006 非常に非情
読んでいただき有難うございます。
語彙力ありません。
更新が遅いです。
というか、不定期です。
ブックマーク登録が1件増えました。
とても嬉しいです。
魔物が知らないだけで、ジャイロ効果はこの世界にもあるのかな?
「ふむ、これはスキルとして認定されたようですね」
「は? 元からあったんじゃなくて?」
「スキルは10上がる毎に派生スキルを得る事があります」
「じゃあ回転10の派生がジャイロ効果って事だろ?」
「それでしたら、ギア蝶が得ていないとおかしいのですよ。彼女の回転は12ありましたから」
「あー、そういえば……」
そうだったかな……正直、覚えてない。
「覚えていないという顔ですね」
「あ、ばれた?」
緑ホッパーはやれやれと言う顔で、ギア蝶のステータスを表示させる。
種族名:ゴーレム
レベル:36
スキル:[風擊2][斬擊7][削擊8][回転12][ジャイロ効果1][飛翔13][探索9]
「あ、ジャイロ効果が増えてる」
でも何で?
緑ホッパーはスキル認定されたとか言ってたな。
そもそも、スキル認定ってなんだ?
地球コマがちゃんとバランスとれたって事は、ジャイロ効果現象は元々あったんだろ?
魔物達が知らなかっただけで……知らなかった?
もしかして、現象はあったけど名称が無かったから?
「ボクが名称を付けたから、スキル認定された?」
「ご名答」
「知ってたの?」
「何年生きていると思っているのですか?」
「それなら先に言ってくれても、いいじゃないか」
「聴かれませんでしたし、マスターが何を考えているのかなど、わかりませんよ」
「それもそうか」
「今回マスターが名付けられた現象もそうですが、他にも技や耐性など、名称がなければスキルにはなりません」
「スキル名って神様が決めるモノじゃないの?」
「神とやらが本当にいるのかは不明ですが、いるのならば神も暇ではないということでしょう」
「名前くらい自分で考えろって事か」
「そういう事です」
「そういえば、いつまで回してるの?」
「16までは上がったのですが、これ以上は中々上がらないものですね」
「弾き回しじゃ、限界があるよ。あと思い付くのは構造を一回変更して、ギアを組み込む事かな」
「ほほう? マスターの引き出しには驚かされますな。まだ方法があると?」
「まぁね」
ボクの引き出しじゃなくて、異世界の引き出しだけどね。
そういや加工しても、所持スキルは変化しなかったな。
いっそのこと、一度ギアボックスに加工しちゃえば、回転スキルは鰻登りなんじゃないか?
ギア比を1:100とかにして、100をスキルで回せば1の方は半端ない速度で回転するだろ?
やらないけどね。
今は一刻も速く加工を終わらせて、街へ行きたい。
街……あるよね?
「ダンゴムシで思い出したのですが、この森にもダンゴムシ系統の者がおります。お連れしても?」
列に並んで無いのに追加するの?
でも、タイヤダンゴムシは見てみたいかも……。
「いいんじゃない?」
「それでは暫しお待ちを」
そう言うと、緑ホッパーは音も無く消えた。
え!?
と驚くも、瞬きをすると再び現れていた。
右手に巨大な鉄球を持って……。
「なんで鉄球?」
「いえ、この球体が件の者なのです」
この鉄球が?
種族名:ガイア
レベル:352
スキル:[土擊24][怪力6][回転26][ジャイロ効果2][鉄壁24][硬化23][物理耐性62][探索2]
ガイアとは、ダンゴムシのクセに大層な種族名だな。
それにしても、物理耐性高い。
他にも身を守る系統が高いな。
ダンゴムシのくせに……。
鉄球に手を置くと、いつも通りの枠があり、霧が……見えない。
いや、微かに流れている。
少な過ぎて霧とは言えない、粒子と粒子との距離がありすぎる。
色は……黄色……茶色かな?
