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不定期更新です。
料理は平皿に真っ白なライス。
それとカレーポットだっけ?
蓋の無い魔法のランプにカレールー入れる奴、それに入った真っ赤なスープ。
そしてビーカーに入った透明感のある黒い液体。
コーヒーだろうか。
研究所だからってってドリンクをビーカーに入れなくても……。
手前にスプーンが置かれている。
恐る恐る、スプーンで真っ赤なルーを少しすくい口に含む。
口に広がるスパイスの香り。
あぁ、カレーだ。
色は恐ろしい色だけど間違いなくカレー……か、かかかかかかかか辛い! そして痛い!
あわててビーカーのコーヒー(?)を口に含む。
直ぐ様痛みが引き、口内にカレーの風味が広がる。
ドリンク自体はコーヒーの様な違うような。
カレーの余韻が引いてからドリンクを飲んでみる。
コーヒーの様な香りとコーヒーの様な苦味にほんのり感じる甘味。
微糖コーヒーかな?
しかし、1口にも満たない量であの辛さ。
食える自信がない。
勧めてきたイクスさんを見ると届けられた真っ赤なスープに浸るパスタをフォークに絡めそのまま口へ運んでいる。
跳ねるスープが血痕のように白衣を染めていく。
無数の弾丸に撃ち抜かれたようにカッリスープが増えていく。
大剣でバッサリ斬られたように左肩から右脇腹にかけて一直線にカッリスープが描かれた。
確かに芸術的だ。
スープの跳ね方に神秘的な物も感じる。
どうやったらあぁなるんだ。
ボクは食べられない赤いカレーを放置し見入っていた。
イクスさんが食べ終えると戦場にでも行ってきたかの様な白衣が出来上がっていた。
「素晴らしい!」
ボクは思わず声に出していた。
「わかる!? やはり君とは気が合いそうだ。ってカッリ食べてないじゃないか」
「辛くて食べれませんよ」
「あぁ、ごめんごめん。食べ方を教えて無かったね」
食べ方?
食べ方で変わる物には思えないが。
「このグレイビーボートにビーカーのブラックハニーを加えて調節するんだ」
ランプの器はグレイビーボートというのか。
そしてビーカーは飲み物ではなくて辛さ調節用か。
うん、流石に言われなきゃわからないな。
「……けど、ずいぶん少なくないか?」
「ドリンクだと思って飲んじゃった」
「よく飲めたね。独特な味だったろ?」
「元の世界に良く似たドリンクがあったから」
「こんなドリンクが?」
「植物の豆を焙煎して砕いた煮汁なんだけどね。眠気を払うのに常飲してたよ」
「眠気ねぇ」
イクスさんはブラックハニーをマジマジと見ている。
味がにているだけでこのブラックハニーにカフェインがあるかはわからないんだけど。
てか、ハニーって事はコレ蜂蜜なのか?
ブラックハニーって事は黒蜜?
いや黒蜜だと黒糖だ……黒糖はこんな味じゃないな。
このカッリとブラックハニーは混ぜると不思議な事にそのまま飲むブラックハニー以上にカッリの辛味を抑える効果があるという。
少なくなったブラックハニーを混ぜていくと色も寝かせた黒カレーのようになり液状だったカッリにとろみがつく。
この不思議な反応を魔学反応というそうだ。
ふむ、地球でいう化学反応か。
食べ方が解ったから冷めきる前にカッリを食べてしまうか。
混ぜてとろみのついた焦げ茶のカッリをライスとともに口へと運ぶ。
口に広がるスパイスの香り。
やはり、これは。
「カレーだ」
「カッリね」
「故郷でも同じ味の食べ物があったんだよ。これが食べれるならボクは帰れなくても構わないな」
「お気に召したようで何よりだ」
「これってここでしか食べれない物? 他の店でも食べれる?」
「カッリザードとブラックビーを狩れれば家でも食べられるよ」
狩れればって事は生き物?
「それは魔物? 調理は簡単?」
「調理の必要はないよ。カッリザードは火山地帯にいる魔物でカッリスープはカッリザードの血液だ」
口に含んだカレーもといカッリを吹き出した。
「汚いなあ」
「血ィ!?」
「そうだけど、驚くような事かい?」
「予想外の食材だったってのと、この辛い液体を血液にしてる生物がいる事にびっくりした」
「ヒドラなんて毒だよ?」
そっか、ここファンタジーだった。
血液が毒な生き物がいるとは……。
いや待て鰻も血液に神経毒があった。
焼けば無毒になるんだったか。
どっかで上手い事調理して生で食える店もあるらしいが。
となると血液がスパイシーなのがいてもおかしくはないのか。
……難しく考えるのは止めよう。
ここは異世界、これが普通なんだ。
「ドラゴンの中にはマグマが流れている種族もいるしね」
本当に何でもありだな。
血抜きが大変そうだ。




