2
「イズミ、まだ寝ぼけてんのか」
窓の外から隣のヨシくんの声がした
ぼんやりしすぎたのかもしれない、そういえば今日はヨシくんと祭りの準備を手伝いに行く約束をしていたんだ
「ゴメン、ヨシくんすぐ準備していくから待ってて」
カレンダーから、窓の下へ目をやれば隣の雑貨屋のヨシくんが茶色い髪をふりながらこっちを見上げてる
「ヨシくんじゃねぇ、ヨシュアだって。さっさと降りてこいよ」
「うん、わかったわかった」
「わかってねぇだろ」
そんないつものやり取り、隣のヨシくんは私より年上で物知りで青い角の生えたリザードマン、力持ちだ
こういう日は、いろんなお店から声がかかるから稼ぎ時だっていつも言っている
おんなじひょろひょろの見た目なのに、ヒューマンの私とは比べ物にならないのはそういう生き物だからと言っていたからだろう
手早く、髪を一つ髷にして顔を洗うと部屋着から動きやすいチュニックとズボンに履き替えて眼鏡をかける
階段をかけ下りれば、母がサンドイッチを包んでいてくれてる
「イズミ、出掛けるならご飯くらい食べていきなさい!」
「いい、お腹すいてないから」
「牛乳だけでも飲んでいきな」
母が差し出す、白いコップを一気に飲み干して飛び出す
ヨシくんはあきれた顔で、固そうな頬をかきながら呆れ顔で待っててくれる
「お前、今日は何時まで寝てたんだよ」
「十分前まで!」
どや顔で答えると、ヨシくんはため息をついてガゼットの後ろをたたく、町乗り用の自動二輪走行車は律法と相性の良くないリザードマンでも操縦しやすい蒸気エンジン式の機械だ
存在はファンタジーなのに、乗るのは機械というのはシュールな気もする
初めてでもないガゼットの後ろにヘルメット被って乗り込めば、小気味良いエンジン音と共に走り出す
「ヨシくん、今日は?」
「ヨシュアだっつうの。町の東側にあるニルギリの屋台の手伝い。あそこは、立地は良いけど重機が入れらんねぇから、律法と力仕事が要るって、金も良いし」
「相変わらず、お金だね」
「金は要るだろ、お前も水晶買い換えたいって言ってたじゃん」