009 ジョブレス退化
昔から国語が苦手で、改行、句読点など
よくわかりません。
表現も苦手で更新は不定期になります。
目を覚ますと、眼前にはパソコンがあった。
ワタシが職場で使っているパソコンだ。
キーボードを叩く音が周りから聞こえる。
寝落ちしてたのか……?
てことは異世界渡りも腹下してたのも全部夢か。
「おい、金豈。この忙しい時に昼寝とはいい度胸だな」
背後から声を掛けられた。
この声はチーフだ。
「や、やだなぁ、チーフ。少し目を休ませてただけで……」
振り向くと立っていたのは、石像だった。
チーフそっくりの石像だ。
瓶底メガネに四角い顔にしかめっ面。
「へぇ~、良くできてる」
チーフの石像の額を『コンッ』と叩くとピタリとキーボードの音が止んだ。
不気味なほど音がしない。
これが静寂と言うものなのだろうか。
無音は落ち着かず、周りを見渡すと他のパソコンの前にも石像が並んでいる。
全てが全て同僚の姿をしていた。
「な……なんなんだよ……コレ」
1人だけ、動いている者がいた。
腰まである黒髪のストレート、たしか桜神刹那さん。
彼女の肩を叩き呼び止めた。
「ちょっと、待ってくれ……いったぃ……」
『ピシッ』という何かが割れる様な音が幾度と聴こえる。
近いな。
何処からだろ。
それは、手を置いている彼女からだった。
「離……して……」
彼女は足元から石化していき、やがて完全な石になった。
「うわぁ! ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……」
顔面蒼白で目覚めるサム。
なんか、怖い夢を見た……気がする……。
目を開け、映る光景は森。
なんだ、まだ森の中か……。
というか、いつ寝たんだろう。
加工が終わって、バイクで走ってたところまでは覚えてるんだけど。
なんか、記憶があやふやだな……。
「おや? 丁度いいところで目覚めましたな」
「丁度いい?」
「ゴブリンを見つけましたので、討伐しましょう」
「んー、わかっ……っない!」
目覚めたばかりの上、悪夢の内容が気にかかり、ちゃんと聞いていなかったので軽く返事をしそうになったが、脳内で復唱して気付き、慌てて否定した。
「はっ? 今、何つった?」
「ゴブリンを見つけました。討伐しましょう」
「いやいや、ちょっと待って! ボクのストレージには森ゴブ達がいるんだよ!?」
そう、大量に加工した魔物たちはストレージにしまっている。
始めは大勢連れ行くのは無理だと考えていたが、緑ホッパーからのアドバイスで、加工した魔物は全て収納されている。
ラノベ・ゲームだと生き物は入らない設定が多いが、どうやらこの世界では入るようだ。
「ワタシ考えたのですよ。ワタシを再加工して貰うには、マスターのレベルを上げて、基礎魔力量を上げるしか無いと」
うん、それは考えなくてもわかることだね。
と思いはしたが、口には出さないでおいた。
「せめて、ボクが加工したことの無い魔物にしない?」
「何故?」
「だって、元とは言え身内と同種族を狩るってイヤだろ?」
「かまいませんよ」
「緑ホッパーはそうかも知れないけど、森ゴブたちはいい思いしないだろ?」
「聞いてみてはいかがですか?」
「聞くまでもないよ!」
ストレージに収納されたモノはリストで管理され、項目を選ぶと取り出す事ができる。
だが、加工品は少し仕様が違っていた。
取り出すの項目の他に、対話という項目もあるのだ。
サムは森ゴブ長を指定し、対話を選択する。
ストレージパネルに森ゴブ長の顔がアイコンで表れた。
通信システムみたいで良いな、コレ。
まるで基地にいるロボと会話しているみたいだ。
実際はストレージ内だけど。
そして同族狩りについて聞いてみる。
『え? 別に構わないっスよ?』
「おぅふ……」
ボクはその場に崩れた。
マジかー。
しかも、結構アッサリ言うな。
「仲間意識とか無いの?」
『いや、仲間じゃないっスから』
「え、あれ? 種族違った?」
「我々魔物は種族が同じという理由で仲間意識を持つことは珍しいですよ」
「マジかよ」
「経験値の為ならば、同族殺しなど珍しくもない」
「経験値の為だけに……悲しい世界だな」
「そうですか? 同族であれば、弱点は丸分かりです。不意を突いて殺すのにこれ程適したターゲットはいませんよ」
悲しい世界改め、嫌な世界だな。
と考えたが、人に置き換えてみた。
経験値ではないが、金の為に人を殺す者はいる。
人も人の弱点は把握している。
心臓・脳・大動脈・etc……。
人も同じ事してら。
「さて、目標値は2000です。頑張りましょう」
「その目標値ってのは基礎魔力量の事だよね?」
「その通りです」
「今の倍じゃん」
「秘策があります」
「そもそも、ボクのレベルは1しか無いんだ。倒せないだろ?」
「ご安心をサポートいたします」
「そしたら、その経験値とやらは緑ホッパーの方に入るんじゃないかな?」
「止めを刺した者にしか入りません」
なるほど、便利な世界だ。
いや、不便か?
ゲームならパーティー組めば分配される事もあるのに、この世界だと倒せない奴は永遠ザコってことになっちゃうもんな。
「それに、ワタシとゴブリンではランクに差がありすぎます。例え1億匹倒しても、経験値は入らないでしょう」
格差か。
格上の者を倒せば多くの経験値が入るが、格下の者を倒しても入る経験値は微量なんだっけ。
差があればあるほど、増減の幅も大きくなると。
人はゴブリンとそんなに差があるのだろうか……。
緑ホッパーについていくと、確かに数メートル先にゴブリンが1体いた。
すると、緑ホッパーはボロボロに錆びた剣を取り出した。
「見ててください」
そう言うと、錆びた剣をゴブリンの足元目掛けて投げつけた。
錆びた剣を拾い上げたゴブリンの骨格が変わっていく。
うわっ、何アレ……キモッ!
先程まで小学生くらいの背丈だったのが、高校生くらいまで一気に成長した。
餓鬼の様に出ていた腹も引っ込み体育会系高校生だ。
肌は緑のままだけど。
成長後、錆びた剣を天に掲げ、はしゃいでいる。
「あれはゴブリン特有の進化、ジョブ進化と呼ばれるモノです」
「ジョブ進化……」
「これにより、マスターより少しランクが上になるハズです」
「なるほど」
これが緑ホッパーのいう秘策か。
「では、本番に行きましょう」
「本番?」
地面に落ちていた小石を拾い上げ、先程の錆びた剣目掛けて弾いた。
錆びた剣の根元に当たり、簡単に折れる剣。
再び骨格が変わり、元のゴブリンに戻っていく。
「ジョブを得た事により進化しますので、ジョブを失うと退化します。これをジョブレス退化と言います」
ゴブリンは縮んだ身体を見て泣き崩れた。
うわぁ……カワイソウ……。
流石に同情した。