023 告白
「俺らでも傷つけられない乗り物があってたまるか! それに飛んでたんだぞ!? 空にきえたんだぞ!? あれは魔物だ! そしてお前は魔族だ!!」
「サム少年は魔族ではない」
「貴様、ギルマスに何をした!」
甲冑男はギルドマスターが魔族に洗脳でもされていると考えたのだろうか。
「いいから一度黙れ」
ヴィオギルドマスターは格段大きな声で言った訳でもないのに、ギルドは静まり返り、甲冑男は持っていた剣を床に落とした。
サムは甲冑男に近づき声をかける。
「ボク、ヴィオさんに何もしてないよ?」
途端、寒気に襲われた。
振り替えるとヴィオに鋭い視線を向けられていた。
なんでボク!?
「やはり高レベルだな。下位とはいえ、私の[威圧]の中心で動けるとは」
そんなスキル発動してたのかいっ!?
「双方に話を聞いて判断するとしよう。まぁ、お前達はしばらく動けないだろうからな。シローナ=アリーナ、イーチャル=モンド、この二人は治療室に運んでおけ」
ギルドの職員がギルドマスターの指示に即座に対応する。
「さて、すまないが君の確認は後回しだ」
と、応対室へと案内されサム視点で彼らとの遭遇について話した。
「先ほどの話にも出ていたが、君の乗り物は空を飛べるのか?」
「うん。飛べるよ。珍しいの?」
回転スキル持ちのダンゴムシを利用した車があるくらいだ。
飛行スキルを利用した飛行機くらいあると踏んでいたのだが。
「飛行スキルは、まだ不明点が多くてな。魔導具にしても制御が難しいと聞いていた」
「誰に?」
「生産ギルドのグランドマスターだ」
「それって、存在しないって言ってる様なものじゃない」
「生産ギルドは何となくわかるんだけど、グランドマスターって?」
「簡単に言えばギルドマスターは、支部の責任者。グランドマスターはギルドの責任者だな」
「てことは、ギルドのトップ?」
「そうだな。そして、魔導具収集家でもある。奴が知らない魔導具は無いと言い切れる程にな」
「ヲタク様」
「オタク様とはなんだ?」
「ヲタク、それはその分野に対しての最上位の敬称だよ」
これは、サムの個人的な発想による勝手な解釈だ。
理由としてはサム……いや、金豈刀侍はヲタクと呼ばれる事に憧れていた。
ヲタクの様に1分野でも知識豊富でいたい。
だが、金豈は記憶力が良い方ではなく、片寄った知識でも豊富と呼べるほど、身に付かなかった。
一度友人にから「お前ヲタクだよな」と言われて「恥ずかしいからやめろよ」と答えている。
自分はまだその境地に立てていない、故にその称号は相応しく無いという意味での発言だったが、友人は誤解した。
その日、一部の専門家達に[ヲタク]という称号が付与された。
勿論、生産ギルドのグランドマスターも含まれる。
「で、奴が無理と言っている物を何故サム少年が所持している?」
「あら簡単よ。魔導具じゃなくて、魔物だからよ」
「うんうん」と頷くサムだったが、ふと考えて気付いたのか、レインの方に視線を向け「え? それ言っちゃう?」と続けた。
「どうせ、見られれば解っちゃうし、黙っててバレるより先に言っちゃう方がいいのよ」
「それもそうか」
「魔物? だが、サム少年にはテイム系のスキルはなかっただろう?」
「[ゴーレム]がそうよ」
「耳にしたことの無いスキルだったが、テイム系スキルだったか」
ゴーレムは加工スキルであってテイムスキルではありませんよ?
