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桜並木を、あなたと共に  作者: 真祖しろねこ
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~料理長は灯華です~

 クリスマスパーティ当日、僕たちは全員でキッチンに集まっていた。

 本来なら僕がみんなの分の料理やらデザートを作ろうと思っていたのだが、神林様が「作ってみたい」と言ったのをきっかけにみんなで一緒に作ることになった。

 お嬢様方3名はあまり料理の経験がないとのことなので簡単に出来る物を用意してもらい、本職である椿さんとユリアさんには手の込んだ物を作ってもらうことにした。

 とりあえずお嬢様たちに手順の説明をするために簡単なレシピを用意した。

「とりあえずやることはここに書いてあります、イラスト付きですが目安程度にしてもらえればと思います。じゃあとりあえず生地から作りましょうか」

 僕はクッキーの作り方の載ったレシピを冷蔵庫にマグネットで貼り付け、材料を3人の前に置いた。

「簡単に言うと、卵にバターと砂糖と薄力粉を入れて混ぜれば生地になるのでそれを焼けばできます」

「あら、そんな簡単にできますのね」

 自信満々なヘレーネ様はやる気に溢れていた。

「工程自体はそんなにないということは細かいところで差がでそうだな」

 柚希様もとても楽しそうな様子なのでよかった。

 と、ここで神林様が無言なのに気づき、振り返ると黙々とメモを取っていた。

 提案者なだけあって本気で取り組んでいるようだ。

「それだけだと味気ないので普通のクッキーを作った後、チョコチップクッキーにも挑戦しましょう。とりあえず生地からです」

 僕はボウルとザルを用意して3人にそれぞれ渡す。

「まずボウルにバターを入れてほぐしましょう。ちょっと硬いので頑張ってください」

 3人はそれぞれ作業に取り掛かった・・・が、すぐに根を上げたのが1人。

「灯華、硬い・・・」

 力仕事の苦手な柚希様がすぐさま僕のところに持ってきたが、僕は受け取らない。

「せっかくですから最後まで自分でやりましょう。そのほうが美味しくできますから」

「・・・灯華がやったほうが美味しいだろうに・・・」

 不満はあるものの納得してくれたようで悪戦苦闘しながら柚希様も作業を終わらせる。

「じゃあ次は砂糖を入れて軽く混ぜましょう。その後、溶き卵を少しずつ入れながら混ぜましょう」

 



 次々と工程を進め、いよいよ焼く時がきた。

「型抜き終わりましたか?じゃあ焼きましょうか」

 あらかじめ180度に温めておいたオーブンに一番最初に持って来たヘレーネ様のを入れる

「このタイマーが鳴ったら完成です」

 このキッチンには全部で3台のオーブンがあるので全部が同時に焼けるな。

「あ、神林様もできましたか?じゃあ焼きますね」

 神林様からプレートを受け取って僕はオーブンの中に入れる。

「灯華、出来た」

 最後に柚希様のもオーブンに入れる。

「じゃあ後は待つだけです。私は他の作業をしてますのでタイマーが鳴ったら呼んでください」




「じゃあ出しますねー」

 僕はオーブンを開けて3人の作ったクッキーの載ったプレートを取り出す。

「おぉ」

「まぁ」

「おー」

 3人とも興味深々といった様子で自分のクッキーを眺めている。

「焼きたてのほうが美味しいですよ。1つ食べてみてはいかがですか?」

 決して上手にできたわけではない、それでも3人ともとても美味しそうにしていた。

「自分で作るとこんなに美味しく感じるんだな・・・たまには料理もよさそうだ」

「私が当番の日なら一緒にやりましょう」

「あぁ、藤田はダメって言いそうだし、こっそりそうしようかな」

「えぇ、是非。じゃあ今度はチョコチップ入りのクッキーをお願いしますね。最後、焼く前の生地にチョコチップを入れるだけですから」

 それだけ言い残して僕は自分の担当に戻る。

 包丁を使わないし目を離しても大丈夫だろう。




「灯華!できたぞ!」

「おわっ!」

 いきなり声をかけられて思わず持っていた苺を落としそうになった。

 駆け寄ってきた3人の持って来たプレートの上にはチョコチップクッキーが乗っていた。

「皆様とても上手です!じゃあそこのお皿に乗せて先にテーブルに運んでおいてください」

 料理が初めてと聞いていたけど、これなら包丁とかを使っても大丈夫そうだな。

 作りかけのケーキを見て閃く・・・これの仕上げをやってもらおう。




「じゃあスポンジは出来てますのでこれをみんなで仕上げましょう」

 作ろうとしていたのは6号のホールのショートケーキ。

「そういえばホールの場合はショートケーキはなんと言うんだ?」

「ホールでもショートケーキですよ。この場合のショートは『短い』ではなく『崩れやすい』という意味です」

 神林様の疑問に答えながらそれぞれの担当を決める。

「ヘレーネ様と柚希様はホイップクリームを作ってください、手順は後で説明します。神林様はスポンジの間にカットした苺を敷くので苺を切ってください」

 神林様に包丁と苺をボウルで渡す。

「・・・ヤッパは初めてだから緊張するな」

 と、小さく呟いた。

 その単語に反応したのは僕と柚希様のみ。思わず柚希様と目を合わせてしまう。

 そういえば神林様のご実家について聞いたことなかった。本人的に話したくなさそうだったから話題にならないようにしてた。

 今のも無意識に発してしまった言葉だろうし、聞かなかったことにしよう。うん。

「じ、じゃあホイップを作りましょうか」

 僕は材料とミキサーを用意して2人に渡した。









 

 




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