019 ノコギリ
更新が遅いです。
というか、不定期です。
[語彙力]Lv.1だけど、読んでくれてる皆に感謝!!
「じゃあ、あのゴーレムは……ゴーレム? まさかこの[ゴーレム]は!?」
いきなり声を荒立てた。
「あ、うん。外のゴーレムはボクが造りました」
「坊やはそれがどういう事か解って言ってるのかい?」
「どういう事も何も、そのままの意味ですが?」
「魔物を造り出したと言っているんだ!!」
怒鳴られた。
「いえいえ、魔物を加工したんであってイチから造ってはいないですよ?」とは言わない方がいいかな。
凄く怒ってるみたいだし。
でも、何て答えよう……。
「はい、そうです」なんて言ったら殺されそうな雰囲気だ。
お姉さんにはあれが魔物に見えるみたいだし。
ま、実際そうなんだけど。
てゆーか、見る人が見たらあれがゴーレムだって解っちゃうのは不味いよな~。
それも後で考えよう。
んで、本題は……よし事故って事にしよう。
「違うよ!」
「何がどう違うってんだい! あぁ久々に上客だと思っていたら……」
上客って、ボクお金ないよ?
「魔物を造り出すなんて、悪魔の所業じゃないか!」
ほほぅ、この世界は悪魔が魔物を創造するのか。
でも、ボクの[ゴーレム]はそこまで有能じゃない。
目標にはしているけども。
「ボクの[ゴーレム]は形を変えるだけなんだ。それで土で練習してたら、飛び込んできた魔物が混ざっちゃったんだ」
お姉さんは考えこみ、しばらくしてから口を開いた。
「本当だろうね?」
「なんなら試そうか?」
「……そうだね。ならこいつで試してくれないか?」
空間に歪みが発生し、お姉さんがソコに手を突っ込み何かを取り出した。
収納系のスキルである。
サム自身もストレージを使用するのでそれほど驚く様子はない。
渡されたのは、銀色の金属塊だった。
銀……鉄かな?
丁度、土や魔物以外の素材も試したいと思っていたのだ。
これは願ってもないチャンス。
「まだ土でしかやったことが無いから失敗したらゴメンね」
「構わないさ」
「それで、加工するとして形はどうするの?」
「……ナイフがいいね」
「投げナイフ? 解体ナイフ?」
「なんでもいいが、……解体かな」
「りょーかーい」
解体ナイフ、地球でのサバイバルナイフを設計した。
背にギザギザのあるアレだ。
金属塊に対し[ゴーレム]を実行。
なんの問題もなく加工が完了した。
「これでいい?」
ボクが渡そうとする前に、お姉さんにぶん盗られた。
「危ないなぁ。ナイフなんだから気を付けてよ」
「確かにコイツはゴーレムになってないね……すまなかった」
「わかってくれたならいいよ」
「珍しい形状だが、この背はなんだい? いざという時にホルスターに引っ掛かりそうだが……」
「ちゃんと作られたホルスターなら引っ掛かったりしないよ。それは簡易ノコギリだよ」
「ノコギリとは何だ?」
あっれー?
ボクまた何かやらかした?
ノコギリが無い世界なんて無いよね?
だって、そしたら家とかどうやって建てるのさ。
「ナイフとかだと刃の通り難い硬いモノを切る道具だよ」
正確には削るんだけど。
「[斬れ味]を上げれば自ずと斬れるだろう?」
「え?」
何? まさかこの世界は何でもかんでもスキル頼り?
んで? [斬れ味]上げれば何でも斬れる様になると?
確かにそれならノコギリなんて要らなくなるか。
でも、それにはスキルレベルを上げなけりゃいけないんだろ?
ならば、実演あるのみ。
「実際に見て貰った方が早いかな。何か木材ある?」
お姉さんが再び収納スキルで直径10cmほどの棒を取り出して渡してくれた。
ナイフをノコギリに加工し直し、棒を斬って見せた。
ノコギリは昔から良くみる長方形タイプだ。
「時間は掛かるけど、その[斬れ味]を持って無くても斬れるんだよ」
「確かに、さっき見たときの坊やには[斬れ味]のスキルは無かったね……」
「限度はあるけどね。この金属より硬いモノは切れないだろうし」
「そうだ坊や。これもそのノコギリにできるかい?」
そう言って収納スキルで取り出したモノは銅だった。
何故に銅?
