箱庭に囚われていたのは
あけましておめでとうございます!
今年も宜しくお願い致します!
幼馴染目線になります
ちょっとだけ長く書けました!
前作共に沢山の評価、ブックマークありがとうございます!
……今回はなんか思ったのと違うかもしれません…。
僕には好きな子がいた。
輝くように綺麗な女の子。
でも、その女の子には既に好きな相手がいた。その相手は、俺の幼馴染である王子殿下。
でもその王子は、彼女を見ようともしない。彼女はいつも笑顔で話しかけているのに、冷たい目を返していた。
僕は許せなかった。
僕が欲しくてたまらない彼女からの想いを送られているのに見向きもしないなんて。
それなのに、彼女が一人になる様に囲い込む。プレゼントを贈りもしない。
僕が一度、プレゼントを贈ろうとしたら『婚約者から貰っていないのに、他の男からなんて受け取れないわ』と断られた。
僕は断られて以降毎年誕生日プレゼントを買って、自分の部屋にしまっている。いつか、渡せる日を願って。…自分が重い男だと自覚しているからこれに関しては何も言わないでほしい。
彼女はいつからか、悲しい笑顔を浮かべるようになった。いつからだったかわからない。気づけば輝く笑顔を見なくなった。
何かを諦めたような笑顔。
そんな顔を僕は見ていられなかった。
だから王子に相談した。
王子なら…王子が、彼女を見れば解決すると思ったから。
でも、王子は虫けらを見るような目で言ったんだ。
『婚約者が俺に対して笑ってくれないからだ。笑ってくれれば、俺も笑い返せたさ。でも、それがどうした?それが、お前になんの関係がある?婚約者は俺の物だ。どう扱おうが俺の勝手だろう?』
ふっと、鼻で笑ってから王子は去っていった。
僕は呆然とした。
俺の物?どう扱おうが俺の勝手?
……アイツは、彼女の事をなんだと思っているんだ?
彼女は……。
僕は何も出来なくて、何かをする力が無くて、悔しくて悔しくて……
彼女を助けられない自分が許せなくてその後部屋に籠って声を殺して泣いた。
ある日王子の父親である王様に呼び出されて王様の部屋に向かった。
初めて入る王様の部屋は……凄かった。
豪華絢爛…うん。凄かった。
入って早々
「お前は、なんで自分が我が息子…王子の側に置かれていたのか、理由がわかるか?」
と、聞かれた。
王子の側に置かれた理由?
「王子の歳と近くて、親戚…従兄弟だったからではないのですか?」
それ以外の理由があるのだろうか。
「そうだな。確かに、そう話をさせたな。…お前の母親に」
「でも、違うのだ」
違う?何が違うというのだ。
「お前は」
王様は意を決した顔でこちらを見てきた。
「お前は私の子供なのだ」
僕はガツンと頭を殴られたような気がした。
…僕が、王様の子供?……じゃあ。
「お前は王子の兄だ。腹違いの、兄だ」
はらちがいのあに。
腹違いと言うことは、王妃様の子供ではないと言うこと。
王妃様は僕に優しかったのに?
普通、自分の愛する人が他の人と作った子供に優しく出来る?
僕は無理だ。きっと無理。
「ふふっ。じゃあなんで自分に優しかったのかって思ってる?」
「え」
綺麗な声がして振り返ったら王妃様が居た。
僕の母様と一緒に。
「あら図星?相変わらずわかりやすいねぇ 私の愛しい息子は」
笑いながら歩いてきた母様に頭を撫でられた。
「いいんですか?王様。この子を表に出しちゃって」
母様は薄く笑って王様を見つめた。
「あぁ。あの馬鹿息子がここまで馬鹿だとは思わなかったからな。お前達にも苦労をかける。それに、王妃は自分の息子よりも息子の婚約者の方が大事なようであるからな」
「ふふっだって…あの子、私の大好きな彼女に誕生日のプレゼントすら贈ったことが無いって言うんですもの。使えない息子よりも大好きな彼女を取るのはいけない事でしょうか?」
いつのまにか王様の隣に移動していた王妃様が笑いながら言っていた。
……使えない息子…。
綺麗な笑顔を浮かべて使えない息子と言った。
「と、言うわけだ。お前にはこれから王太子として相応しいと言える力を家臣たちに示してもらいたい。…まぁ、大丈夫だと思うが」
何が と、言うわけだ。なんだ。
王太子として相応しいってなんだ。
そもそも、僕は王太子になるなんて言ってないぞ。
「王太子になったら、愛しい彼女を奪えるわよ。あの王子様から」
そう言われてぐるんと母様の方を見た。
「…え?」
「当たり前じゃない。あの王子様より立場が上になればいいのよ。まぁ彼女が望めば、なんだけどね。でしょ?王様」
「あぁ。望めば。だ」
王太子になれば、彼女をあの王子から引き離すことができる?
