~初登校2~
「あら、柚希じゃない」
正門近くで後ろから声をかけられたので振り返るとそこには金髪の女性2人がいた。
「ん?おぉヘレーネじゃないか」
どうやら左側の身長の高い美人の人は柚希様の知人のようだ
「奇遇ね。あなたもここにしたのね」
「まぁ狭い世界だしこういうこともあるだろうな」
ということは右側の小柄な可愛らしい女性が付き人だろうか。
「紹介しておく、当家の使用人で今回私の付き人をしてくれる灯華だ」
僕の紹介をここでするようなのでお嬢様の横に立ち、一礼する。
「初めまして。尾上灯華でございます」
柚希様のご友人は僕の頭から足元までじっくりと見る。
も、もしかして男だとバレただろうか
「なんて美しい人なんでしょう。大和撫子とはあなたのためにある言葉ね」
「そ、そんなことないです」
男なので撫子ではないです。ごめんなさい。
「私はヘレーネ・フリーデリケ・アウグスタ・ヴァルデック・ピルモントです。ヘレーネで構いません。こちらはユリア。挨拶なさい」
「はい、使用人のユリアといいます。今後ともよろしくお願いします」
待てよ。ヴァルデック家といえばドイツの名家だ。それも公爵家の上級貴族じゃないか
なんでそれほどのお嬢様が日本にいるのだろう、という疑問はあったが使用人の僕が尋ねるわけにもいかない
「まぁ話は教室に行ってからにしよう。初日から遅刻は勘弁だからな」
「えぇ、そうですわね」
柚希様はすっと歩き出す
「ところで柚希、トーカはいつ雇ったの?去年あなたのお屋敷に行った時にはいなかったわよね?」
ヘレーネ様は饒舌なのか、それとも再開が嬉しいのか、歩き出してまたすぐに話し出す。
「つい最近だ。私の付き人を探してる話はしただろう?私の友人からの紹介だ」
柚希様は足を止めることなく会話を続ける。
「そういえ探してると言ってましたね。運がよかったですわね。こんなに素敵な人が来てくれて」
ヘレーネ様の僕に対する評価がとても高いのはなぜだろう
「あー灯華、ヘレーネは日本が好きでな。大和撫子とか、おしとやかとか、そういうのが格別好きなだけなんだ。あまり嫌わないで欲しい」
その疑問は柚希様が解決してくれた。
「いえ、柚希様の友人を嫌うだなんてとんでもないです」
「まぁトーカは心まで美しいんですのね」
ヘレーネ様の目が眩しかった
「あんまりトーカばっかり褒めてるとユリアが悲しむぞ」
足を止めた柚希様は振り返ってユリアさんのほうを指差した。
「ふぇ?」
天然なのか緊張していて聞いてなかったのか、ユリアさんは状況がつかめずオロオロしていた。
「まぁ、クラスまで一緒なのですね」
校舎の前に貼ってあったクラス表を見てヘレーネ様は歓喜する。
が、柚希様は呆れた顔をしていた。
「何を言ってるんだ。君も私も、特別クラスに決まってるだろ。少し考えてみろ」
この学校には大きく分けて2つの学部がある。1つは普通科。そしてもう1つは美術科だ。
そのうち美術科には4つのクラスがあり、3つは一般受験を受けて合格した生徒。そしてもう1クラスは受験を合格した人のうち、お嬢様ばかりが集められて特別クラスだ。
当然学費なども普通クラスの生徒よりも数倍高い。その代わり、付き人などが認められている。
そもそも付き人の申請を出している時点で特別クラスなのは確定していたというわけだ。
「そ、そんなのわかってましたわ」
急に焦り始めたのですぐに嘘だとわかった。
「あんまり騒ぐな。目立つぞ」
ただでさえメイド服を着た付き人が居て目立っていたのに大きな声までだしたからか、僕たちは一般生徒から注目の的になっていた。
校舎に入って右側は普通科、左側は美術科となる。
創立してからまだ5周年ということもあってか、校舎の外観も内観も綺麗で、外観に関してはスイスのデザイナーがデザインしたこともあってか、先鋭的な造りをしていた。
円柱の形をした7階建て建物が2つ並べて建っていて、その2つを3階と屋上に架けられた橋で繋げていた。
1年生のフロアは4階のようなのでエレベーターで4階まで上がる。
「まさか柚希とこうして学校へ通う日がくるとは思ってませんでしたわ」
「あぁ私もだ。せっかくこうして同級生になったんだ。良い意味でこれから競い合っていこう。ヘレーネ」
「えぇ、そうですわね」