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桜並木を、あなたと共に  作者: 真祖しろねこ
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~和解と再会と~

 終わってみれば全てうまくいった。

 総裁である清廉様と和解したことによって、僕は清廉様に長光の一員として認められつつ、さらに家督をゆりさんに任せることもできた。


 そして恋仲である成川家の長女、柚希様との仲も認めてもらい、公認となった以上、ゆりさんは成川家が批難される行為はできなくなった。

 つまり、僕の女装がバラせなくなったのだ。

 僕の女装をバラした場合、誹謗中傷の矛先は間違いなく柚希様に向かう。しかしその柚希様は長光家の男子と公認のお付き合いをされているとなれば少なからず長光家にも被害が出る。

 長光家の名前に泥が付いて一番困るのは次期総裁が決まったゆりさんだ。

「ほんとにやってくれたわね・・・ここまで後手に回ったのは初めてよ・・・」

 ゆりさんはイスに座って顔を手で覆った。

「まぁ・・・とりあえずいいわ。強行手段に出た手前もあるし」

 とりあえず怒りは収まったようでよかった。

「学校、そのまま通うんでしょ?」

 ゆりさんは僕と柚希様に向けて問いかける。

「はい、そうしたいと思います」

 僕が柚希様の分も答えるとゆりさんは事業用の名刺ではなく、プライベートの方の連絡先が書かれたメモを渡してきた。

「何か困ったらすぐ連絡しなさい。出来る限りは助けるから」

 そのメモを受け取った柚希様はポケットにしまう。

「共犯者が増えるのは嬉しいが今回のこともあるしあまりあてにはしないさ」

「ふっ・・・生意気な義妹ができちゃったわね」

「美羽さんもありがとう、今日は助かりました」

 僕は改めて美羽さんにお礼を言う。

「ううん、元々は私のせいだし、ね。あと今日からあなたとはちゃんと兄妹になれたんだから美羽でいい」

「うん、ありがとう美羽」

「私のこともゆりでいいよ、家族になったんだし」

 こうして嵐のような夜は終わり、長光家の家督争いも終わって全てが円満で終わった。

 ゆりさんとも和解でき、学校での後ろ盾もできたのはこれからの生活でも大きい収穫となっただろう。

 軟禁生活は中々しんどかったけれど終わりよければ全てよし、かな。

「さ、明日の晩餐会もあるし今日はもう休みましょう。また明日ね、3人の妹たち」

 イラズラっ子のような笑顔を見せてゆりさんは部屋から出て行った。

「とりあえず一旦屋敷に戻ろう。ヘレーネたちも心配してるだろうしな」

「はい、僕もみんなと会いたいです」

 



 やっと帰って来れたんだ・・・と屋敷を見上げる。

 ちょっと感慨深くなりながらも扉を開けると同時に何かが飛び込んできて、僕は支えきれずに玄関で倒れ込んでしまった。

「灯華さん!!」

「ユ、ユリアさん!?」

 僕に向かって飛び込んできたのはユリアさんだった。

「・・・無事でよかったです」

 僕と顔を合わせた彼女の目には涙が浮かんでいた。

「心配をかけてごめんなさい。私はもう大丈夫です」

 ユリアさんの頭をそっと撫でる。

 そういえば柚希様は僕が攫われた件についてどうやって話をしたのだろう。

 いち使用人という身分で偽っているのでそもそも攫われる理由がない。

「ユリア、辛かったのは灯華ですのよ。あなたが慰められてどうするんです?」

 どうやらヘレーネ様も出迎えてくれたようだ。

「・・・ごめんなさい」

 ユリアさんはそっと僕から離れた。

「お気持ちはとても嬉しいです」

 あぁ、やっと帰ってこれたのだと実感できた。

「トーカ、大丈夫でしたの?乱暴とかされませんでしたか?かわいそうに。こんなに可愛らしい人に対して・・・」

 ヘレーネ様は犯人に対して相当な怒りを見せているようなので、ゆりさんの話はやめておこう。

「大丈夫です。食事とかも普通にできてましたから。基本的にずっと1人でしたし」

「トーカは心配をかけまいと隠し事をするから心配ですわ。PTSDなどもありますからメンタルヘルスに行きましょう。日本で一番の医者を探しますわ」





 2人との再開を喜んでいると玄関がノックされ、神林様と椿さんが入ってきた。

「灯華さん・・・よかった」

 神林様も椿さんも心配してくれていたというのがよくわかった。

「ありがとう。ヘリのチャーター代はあとで振り込んでおくから領収書だけ後で渡してくれ」

 どうやらヘリを手配したのは神林様たちのようだ。ということは・・・。

「神林様たちも私のために尽力なさってくれたのですか?」

「うん、大切な友人だからな。あとヘレーネやユリアも一緒に手伝ったんだ」

 そうだったのか、感謝しなきゃだな。

「とりあえず今日はもう休ませてやってくれ。本人は平気なフリをしてるが疲れてるだろうしな」

「ですわね。帰って来れたのだから時間はたくさんありますし、ユリア、帰りますわよ」

「はい。灯華さん、また明日」

「はい、また明日」

 嬉しそうに手を振りながら2人は帰っていった。




「疲れてるとこ悪いんだが、灯華にはもう1つ大切な話があるんだ。ここで話す内容でもないし私の部屋に移ろう」

 そうして僕と柚希様、それから神林様と椿さんも一緒に移動した


 

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