「ねぇ、魔力量……少なすぎない?」
「実はその者の事で、お願いがあります」
このダンゴムシは、進化に失敗したのだという。
進化に失敗とはいかなる事なのか。
まずは魔物の進化について、軽く説明しよう。
魔物は10レベルを1段階として、進化できる。
進化すると寿命はリセットされるがレベルはそのままだ。
レベル20、つまり2段階の時には1段階目の進化先も選べる。
前に選んだ種族に戻る事、つまり退化も可能だ。
魔物の進化系列樹は非常に非情だ。
まず、進化先は名称しかわからない。
そして、進化先で生活するのに必要最低限なスキルも解らないのだ。
例えば、毒無効を所持せずに、先のネヴァンなどに進化すると進化完了後に即死。
毒無効が無くとも毒耐性があれば即死は免れるが常にダメージが入る状態異常に掛かり、HPを回復できなければ、やはり死ぬ。
勿論メリットもある。
進化すればHPやMP、魔力などの基礎値が上昇する。
その種族特有のスキルを得られるし、既に所持していればスキルレベルが上昇する。
さて、ガイアという種族を見てみよう。
ガイアは見た目通り、非常に頑強で重い体躯の種族である。
スキルは硬化や鉄壁が得られ、物理耐性に至ってはスキルレベル50が加算される。
その代わり、怪力スキルが一定に達していなければ、ただの移動にも困難を極め、食事も儘ならない種族だ。
そして、生きるのを諦めた者がここにいる。
魔力量は減少の一歩をたどり、今や休眠状態。
日々の食事を摂っていない為、回復する見込みもない。
「この者に、今一度生きる力を与えていただきたい」
確かに今の話聞いちゃうと助けてあげたいなーとは思うよ?
でもどうやったらいいのかが、わかんないんだよ。
このままゴーレム化しても、難しいだろうし……。
そうだ!
「魔力量が身体に合わないなら、身体を魔力量に合わしちゃっていいかな?」
「ほぅ?」
「身体のサイズをさ、もっと小さく軽くしてやればいいと思うんだよ」
「それは名案ですが出来るのですか?」
「解んないけど、足せるんだから引けるんじゃない?」
「何事も経験ですか」
この魔物には飛行スキルはなかったな。
ダンゴムシだし、飛ばないか。
緑ホッパーが言っていたように飛行機にして飛ばしたら、飛行スキルもゲットできるんだろうか。
でも、航空力学なんて学んでないし、翼の形状も確か特殊だったはず。
何より推進力がないよな。
そうか、プロペラを付ければ……。
だから航空力学の知識がないからプロペラの形状がわからないってば。
まてよ?
アレなら、誰でも飛ばせるんじゃ……。
などと考えていると光が収束し、ボクの手元に集まっていく。
出来たのは紙ヒコーキ。
それもノート千切って作ったようなサイズ。
「マスター……流石に小さ過ぎでは……」
心配そうに語りかける緑ホッパー。
うん、ボクもそう思う。
いや、わざとじゃないんだよ?
ちょっと考え事してて、気付いたら紙ヒコーキになってたんだよ。
しかも、核となる魔石が表出してしまっている。
元が虫の素材だからか、本当に紙の様に軽い。
いや、紙よりも軽いかもしれない。
小学生の頃はよく投げて遊んだなぁ。
小学校の教室で返ってきたテスト用紙で折り、クラスの皆で投げていた事を思い出す。
優雅に飛んでいく紙ヒコーキ。
……現実でも、森の中を飛んでいく紙ヒコーキ。
……思い出に浸り、同調し、手に持っていた紙ヒコーキを投げていたのだ。
おぉ、良く飛ぶ良く飛ぶ……?。
……じゃない!!?
あんだけ軽くしたら、耐久力は!?
地面に落ちて大丈夫!?
核も表出してる……核から落ちたら……。
まずい!
取りに……間に合わない!
「とっ! 取って!!」
すかさず緑ホッパーが捕らえ、大事そうに両手の平で抱えてくれた。
「驚きました。このような形状で空を舞うとは……」
紙ヒコーキが飛んだ距離は5メートル強。
「ごめんよ。ちょっと懐かしくて投げちゃったんだ」
キャッチしてくれた緑ホッパーの元へ掛けより、謝罪する。
「最近は洞窟に篭ってしまい、いつも『もっと軽ければ』と呟いていました。ここまで軽くするのもどうかと思いましたが願いが叶ったのです。大丈夫でしょう」
『軽ければ』ね。
虫だし……ならトンボにしてあげようか。
「それなら、トンボにしてあげるよ」
「ほほう、トンボですか。いいですね」
「名前は……そうだな……」
トンボは英語でドラゴンフライだっけ?
