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桜並木を、あなたと共に  作者: 真祖しろねこ
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~主と読書家の間で~

 教室に入ると大きなホワイトボードに座席表が貼ってあった。

 2人で横に並べるくらいの長さの白いテーブルが5席、それが4列で並べており、柚希様の席は一番左の列の前から3番目だった

「ふむ、端の列なのは嬉しいがヘレーネが前なのは少し残念だ」

「どういう意味ですの!?」

 前に座ったヘレーネ様が振り返る。

「騒がしくなるからだ」

 と、柚希様は口に人差し指を当てる

「あ、すいませんでしたわ」

 柚希様はあまり目立つのが好きではない人だ。ヘレーネ様もそれをわかってか口をつぐんだ

 僕たちは時間に余裕を持って来たため、まだ教室に人はまばらだった。

「ただでさえ君は目立つし、初日から敵は作りたくないだろ?」

「えぇ、そうですわね」

 少し肩身を狭そうしながら座った。




 数十分もすればほぼ全員が教室にやってきて、知り合い同士や、席が近い人たち同士での談笑が始まっていた。

 でも柚希様はあまりご友人を作ったりするつもりがないのか自席で本日の日程を確認している。

 知り合いのお嬢様に挨拶された時も軽く挨拶をしただけだった。

「柚希様はクラスメイトと交流を深めるおつもりはないのですか?」

「あぁない。画家に友はいらない。」

 きっぱりだった。僕としては母の言葉もあってか、柚希様にはなるべく多くの人と仲良くなって欲しいという思いはある。

 しかし所詮使用人にすぎない僕、それも雇ってもらったばかりなのにそこまで口出しするのもいかがなものかと思う。

 なのでこれ以上言及するのはやめた



「はーい、皆さん席に着いてくださーい」

 手拍子をしながら妙齢のスーツを着た女性が教室に入ってきた

 全員の着席を確認してからホワイトボードに『福田 紫』と書いた。

「今日から1年間、このクラスの担任を務める福田といいます。よろしくお願いします」

 白髪交じりの優しそうな女性は美しい一礼をする。

「早速ですがこれから入学セレモニーがあります。まずはホールへ移動しますので私についてきてください」

 福田先生が教室を出るように促すので次々と生徒と使用人が出て行く。

 どうやら今のところ男だとは疑われていないようだ。とりあえず安心だ。

「今のところ大丈夫そうだな。どうだ?疲れてるなら入学式くらい出なくても大丈夫だと思うが」

「いえ、まだ大丈夫です。せっかくなので参加しておきます」

 周りはみんな同じ年ぐらいなのでバレないか心配ではあるが、この調子なら思ったより大丈夫そうだ。

 美術科ということもあってか大人しそうな人が集まってる。男性慣れしてる人が少ないのであればバレる可能性は低くなる。

「何をぼーっとしている灯華、置いていくぞ」

「あ、すいません!すぐ行きます!」




 一度エレベーターで1Fまで降りた後、校舎の東側へ出ると体育館よりも大きいホールがあった。

 2階建ての構造で、2階はギャラリーになっている。

 今回は当然主役なのでホールのど真ん中に席が設置されていた。

「席は自由なので空いてるところからどんどん座ってください」

 柚希様はてきぱきと動いて端っこの席を確保する。

 僕はその隣の席に座る。

「隣、大丈夫?」

「えぇ、構いません」

 返事を聞く前には隣に茶髪の女の子が座っていた。

 たしか僕の後ろの席に座っている生徒だ。

 名前は確か・・・

神林かんばやし 霧架きりか様でしたよね」

「・・・うん」

 神林様は僕のほうを見ることなく返事をしてポケットから小説を取り出して読み始めた。

 どうやら柚希様と同じタイプのようだ

「それでは、ただいまより第6回--」

 入学式が始まったが神林様は読書の手を止めずに読み続ける。

 柚希様以上だったようだ・・・


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