「しかも上位スキルよ」
「その年齢でLv.91なだけはあるな」
「そだ。ねぇ、ヴィオ?」
「何だ?」
「生産のグラマスと知り合いなら、サム坊のスキルを鑑定して貰えないかしら」
「知り合いだが、無料でとはいかないぞ?」
「えー、ケチ」
「生産系のスキルがあれば話は別だが」
「なんで?」
「魔導具を作れそうな新たなスキルの情報となれば、向こうから鑑定したいと言い出すだろう」
「なるほど」
魔導具が作れそうなスキルか……。
「ん? 魔導具ってどうやって作るの?」
「すまないが、私は専門外だ」
「アタイもスキルは売ってるけど、魔導具の作り方までは知らないな~」
「生産ギルドに登録すれば教えて貰えるだろう。あとはセンスがあればだな」
「センス?」
「スキルはカネを積めば大抵の生産スキルは身に付く。だが、いかに高レベルのスキルを駆使して高性能の商品を作れても、見た目が悪ければ誰も買わないだろう?」
「あー、わかる」
緑ホッパーのセンスだと村に入れなかったけど、ボクのセンスならすんなり入れた。
あれは完全に魔物だから比較にはならないか。
「生産系スキルはレインに貰えばいいが、センスは人それぞれだ」
「誰があげるか! スキルだって無料じゃないんだよ!」
「そのセリフはそのまま、お前に返そうレイン」
「なんで?」
「鑑定も無料じゃない。それも生産ギルドのグランドマスターの鑑定ともなれば、超が付くほど高額だぞ?」
「うぐっ」
「お前も商売人なら少しは考えてから発言しろ」
「は~い」と言いながらブー垂れている。
「[ゴーレム]もそうだが、[ノコギリ]、[プロフィール]、[ストレージ]、これらも聞いた事が無いスキルだ。確かに奴に見てもらいたいが……」
「ハァ」と深い溜め息をついて発言を続ける。
「私からも依頼して確認したいスキルだが、奴の興味を惹けなければ例え億を積んでも動かないからな」
「あ、[ノコギリ]はわかってるわ。これは上位では無いもの」
「そうなのか?」
「[ノコギリ]は[ナイフ]の親戚、サムの地元特有の近接武器よ」
「工具だよっ!」と、ツッコミ入れようかと思ったが、ギア蟷螂やギア蝶などを武装シリーズとしている手前言い出せなかった。
「地元特有か……なら身元特定はすんなり行きそうだな」
異世界だから見つからないだろうけども。
もしかしたら、ノコギリ文化もあるのかな?
世界は広いっていうし……世界は狭いともいうか。
でもノコギリ文化は金豈の文化であって、サムの文化じゃないな。
ノコギリ情報はサム探しから遠退く。
違うな。
金豈情報がサムから遠退くのか。
…………………………………………………ダメじゃん!
何かを思い悩み、「ハァ」と深い溜め息をして覚悟を決めたように話し出した。
「先に謝っとくね。ごめんなさい」
「どうしたのだ?」
「ボク、サムじゃない」
「どういう意味だ?」
「そのままだよ。身体はサムだ。でも心……記憶は金豈刀侍と言う名の男だ」
「なぜ今そんな話を?」
「[ノコギリ]は金豈刀侍の記憶だからさ」
「そうか、サムに関する情報では無いという事か」
「そういう事。言っても信じて貰えないと思って言えなかった」
「それで、カネガイ=トージと言ったか?」
「あ、トージでいいよ」
「ではトージ、君は転生者か?」
「転生ってあるんだ……」
最悪、精神的な病気の心配をされるか、追放など色々覚悟して話したのにアッサリと転生者という単語が出て来てきた為、理解されて嬉しいというよりも安堵で気が落ち着いたを通り越し、落ち込み気味になる。
「似たようなものだとは思うんだ。でも前世で死んだ覚えは無いんだよね」
「私も転生者については詳しくは知らない。実際に見るのも始めてだ」
「そうね。大抵は詐欺師として扱われるわね」
「そうだな。だが、[ノコギリ]の様に途絶えたスキルを復活させる者もいると聞く。トージ、君は何年の産まれだ?」
「1984年だけど?」
何年産まれと聞かれたので、スッと西暦で答えてしまった。
「約二千年前。死の間際の記憶が無くとも生きてはいまい」
「うーん」
二千年経ってれば、文明も変わる。
もしかしたら変わり果てた地球なのかも?
いや、例え二千年経っても月は増えないし、魔法世界にもならないか。
そもそも年号も違うだろうし。
でも、これなら金豈情報を出しても怪しまれないかな。
「記憶を失くしているのだ。無理に納得する必要もない。まずは独り立ち出来るよう、レインの元で学ぶといい」
「そうするよ」




