032 深緑蝗ダグリン
不定期更新です。
「この辺でいいかな」
緑ホッパーに股がり、再び森に入ったサムは森の奥深くサムはストレージから真珠の様な輝きのバスケットボールくらいの球体を取り出す。
「あれ? 外? あ、サム! 何か用?」
「あ、うん。回復薬を出して貰いたくて」
コイツは回復ボール。
その名からわかるだろうが、回復と名の付くものを好んで食べる変わったスライムだ。
そしてヒールの持つスキルに[回復薬生成]がある。
MPを大量に使うがそこは緑ホッパーに補助して貰おう。
そして魔石も緑ホッパーに造って貰うとして、ボクは薬草採取してこよう。
「という訳で、回復ボールは回復薬、緑ホッパーは魔石造っといてよ。それと緑ホッパーは回復ボールのMP回復もお願い」
「魔石は幾つ造れば宜しいので?」
「100石。そだ、やっといてくれたら蝗鎧機グリンの名と人型にして上げるよ」
「蝗鎧機グリン……フフフ、いい響きです。宜しい! 最高の魔石を造って差し上げましょう!!」
「あ、しまった。回復薬入れる容器がないや」
サムはその場に土製の一般家庭サイズの浴槽を造り出した。
「じゃあ、この中に回復薬入れといて」
そう回復ボールに伝えるとサムは森へと消えていった。
「いいな! ぼくも名前欲しい!」
「ならば結果を示せ! マスターが歓喜する回復薬を造るのだ!!」
「うん! わかった!!!」
「ワタシも限界に挑みましょう!!」
こちらは1人探索中のサム。
「しまった。[プロパティ]は1個ずつしか見れないのか。時間かかるなぁ。そうだ! 探知スキルとか無いかな?」
〔スキル統合が承認されました〕
「よっし! これで採取が楽になる」
暗くなってきたので光源ボールを取り出し、頭に乗って貰いながら採取を続けた。
光源ボールも元スライムの1体。
光を食事としている。
光合成とは違うのか解らない。
今度から昼間には外に出してあげようかな。
「ごめんごめん、遅くなっちやった」
探知を使い、緑ホッパーの方へと戻ると浴槽にはパール色に輝く回復薬が溢れるほど……というか溢れてる。
浴槽がパール色に染まってる。
勿体無い!
魔石は……うん、絶対100石以上あるな!
緑ホッパーを中心にここは宝物庫かっ!
て、くらいに魔石が散らばっていた。
「ストップ! ストーーップ!!」
「おや? マスターお帰りなさいませ」
「お帰り!」
「ただいま! そして、ありがとう!」
造り過ぎだけど、それはボクの為に頑張ってくれた事だから、怒りはしない。
ボクはそのまま言葉を続けた。
「これでランクアップは間違いない。後は回復薬を……1本何リットルだろ?」
浴槽ごと持っていく事も出来るけど、ギルドに迷惑だろうし、500mlのペットボトルくらいでいいか。
浴槽に手を着き、浴槽を材料にして回復薬を中に詰めた状態でボトルを製造する。
自分が普段手に持つサイズを想像したが、肉体がサムであるせいか、実際は300mlくらいのボトルになり、本数にして500本になった。
容器はただの土だった筈だが、溢れ出た回復薬が染み込んだのか、回復薬同様パール色に輝いている。
魔石は、っと1番小さくて握り拳くらい。
んで……1番デカイのがコレか。
……2mくらいの直方体、輝きはエメラルド、中心に銀河の様に渦巻く粒は魔力か?
確かに最高の魔石を造るとか言ってた気がする。
けど、こんな代物納品できる筈がない。
いや高く売れそうだけども。
こんな魔石、体内に納めてる魔物って体長何メートルだよ。
そんな魔物、目撃情報が無い事がおかしいだろうが!
まぁ、今回は張り切らせる様な事を言ったボクが悪いし、何より小物で100石以上ある。
大物はストレージの肥やしにするか。
「じゃ、今日から蝗鎧機グリンでいい?」
「蝗鎧機グリン、ありがたく拝命いたします」
「ぼくは? ぼくは?」
「ん?」
何の話か解らず、首をかしげる。
「回復ボールも名が欲しく、[回復薬生成]のレベルを5もあげましたからな」
「あ~、そ~ゆ~事。それで溢れる程に張り切ったのか。ありがとな。とは言っても直ぐには思い付かない」
「えっ! 頑張ったのに!」
「どんな名前がいいとかあるの?」
「んと! んと! グリン様みたいにカッコイイの!」
カッコイイのか……回復、治癒、治療、治療球、いや池療球パール。
やっぱり球体のイメージが取れないな。
「池療球パールでどうだい? 普段はパールって呼ぶからさ」
治療の治を池にしたのは、元がスライムだから液体をイメージする字を入れたかったんだ。
それにグリンの補助付きではあるけれど本当に池になるくらい回復薬つくれそうだし。
いや、グリンの魔力を考えると海?
