。贓物が口から出てきそうだったり死ぬかと思った。車大丈夫なのか?高いだろ、この車。というか、壊れてねぇぇ!!


「頑丈すぎんだろ……」


 口から呟きが漏れる。

 しかし、一体全体どうなっていやがる。急に異世界に来るわ、女になってるわ、車に乗せられてしまいには落ちるわ。この短な時間で俺の身はもはやボロボロ。


「この車体は、神の攻撃以外では壊れない仕様になっております」


 あ、そう。今別にそんな情報要らなかったよ。

 澪さんがドアを開けてくれたので外に出る。と、不思議な感じがした。現実感がないというか、存在感がないというか、なんというか。女神がどうとか言ってたから、そんな感じがするのもわからないではないけど。人間の──あれ?俺って、人間なのか?人間、だよな?幼女になってはいるが、いたって普通──あ。このキャラの設定だと、人間じゃないんだった……。確か、霊<猫耳>だっけかな。てか、猫耳ってなんだそりゃ。猫耳なんてないしなぁ。そう思い頭を触るが、やはりない。


「マナ様、こちらでございます」


 声がした方を向くと、約三十メートル先にある、大きな白い木の根元に澪さんは立っていた。そして彼女の後ろには、これまた白い扉があった。

 てか、いつの間にそこに行ったんだよ、と心の中で思いつつ、歩き出した。

 白い木を下から見上げると、その大きさは計り知れないものだった。異世界に来たのだと実感できるものだった。


「それでは、女神様のもとへ参ります」


 彼女はそう言って、扉を開けたのだった。






 木の中は、大理石のような石でできていた。ツルツルの白い何か。大理石ではないのは確かだ。ここは異世界。俺にわからないものが多々あるのはおかしくはない。

 カツンカツン、とふたつの足音が響き渡る。

 横からは、外の光が差し込んでいた。窓から見えるのは、白い雲だらけだった。はて、確かここは、木の中だったと記憶しているのだが。階段を上ったのは建物二階分くらいだと思ったんだが、そこまで上ったのだろうか。あり得なくはない。空間が歪んでいたのかもしれないし、錯覚させたりしたのかもしれない。

 そう考えていた俺に声が掛けられた。


「いえ、そうではありません」


 澪さんは、表情を変えずに真っ直ぐ前を向いていた。


「あの木は、単なる木でしかありません。あれは幻想。そこに大きいな木があるかのように見せているだけに過ぎないのです。元々は、普通の大きさをした木です。その木の中身をくりぬき、補正をして、扉をつけたのです。扉を開けて中に入ると、女神様がおられる本殿に転移されます。ですから、ここは先ほどいた場所とは違うところにあるのです」


 すげー異世界ぽい、と俺は思った。理解はできた。あれはただの転送装置かなにかだったわけだ。ほー、騙されていたんだな。幻ってどうすればわかるのだろうか。

 どれくらい歩いたのだろうか。同じところを歩いているようにしか感じられない。歩いても歩いても同じ景色ばかり。扉がひとつもなく、左右は、一面ガラス窓と壁だけだった。

 大分時間がたっているはずだ。


「あの、いつまで歩いていれば───」


 そう言いかけてやめる。そうだ、これは錯覚ではない。同じ景色を見せられれば、時間がものすごく経ったと勘違いする。それは、日本にいたときも経験した。だから、さほど時間は経っていないのだろう。そしてなによりも。いつ着くのかという問題だ。多分、歩いていても着くことは不可能だろう。さっきの木と同じで幻なのではないだろうか。しかしそうだとしたら、どこが幻なのか。そんなことは俺にはわからない。───いや、そうとも限らないか。今の俺は、人間ではない。スキルとかでこの状況を打破できるかもしれないスキルとかがあるかもしれない。

 確かめるためにはステータスウィンドウを出さなくてはならないのだが……どうすればいいんだ?

 腕を振るのか?──左右とも半能無し。

 今度は、人差し指と中指だけ立ててあとは丸める。その状態で腕を振る──反応無し。

 などと、色々試してみたが、なんの音沙汰もない。うむ、もっと単純なのかもしれない。ステータスウィンドウ、とか心の中で呟けば出るのかもしれない。試しに、オープン、とだけ心の中で言ってみた。すると、

 ス───と。なにやら薄青いパネルのようなものが出て───────


「──こない!」

「ひっ!?」


 俺が突然発した声で澪さんが驚いた。


「失礼いたしました」

「ああ、いえ、俺が悪いだけです」


 とにかく、ここからどうにか脱出しなければならない。これは、試験のようなものなのだろう。腕試しのほうが近いか。さーて、かんばるぞー。

 ……とは言ったものの、何をすればいいんだ?

 そうあれやこれやと考えていると、

「あれ?」

 ふと何か不思議に思ったのか、思い出したのかはわからないが、澪さんが声を漏らした。どうしましたか? と尋ねると、それがですね、と言い出した。

「目的の部屋に着かないんです」

 ……どうやら、試練ではなかったようだ。

 

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