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たしかに最近視覚用の水晶の調子が悪くてオーバーホールした時、技師にはそろそろ買い換え時と言われた気がする
でも、今使ってる水晶と同じ黒水晶は採光の調節が優れている分、出回っている石もピンきりで、良いものは高いんだよなぁ
そんな事を考えてるうちに、ガゼットは目的地についたことを伝えるように二度三度エンジンを震わせて止まった
「相変わらず、人通りが凄まじいね。気持ち悪くなりそう」
ニルギリの店舗を置くのは大通りも最も人通りの多い場所で、道幅は広いのに人が多過ぎて、重機を入れようとすると許可の申請から認可がおりるまで時間がかかる上に、設置中は周辺店舗の営業もできなくなるとの事で金もかかるから、人力が一番安上がりらしい
らしいというのは、私が聞いたのは又聞きでよくわかっていないからで。人力とはいえ、時は金なりとニルギリへの挨拶はヨシくんに任せて袖まくりをする
「さてと、立地は聞いてたから。基礎打ちの鉄柱に柱がわりに生やすか……」
ヨシくんからは、ついてからすぐ図面を受け取っていたのでホントは平面図面が良かったが、ボタンタイプのホログラムタイプの図面を展開して見る。手のひらの上に乗ったボタンみたいなもののスイッチを押すとホログラムで図面が出てくる仕組みだが、水晶と相性が悪いのであまり好きではないだけ
まず、図面を読みながら、白いチョークで地面の上に幾何学模様を書き込む
そのまま、水晶に映る景色の波の中から必要な波を見つけてそれを地面の幾何学模様の上に繋ぎ会わせると、白いチョークの文字がぽやっと光、律法が成功したことがわかる
あとは、指定した律法の通り事象が改編されるのを待つ
その間、私は指定した律法に余計な波が繋がらないよう注意して見るだけだけど、これが一番眠い作業だったりする
「相変わらず、むちゃくちゃな式使ってんな。それで、よくまともに作用してんのが不思議だ」
ヨシくんが両手に出店の材料を抱えて声をかけてきた。たぶん、挨拶が終わったのだろう
「うー、教科書通りにしたら余計な計算式多過ぎてチョークがすぐなくなるからめんどう」
一応、律法には基礎があって基本の型というのは存在するけど、暗算できるなら途中式はすっ飛ばしても良いよねと言うような理由だったりする
でも、種族特性でヨシくんはそもそも律法の適性が低くて発動に至らないからなんとも言えないところだけど
そうこういってるうちに、律法の作用で出店の基礎が生えた。ニョキニョキと生えたので私の仕事は終了。
「今日も良い汗かいた、ヨシくんあとよろしく」
「よろしくって、お前はこの後水と火周りの基礎作るんだから待機だ、しばらくヤジのとこでも行ってアイスでも食って待ってろ」
ほいっ、と言ってヨシくんに投げられた銅貨を受けとると。組み立ての作業に入るらしいから暇潰しにでも行くことにしよう。
たしかに、ヤジのアイスは美味しいけどユルツのクレープも美味しいので悩む。手の中の銅貨は三枚、どっちかしか食べれない……そんな事を考えながら大通りを歩いていれば、人通りも多いわけで人にもぶつかるわけで、ぶつかる度に「おいっ」とか「気を付けろ、嬢ちゃん」とか言われた
やっぱり、ヤジのアイスにしよう方向転換した瞬間良い音を立ててぶつかった
「あっぷ、と、いったぁ」
「いっつぅ……」
相手の方がぶつかった勢いで、転んでいた
重くて悪かったな、と思いながら自分の不注意を申し訳なく思いしゃがんで手を差し出す
「すみません、大丈夫ですか」
「ああ、大丈夫こっちこそよく見てなくてゴメン」
尻餅はついていたけど、その格好のまま手を振られて大丈夫と言われれば、差し出した手が手持ちぶさたのまま手を引っ込めた。
タグが間違ってたら申し訳ないです
雰囲気小説なので、お好きに読んで下さい