そのままってのもアレだし……。
そうだ。
ドラゴンフライを更に日本語に戻すか。
飛ぶ竜か……、よし飛竜で。
色は黒いし、黒飛竜がいいかな。
「黒飛竜にしよう」
「それはマスターの母国語、漢字ではありませんか?」
「良くわかるね」
「マスターより授かった言語でワタシの一番のお気に入りですからね」
なんだろう。
緑ホッパーの話し方に少し苛立ちめいた物を感じる。
……もしかして。
「グリーンホッパーも名前は漢字がいいとか?」
「わかりますか?」
緑ホッパーの機嫌が凄く良くなった。
それは口調から感じ取れた。
そりゃ、そんなに態度に出したらね。
緑ホッパーを漢字にすると緑飛蝗か。
そういや、バッタってバッタのくせに皇の字が入ってるんだよね。
功績……。
緑ホッパーが受け止めてくれなければ、ボクは黒飛竜を殺してたかも知れないんだよね……。
変えてあげても……。
いや、まだだな。
なんたって功績上げたら後ろの連中に魔石付けてあげなきゃいけないんだろ?
あんな怖い思いはそうそうしたくないし。
わざわざ功績のハードル下げる必要はないな。
うん。
まぁ、今回のは10%ってところで。
「じゃー、漢字でいい感じの名前考えとくよ」
「期待しております」
さてと、紙ヒコーキをトンボ型に加工しなおすか。
手に取り、目を瞑ると紙ヒコーキの枠内に茶色の粒子が充満しているのがわかる。
だが……。
「さっきから一言もしゃべらないけど、コレ生きてる?」
「休眠状態のようですね。身体も軽くなりましたし、いずれ目覚めるでしょう」
「ならいいんだけど……。あ、そうだ飛行スキルないとトンボにしても飛べないんじゃぁ……」
トンボの大体の形は解るけど、どうやって飛んでるとか覚えてないしな。
羽ばたかせれば飛ぶってもんでもないだろうし。
「先程の飛行でスキルは獲得していますよ」
マジで?
マジであの距離の紙ヒコーキ飛行でスキル得られるの?
「それじゃあ、トンボ型に加工しとくか……」
うん。
こんな感じ?
基本構造として、輸送ヘリを採用。
トンボの2対の翅はメインローターから伸ばした翼。
付け根で角度調整が出来るので、メインローターを回さずに飛行機の様に飛行するも、回してヘリの様に飛ぶも自由だ。
こうして見ると航空力学無視してスキルで飛べるって素晴らしいな。
昔のロボットアニメが完全再現できるじゃないか。
ヘッドにはトンボの顎を用意。
前肢は蠍のハサミの様なアームを1対。
畳むと機銃の形状になる。
形状になるだけ。
何故なら飛ばす物がない。
中肢と後肢は無し。
無しというか、ヘリのタイヤがついている。
ここまでが頭部から胴体で、ほとんど輸送ヘリ。
ここから後ろ、昆虫だと腹になるんだっけか。
あの細長い節の部分は概ねトンボそのまま、でも飛竜の名に相応しいよう若干トゲトゲしている。
このトゲトゲしい尾に対する勝手なイメージは、たぶん4人協力の狩りゲーからきていると思われる。
こうして黒飛竜の加工が完了した。
流石に小さすぎたし、魔力の霧も充満しきっているので、放置されてるダンゴムシの蛻を素材として追加している。
大きさは1メートルくらいかな。
さて……。
「この余った球体どうしよう」
そう、追加したと言っても全体の2割いかないくらい。
丸いダンゴムシに対して、細長いトンボだからね。
中央にあった魔石の周囲から順に使っていたからか、ほぼ丸っと直径3メートル残っている蛻。
「出来れば、この黒飛竜が元気になり魔力を取り戻して来たときに追加で返してあげたいと思ってるんだけど」
「なんでしたらワタシの魔物袋に納めておきましょうか?」
「魔物袋?」
「はい。魔物が生まれ持つ異空間の収納です」
「じゃあ、お願いする」
「かしこまりました」