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たしかに、私の力じゃ立ち上がる支えにもならないだろうけど。まじまじと見れば、自分と同じような特徴のないヒューマンの男で、立ち上がって埃を払う時に不自然に脚をもたつかせている
「脚、大丈夫ですか」
そう言うと、気づいたことに苦笑いを浮かべていた
「いや、大丈夫。ちょっと馴れてないだけで何とも」
大方、最近オーバーホールしたか取り替えたばかりなのだろう。ズボンの膨らみが不自然に細い箇所があるから義足を入れているのか、今時珍しくもない
「そうですか、お大事になさってください」
知らない相手も敬語もあんまり得意ではない、けど、とりあえずぶつかった申し訳なさに互いに「すみません」と言いながら去る男の黒い頭を見送った。
見れば、やっぱり多種多様な人々が入り乱れている通りに、私は立ち止まっていた
頭の中には、違和感が残る
ここは、違う気がすると言われた気がした
「ヤジのアイス、バリオルオイルかけてもらおう。そうしよう」
首を振って、考えを振り払うとアイスにかかる赤くて甘いオイルの事を思いながら歩き始めた
……
「王の選定が始まる。候補者は各地から集まるが、王は今回も既に決まっている」
中央都市、封王の広場。
円卓を囲む人々を前にして、一人の壮年の男が伝えた
「王の選定、既に完了した。王には一年の間に全ての準備を整えていただく」
「慣例通り、一年後の今日封じる」
「12の楔を解き放つ、我々の役目を果たすときが来た」
「次の選定員は、既に揃っている」
12人の人物は、それぞれ違った膨らみを持ったフードを頭から被っている。それぞれが口々に、言葉を発しては口を閉ざす
最後に最も奥にいる、フードのから声が上がる
「終の神が、訪れる前に王へ祝福を与える」
その言葉に、一同が揃って右の手を胸にあて口をつぐみ。一人、円卓の前にいた壮年の男だけが扉からそっと抜け出していった
12体の人形が座す。円卓の間を後にして