034 喚ばれた
不定期更新ですよ。
「おや、目が覚めましたか」
「戻ってきたか」
「ずっとここにおりましたが?」
「いや、ボクが喚ばれてたんだ」
「呼ばれていた?」
「神様のところ」
そう、ボクは自称神と名乗る奴の元に喚ばれていたんだ。
「あれ? ここはどこだ?」
辺りは一面真っ白。足元には白いスモークが漂っている。
「まるで天国みたいだ」
『すまんかった』
声が聞こえた。
歳を召した声だ。
振り返ると着物の似合う白い髭の爺さんが立っていた。
「どうしたんですか?」
『ワシはお前さん達が言うところの神という奴でな。この度は召喚に巻き込んでしまって悪かった』
「巻き込まれ召喚だったのか。でも肉体が子供なのはなんで?」
『あの子達といい、最近の者は召喚の理解が早いのう』
「あの子達?」
『実は━━』
この自称神は創造神アーガスという。
ボクの他にも多数の子供がアーガスの世界のアハロという星に召喚されていた。
ボクの肉体、サム=クゥエルもその1人だ。
喚び寄せたのはアハロに住まう者。
召喚された者には望むスキルを与える事になっていたのだけれど、ボク……いやトージは巻き込まれ召喚だった為、その場をスルーして召喚されそうになっていた。
そして巻き込まれて遅れてアハロに直行したトージとスキルを授けられアハロに向かっていたサムは衝突、魂の入れ替えが発生した。
その時に所持スキルも幾つか分散したようだ。
「理由が解ったなら戻せないの?」
『気付くのが遅かった』
「?」
『アレをここに喚ぶ事は、もう出来ぬ』
サム=クゥエルが望んだスキルは魔物と魔物を合成して造る合成魔獣キメラを造り出すスキルだったのだが、そんなスキルは存在していなかったので、スキル担当の神が急造したのだ。
その際、2つを1つにする[合成]の神位スキルとして[キメラ]を。
形を整える[造形]の神位スキルとして[ゴーレム]を作成してサムに与えた。
名称は[名称不定1]と[名称不定2]にしようとしたが、サムにより[キメラ]と[ゴーレム]となった。
神位スキルはレインの言っていた上位スキルの遥か上のスキルだ。
地上のハサミでは切れる事はない。
そして金豈刀侍は[キメラ]を使い金豈刀侍の肉体をキメラへと変えた。
「え、ちょっと待って? ボクの肉体が何だって?」
『金豈刀侍の肉体をキメラに変えた』
「マジかー……マジかー……マジかー」
真っ白な天を見上げ肩を落とし、何かを思い耽り「マジかー」
顎を引き腕を組み、思い詰め「マジかー」
地面に手を付き、本気で落ち込み「マジかー」
『戻せない理由の1つは肉体での』
「1つ? まだあんの?」
『合成した相手の肉体のみならず、魂までも合成しておる』
「魂の合成?」
上位スキルはレベルが上がると出来る事が増える。
だがそれは決まっている。
誰が持っていてもレベル2で出来る事に変わりはない。
だが神位スキルはスキル所持者によって成長の仕方が変わる。
トージが望んだ様にスキルレベルが上がったのはそれ故にだ。
ただ、急造スキルであった為、【望み】のベクトルが低く、考えただけで追加されている。
サムが望んだのは[キメラ]で合成した相手の意識を消す事。1つの肉体に2つの魂、は邪魔だったようだ。
得られた能力は[魂喰]、相手の魂を喰らい相手の能力を全て我が物とする力。
「バケモノじゃん」
『このまま行くと次期魔王になりそうじゃ』
「それで?」
『何がじゃ?』
「戻せないなら、ボクを喚び出した理由は?」
『お前さんの肉体の近況報告と他の者に渡したのと同じ基本的なスキルを授けようと思うての』
「それだけの為に!?」