この話しの流れで何で金属でもやらかい方の銅?
「そいつはガルタイトと言ってね。属性持ちの金属の中でも硬度が高いモノなのさ」
そういえば、色は銅だけど軽い。
ちょいまち、属性持ち?
「属性って?」
「これは忘れてるか……」
金属には特有の属性を持ったモノがある。
例えばブレイズメタルは赤いメタリックカラーの金属で火の属性を持つ。
火の属性を持つと言っても、何も熱い訳ではない。
火系統のスキルや魔術を使う際に相性が良いと言うモノだ。
また、火に纏わる素材とも相性が良い。
「じゃあガルタイトは土系統のスキルと相性がいいのか」
「まぁね。今回はその硬度が目当てだけどね」
「でもいいの?」
「何が?」
「属性持ちって、高いんじゃないの?」
「高いのもあるけどね。コレは安いんだよ」
「そうなの? ならいっか」
先程は長方形タイプで作成したので、今回はホームセンターで良く見かける片刃の折り畳みタイプで加工した。
因みに替刃式。
折り畳みの支点がネジになっているので回せば外せる。
「さっきと形が違うみたいだが、これもノコギリなのかい?」
「そうだよ。さっきのは……まぁ、ノコギリの定番型なんだけど、コレは折り畳めるんだ」
持ち手のツマミを押し込み、折り畳んでみせる。
「ふぅん……良く出来てるね。ちょっと試させて貰うよ」
再度、収納スキルでモノを取り出した。
モノはどう見ても金属だった。
水色のメタリックカラー。
「金属を切るなら……」
声を掛けたが、既に斬りつけていた。
扱いはノコギリの押し引きではなく、剣の様に構えて振りかざしていた。
「なんだい、斬れないじゃないか」
いやいやボクさっき実演したんだから、同じ様にやってよ!
「正確には斬るんじゃなくて削る道具なんだ。ボクがさっきやったみたいにやらないと切れないよ」
「どうやってたっけ?」
「しょうがないなぁ」
でも先ずは金属を切るなら刃を変えなきゃ。
とは言っても替刃はまだ作ってないので、加工しなおした。
木材の時より刃のサイズを縮小するだけだ。
これは金属に限らず硬いモノを切る時のノコギリの刃並びだ。
刃の高さが低い方がいいのか、刃の間隔が短いからいいのか。
何でなのかは詳しくは知らない。
本当はお姉さんにノコギリを持って貰って、ボクが支える様にしてレクチャーするつもりだった。
でも、ボクの方が身長が低くてそれは難かしく、お姉さんの手を取ると手元が見えなくなる。
なので、ボクがノコギリで切るので、それをお姉さんに支える様にして貰い、どの様に力を入れているのか身体で覚えて貰った。
見ているだけだとわからないかも知れないが、ノコギリは引いて切る道具だからね。
それにしても、この体勢……背中にお姉さんの胸が当たる。
しかも押し引きのタイミングで何度も当たる。
正直ヤバイ。
見た目は子供なのに、中身のおっさんが出てきそうだ。
「だいたい解った。面白い発想だね」
「ボクのトコでは普通なんだけどな」
「普通ね……出身はどこなんだい?」
「えーと……」
日本って言っても通じないよな。
……あれ?
ボクって記憶喪失設定だったよね?
ボクのトコでは、なんて言っても良かった?
良くないか?
わからない……誤魔化そう。
「ごめん、わかんない」
「記憶喰いの被害者ってのは、本当に厄介なんだねぇ」
「ごめんなさい」
「坊やが謝る事じゃないさ。それにしても[ゴーレム]か、面白いね。坊や、カネが無いっていってたよね?」
「え? うん」
「その[ゴーレム]、売ってくれないかい?」
「やだ」
「そんな事言わずにさぁ~。10万ギルでどう?」
「だからイヤだって」
「ん~なら50万ギルだすよ?」
「ボクだってこのスキルは気に入ってるんだ! 手放す気は無いってば!」
「ん~? あぁ! そ~ゆ~事か。買取るのはレベル1分だよ?」
「え? そうなの? なら、いいかな」
「ありがと~。商談成立だね♪」
お姉さんは、ハサミを取り出して[ゴーレム]にハサミを入れた。




