041 ボーリング
不定期更新です。
そもそも、色付きなら2m越えのがあるんだけど色付きじゃあいけないんだもんな。
取り出したのはボーリングの球サイズの魔石。
完全な無色ではなく、所々白い筋が見えるから完全な無色ではないんだけれど。
「なんだこのサイズは!?」
「どう? これも人に入る?」
「無理だな」
「そ、そんな事は無いんじゃないかな? きっと探せば10mくらいの人が」
「いる訳無いだろう! さっさと除名処分を取り消し、納品物に正当な額をつけて買い取れ!」
「そ、そうだね~。1コ1万で100万でどうかなぁ?」
ホルングランドマスターは冷や汗を流しながら魔石の金額を示してきた。
「おいおい、長く前線を離れたせいで金銭感覚がおかしくなったか? 同じ拳大の魔石を出すランクCの魔物、オーガだが、10万は軽く越える。1万でいいわけ無いだろ。ちゃんと鑑定しろ」
「は、はいぃぃぃ」
拳大の魔石を手に取り鑑定を始めた。
「み、見れない」
「なに?」
今度はヴィオさんが鑑定を始めるもやはり見れないようだ。
「仕方ない。ちょっと鑑定具をとってくる」
そう言って立ち上がろうとした時に、ホルングランドマスターが「あっ」と声を漏らした。
「どうした?」
「ここでは鑑定出来ないから本部に持ち込まれたんだった」
「何? ならレインを呼ぶか」
「レインお姉さん? 呼んで来ようか?」
「いや、ギルドカードで連絡できる」
ほほー、そんな機能が。
ギルドカードに魔力を通す事で空中にブラウザが表示され、ステータスや魔物討伐記録やらが見れる。
その中のフレンド機能からレインお姉さんを選択し、接続した。
が、一向に出る気配はない。
ヴィオさん曰く、けたたましく鳴り響いているらしいが。
「ったく、何してるんだ」
「昨日、お酒飲んでたから。それでかな?」
「昨日のいつ頃だ?」
「朝に飲んで絡んでたのは見た。ボクはその後寝ちゃったから」
「仕方ない。イクスに頼むか」
「え? イクスさん呼ぶの? 着替えて来ていい?」
「ダメだ」
「こんな格好見られたくないよ~」
「そうか。なら着替えてもいいが、ここで着替えるんだな。外に出る事は許さん」
「いいわよ。ほらガキは外にでなさいよ」
「何故だ?」
「何故って、子供とは言え男でしょ?」
「私はこの部屋でなら着替える事は許可したが、お前が着替える為に何故サムが出ていかねばならんのだと聞いている」
「ヴィオラちゃん。妹の裸を年端もいかない男に見られてもいいの?」
「構わん」
「ひどっ」
「そんな事より」
「そんな事!?」
「早くしないとアイツは転移スキル持ちだからな。転移魔道具を使用するのとは違い、直接この部屋に来れるぞ?」
「もう! ソファーの裏で着替えるからいいもん。コッチ見るんじゃないわよ! ガキっ!」
出ていくタイミングを逃した。
しかし、見られて困る衣装には見えないが、女子からしたら嫌なのかなあ。
そもそも、着替えはあるの?
「そういえば、ご姉妹なんですね」
「あぁ、力だけが取り柄の脳筋な妹だ。だからこそ冒険者ギルドのグランドマスターが務まるわけだが……さて、そろそろか。い・ま・だ、と」
ヴィオさんはギルドカードを取り出すと何やら操作をしていた。
「何したの?」
「んー? 何、先方にくるなら今だとメッセージを送ったんだ」
「へー、そんな事もできるんだ……え、今?」
ヴィオさんの後方に突如、金髪の爽やかイケメンが現れた。
「人造魔石があると聞いて来たんだけど、どこっ!?」
爽やかイケメンの眼前には下着に手をかけたホルンが硬直していた。
数秒おいて、ようやく状況を理解したのか、ホルンが声にならない悲鳴をあげた。
「おや? ホルンちゃんも来てたのか。元気してた?」
ホルンが半裸なのは完全スルーして挨拶する爽やかイケメン。
いや爽やか過ぎるだろ。
少しは慌ててやれよ。
ホルンは半裸のまま、ヴィオの胸ぐらを掴み、声に出ない訴えを続けている。
ささやかな胸がボクにも丸見えだ。
「それより、何か着たらどうだ?」
ヴィオの一言で漸く気付き、急いで部屋の外に出て行った。
だが、それは悪手。
何故なら、ここの外は冒険者ギルドホールだ。
部屋の外から男の歓声とホルンの悲鳴が聞こえてきた。
「やれやれ、あれでグランドマスターか。もう少し冷静に行動して欲しいものだな」
「いやいや、流石に可哀想だよ」
「ヴィオちゃん。妹をからかうのはいいけど、人を巻き込まないで欲しいかな」
「はいはい」
「それで? 人造魔石は?」
おそらく好意を抱いていたであろう男性に裸を見られたにも関わらず、男性の興味は人造魔石の勝ち。
あぁ、憐れ。