『後はお主に直接話がしたいと申している神がおっての』
「神様が?」
真っ白だった世界に扉が現れた。
『その先で待っとるようじゃ』
「ボクが向こうに行くんですか?」
『ほほぅ、神に足を運んで貰いたいと?』
それもそうだ。
「いえ、行ってきます」
『それにアヤツも手が離せんでな』
扉の向こうにいたのは、3徹でパソコンに向かっているワタシがいた。
あ、いや雰囲気がそうなだけで、実際にはもっとイケメンだ。
それに向かっているのもパソコンではなく、空中に浮かぶステータスパネルだ。
扉が閉まる音でこちらに気付き、椅子から立ち上がると、
『すまなかった!』
突然謝罪された。
「肉体の事なら、先程創造神に聞きましたよ」
『いや、[ゴーレム]スキルの事だ』
謝罪の内容はレベルアップの【望み】のベクトルが低いとはいえ[造形]に縁遠い能力を得た事だ。
そんな能力を得るに至った理由は、このスキル管理神スキットルが日々増え続けるスキルの管理に終われ魔が差したからだ。
なんでもボクの【望み】を聞いたら心が救われた気になり、気が付いたら[造形]と全く関係ないスキルを紐付けしていたんだそうだ。
「でも、煩わしいと思ったのは確かだし」
『だよな! 下界者自分の名を後世に残したい思いで次々スキルを造りやがって』
「いっその事、システムを変更したらいかがですか?」
『なんか案ある?』
「SPにしましょう」
スキルを使用し熟練度を一定値上げるとSPが貯まる。
それを使用してスキルレベルを上げるも良し、新スキル習得に使っても良し、新たなスキルを作っても良し。
何に使うかは当人しだい。
これなら強さを求める者はレベルに振るか習得に振るだろう。
そして新スキルを作る為には他のスキルの熟練度を上げ、SPを貯めなければ新スキルを作れない。
『悪くないかな。でも名称の長文化は防げないよね?』
「そこは、もうバッサリ断てば?」
『そもそも、仕様がこんな急に変わったら騒ぎになるよ』
「どこかで妥協は必要だよ」
『う~ん、でもなぁ』
「あ、じゃあ、ウイルス撒こうよ」
『ウイルスか……』
流石に神にウイルスばら撒く案は行き過ぎだったか?
でも他に思い付かないしなぁ。神様からのお告げ?
何か微妙なんだよね。
「普通は1日程度寝込んで、長文スキル作成者は5日とか寝込む様にすれば? その時は解らなくても、原因究明して判明するだろうし」
『憂さ晴らしには丁度いいね。うん♪ それで行こう』
徹夜続きの仕事が片付いた様にスッキリとした笑顔を見せた。
「そういえば気付いてる?」
『何かな?』
「スキル統合の事」
『悪かった。解除しておくよ』
「いや、そうじゃなくてね?」
スキル統合。
その能力は似たり寄ったりな能力のスキルを1つに統合し命名する能力。
普通に考えれば長文を短くする能力だが、変更後の命名に制限は無かった。
つまり、気が遠くなる程の超文にする事も可能だ。
『それは困る』
「やらないけどさ。さっき解除するって言ってたし、解除するなら統合・合成・想像も解除しといてよ」
『いいのかい?』
「次からはSPを消費してお願いするよ」
『早速、新システムに思考が移ってるか。良き傾向だ』
「そういえば、創造神はスキットルがボクに会いたがってるって言ってたけど」
『うん、そうだよ。謝罪したくてね』
「創造神には謝罪内容は話したの?」
スキル管理神スキットルの顔を伺うと冷や汗が流れ出ていた。
言ってないな、コレ。
『い、言う必要は無いだろ?』
「じゃ、ボクから報告しとくよ♪」
扉へと向かうボクの襟元をガシッと掴まれた。
『待て待て待て待て、何が望みだ?』
「お、話が速い」