僕は何も出来ない無能じゃなくなる…?
彼女に、想いを伝える事が出来る…?
ーーーなら、
「わかりました。僕は王太子になります。その為には何をすればよいでしょうか?」
どうしようもなく、僕の世界は彼女中心に回っているのだ。
僕が王太子になる事で、彼女に選択肢を増やしたかった。
それから一年。
やっと、王様に相応しいと認められるって時に、あの王子様が女に惚れ込んで彼女に婚約破棄をするという情報が耳に入った。
「ぁんの馬鹿王子!!!」
あと少し、あと少しだったのに。
僕は彼女の家に急いで向かった。
間に合ってくれと思いながら。
でも。
僕は間に合わなかったんだ。
彼女の部屋に入った時にはもう既に遅かった。
彼女は僕を見て微笑んでから意識を失った。
なんとか抱き止める事は出来たけど、遅かった。
意識を失うほど彼女は追い詰められていた。
王様に、周りの人に認めてもらえるように頑張ることに必死で、彼女の心に気づけなかった。
それが一番悔しかった。
その気持ちのまま睨みつけた王子の隣には憎たらしい笑顔を浮かべた令嬢がいた。
それから彼女が目覚めず半年が過ぎた頃、王様に呼び出された。
「すまなかった。もっと早く、お前に真実を話していれば、彼女が倒れる前に間に合ったかもしれないのに。私が、まだあの子に期待していたばかりに…」
王様は顔を伏せてすまなそうに言った。
王様のせいではない。
あの王子の、そして早く示せなかった僕のせいだ。
「今日、あの子に…王子に全て話す。……今日から、お前が王太子だ。宜しく頼む」
「…はい」
王様が王子に説明している様を見ていた。
王子は馬鹿なのか中々理解をしなかった。
見てられなくて僕は口を開いた。
「僕が、本当はお前の兄で現在の王太子。わかったか?」
そういうと、ポカーンとした様な顔で王子が見つめてきたので、その顔が可笑しくてもう一つ聞いた。
「あとさ、お前 言ってたよな。『婚約者が俺に対して笑ってくれない』って」
「あぁ。言ったな」
今度は即答で答えられたので悲しくなった。
お前は気づいていたか?
「笑ってたよ」
「は?」
『は?』なんて言うなよ。
「彼女は、笑ってたよ。お前と話すときも、お前の話を僕とするときも。お前が彼女を見なかっただけで、笑ってたんだよ」
「……え?」
そんな顔して。
認められないか?王子様。
「うそだ。そんな、笑っているわけないじゃないか」
なんで、そんな顔をするんだ?
お前に傷つく資格なんてないんだぞ?
「嘘じゃない。…それで、僕が何度悔しい思いをしたと思う?僕はずっと彼女を見ていたのに。彼女だけを想っていたのに。彼女が想っていたのはお前だったんだよ。なのに、お前は彼女に何をした?お前のせいで自由を取り上げられた彼女は『王子殿下の頼みで、王子殿下の為ですから』と笑って言ったんだぞ。そんな彼女をお前が切り離した。彼女の心が再起不能になるまでお前が傷つけたんだ。…その罪の重さ、わかるか?」
重さなんてわからないんだろうな。
僕はゴミでも見るかのような眼をして王子を見た。
それに、
「それに、お前は、元婚約者である彼女の名前は分かるのか?覚えているのか?」
王子は僕の質問に答えず呆然としていた。
あぁ、そうか。
箱庭に囚われているのは彼女じゃない。
この王子だ。
それから毎日眠っている彼女の部屋に向かっては名前を呼び続けた。
彼女が目覚める日を待ち続けた。
自分の小さな箱庭に囚われていた王子は今更ながら彼女に執着し出した。
勿論彼女に近づく事は彼女の両親も僕も許さなかった。
彼女の心を壊してしまった一人でもある僕が、彼女に許してもらえるのかわからない。
でも、彼女のあの輝く笑顔をもう一度見たくて性懲りも無く毎日通う。
「ふふっ。結局、僕もかな」
僕もきっと、彼女という箱庭に囚われている一人なんだろうと思う。
「まぁ、彼女という箱庭なら喜んで囚われるかな」
僕は2年間眠っているのに、綺麗なままの彼女の頭を撫でた。
ごめんね。
こんな重たい男が君の事を好きになっちゃて。
でも、今まで王子に愛されなかった君を僕は溺愛するつもりだから、早く目覚めてね。
……僕の愛しい人。
思っていたのと違う幼馴染くんになりました。
なんか愛が怖い。
面倒くさい男しか周りにいなくて箱庭の令嬢ちゃん凄く可哀想…そりゃ心も壊れますわ。
箱庭の令嬢の目覚めを書くか悩んでます……。
幸せなのは目覚める事か、目覚めない事か…。