「パール! ぼくパール!」
「気に入ってくれたようで良かったよ」
「命名が済んだようで、では約束を」
「あぁ、人型ね。顔とか身体はどんなのがいいの?」
「ジェイソンと同じで構いませんよ」
「わかった」
ジェイソンと瓜二つというより全く同じ顔が二人、ボクと一緒に行動するとなると少し気持ち悪く感じた。
「……顔は変えるね」
体格はジェイソンと同じく軍人、ジェイソンは好きだったアニメのキャラにしたけど、グリンはどうすっかな。
ボクのイメージ的には軍人というより執事なんだよね。
それも片眼鏡の執事長って感じの。
執事長ともなれば武芸達者というし、軍人執事のイメージで造ろう。
殺陸機ジェイソンほど、体積が無いから外装が中身スカスカになるな。
鎧と考えればそれでもいいんだけど、そうすると移動手段がなくなる。
そうだ、ストレージにいる誰かに魔石報酬でやって貰おう。
そうしよう。
グリンが本気出すとボク圧死するし。
そしたら完全に鎧にするか……。
「グリンは使いたい武器とかある?」
「武器、ですか?」
「ジェイソンの陸戦巨鎚も鎧兼武器だから、グリンのも要望があれば」
「では剣を所望いたします」
「剣ね。了解」
こうして、白い髭が良く似合う白髪の裸族が出来上がった。
しょうがないじゃん、服ないんだもん。
鎧は普段は大剣、で可変させて鎧になる。
鎧は基本色は深緑で赤いラインを入れたデザイン。
鎧と言ってるけど、見た目はファンタジーな鎧よりもSFなロボ寄りだ。
でもジェイソンほどゴツくないし、
レインお姉さんの家までは鎧を着ていて貰おう。
裸族つれ行くよりは良いだろ?
「マスター、バッタ形になれませんが?」
「人型にすると体積が心許なくなってさ。移動手段はストレージの誰かにやって貰おうかと思ってさ」
「ワタシはバッタ型を所望いたします!」
「あー、そう言えばそうだっけ」
そうだ、バッタ型はグリンが強く要望した形状だった。
「でも、その人型を作ると残りでバッタ型にするのは難しいんだよ」
「体積があればいいのですか?」
「そうだけど……」
まさか太るスキルがあるとか言うんじゃないよな?
「進化系統樹」
まるで、ボクが[ゴーレム]を発動させた時の様に光始めるグリン。
その光は次第に大きくなっていき、光源であるグリンまでもが肥大化しているように伺える。
光源がバスくらいになると次第に光が落ちていった。
そこにいるのは想像ついていたがバッタだ。
街中を走るバスの様に、子供が絵に描いたかの様に、キレイに直方体の体に肢が付いているバッタだ。
キレイに直方体だが、ちゃんとバッタの様でアゴが『ガプァッ』と開き、唾液が地面へと垂れている。
あれ? バッタに唾液ってあるんだっけ?
そして、地面に付いた唾液は『ジュワッ』という音を経てて地面を溶かしていく。
「危なっ!」
「おや、失礼を。どうです? これなら体積に困らないでしょう?」
あのアゴでどうやって日本語を話しているのか謎だが、話す度に唾液が飛散し周りの木々を溶かしていく。
正面に居なくて良かった。
「確かにこれなら充分だけど、何をしたの?」
「これはワタシのバッタの進化系統樹をコンプリートした時に得たスキル、その名も[進化系統樹]です。好きな時に好きな姿に進化・退化が可能なスキルなのですよ」
「ホントに何でもアリだな」
「ワタシもマスターに加工されて、出来るとは思いませんでしたが、試してみる物ですね」
「さっきのグリンには戻れるの?」
「可能ですね。あの蝗鎧機グリンはワタシのバッタの1つとして上書きされた模様です。代わりに元のバッタにはなれなくなりましたが」
「ごめん」
「大丈夫ですよ。まだ数百とありますから。むしろバッタに戻れる事が解ってなによりです」
「でもそれなら、ワザワザバッタ型を作らなくてもいいんじゃ?」
「……ハッ! 確かに!」
「夜とは言えさっきの光もあるし、とりあえず、人型と幾つかのパーツ分けるよ」
やれやれ、といった表情でグリンには言ったが、内心は好奇心で溢れていた。
だって、バスの様に大きな体だ。こ
れをこのまま人型にしたら、それだけで巨大ロボの完成だ。
どうしよう、どう加工してやろう。
いや待て待て、このまま巨大ロボにしたところで目立つ。
やはりパーツ毎に分けて合体させる方が……合体?
まさか念願の合体ロボが出来てしまうのか!?
やばい顔がにやける。
右腕:戦闘ヘリ
形だけ戦闘ヘリだ。
機銃やミサイルの発射台も形造ってはいるが発射する弾はない。
左腕:クルーザー
こちらも形だけ。
実際に水辺に行かないと浮くかもわかんない。
脚部:軍用SUV
人(?)が増えたし、移動手段として5,6人乗れるのが欲しかった。
胴体:キャンピングトレーラー
軍用SUVで牽引する事も可能なキャンピングトレーラー。
内装もバッチリ作っているが、冷蔵庫はただの箱。
コンロも火は出ない。
水道も水は出ない。
ただの飾りだ!
胸部:バッタ
いや、まぁそれがグリンの要望だし。
いつでもバッタになれるみたいだけど、バッタ型は作ってあげた。
~創造合体~脳内バックミュージック
軍用SUVは左右に別れ両足を形成!
キャンピングトレーラーが腰部と胴体を形成し、軍用SUVど接続!
戦闘ヘリがヘッドを肩として右腕を形成し、キャンピングトレーラーにドッキング!
クルーザーも同じくヘッドを肩として左腕を形成し、キャンピングトレーラーにドッキング!
そして背面より胴体のキャンピングトレーラーにバッタがドッキング!
バッタ上部より頭が飛び出し!
バッタの翅が開きウイングに!
バッタの腹部が下がりロケットブースターに!
(形だけだ!)
完成! 深緑蝗ダグリン!
という思想を抱きながら月が輝く夜の森で巨大バッタを加工していった。
そして加工が終わると同時に再び強烈な眠気に襲われ、ボクは眠りについたんだ。
深緑蝗ダグリン
その名の通りカラーリングは深緑、所々に赤いラインが入ってるよ。
ダグリンはダークグリーンだ。




