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桜並木を、あなたと共に  作者: 真祖しろねこ
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~初めての女装~

「ど、どうでしょうか」

 面接から2時間後、僕は女性服を来て藤田さんの前に立っていた。

あの後、書類にサインをし、正式に成川家の使用人となった僕は、先ほどの話を承諾し、お嬢様のお付として女装をして学校へと通うことになった。

 もちろん躊躇ったし、断りたかったが美羽様と電話をして話し合いの結果、止む終えずこの仕事を受け入れることになった。

 決め手となった言葉は「本当に女性として過ごすなら発見される率が下がると思います」だ。

「はい、どこから見ても女性にしか見えません。これならバレないと思います」

「やっぱバレますよねーははは・・・。え?」

 いやいや、僕は男ですよ?いくら女装してウィッグを着けたからと言って女性に見えるだなんてー

と思いつつ鏡を見るとそこには紛うことなき女性がいた。

化粧とウィッグでここまで変わるものなのかと驚愕した。



「尾上さんにはお嬢様のお付として学校へと通ってもらうのはもちろん、帰宅後や休日はもちろん使用人としての仕事をしてもらいますので。」

「はい、それは構わないのですが、本当に男とバレないでしょうか」

 見た目は女性に見えなくもない。ただやはり男には違いないので体つきや声でバレそうなものだが・・・。

「正直に申しますと、男性だと知らなければ、9割以上の人が女性だと思うと思います」

「そ、そんなに女性にみえます?」

「はい」

 ここまではっきり言われると男としての尊厳がなくなりそうで怖い。いやもう失いつつある。

「それではさっそくですが買い物をお願いしてよろしいでしょうか。近くの画材屋までです。車の免許は持ってるとのことでしたね。車庫にある車を使っていただいて構いません。普通車もあるので今回はそちらでお願いします。」

 藤田さんから車のキーを受け取る。免許は持ってるが実際に日本で運転したことないのでやや不安ではある。

「わかりました。では着替えてきます」

 着替えに戻ろうと与えられた個室に戻ろうとしたら肩を掴まれた。

振り返るとそこには柚希様がいた。 

「買い物にはそのまま行ってくれ。なに女装した状態でバレないための訓練だと思ってくれ」

 そう言うと柚希様は僕の頭の上から足の先まで何度も視線を往復させる

「驚いた。本当に女性にしか見えない」

「しかし本当にこれで行くんですか?バレてしまいそうなんですが」

「いや、大丈夫だ。私が保証する。行ってこい。命令だ」

 と、半ば強引に屋敷から追い出されてしまった。

「いいか、このメモの物を手に入れてくるまで入れないからな」

 念押しまでされてあとには引けなくなった



 車庫にはリムジンが2台と、黒のワンボックスカーが1台停めてあった。

おそらく送迎用と使用人用に分けられているのだろう。

 今回はただの買い物なので普通車のほうでいこう。

 女装ということで上はブラウス、下はスカートを履いている。今日は暑いし、日はまだ沈んでいないが一応ジャケットを上から羽織った。

 女性用の下着を付けてるし、これはもう変態の域に入ってしまっているのではないだろうか。

 しかし行く店までは車なので、道中は問題ないだろう。

最大の問題は店に入ってからだ。

 今回の目的地は画材屋。お嬢様はどうやら絵を描くらしい。それに必要な消耗品を買ってこいとのことだ。

 画材屋ということはコンビニやスーパーのようにお客を流れ作業では扱わないだろう。そもそも人がいなければ1対1になる可能性も高い。

 果たしてそれでバレないだろうか。

 まぁここで悩んでいても仕方ないし、さっさと行こう。

 初日なのだし、やらなくてはならないこともある。

エンジンを掛け、アクセルを踏み、ついに女装しての初めての外出が始まった。



 カーナビも付いていたので目的の画材屋までは迷わずに行くことができた。

カーナビの目的地を設定する時に画材屋の位置が記録されていたので、おそらく何度も成川家の使用人が行ったことがあるのだろう

 成川家の使用人の制服を今着ていないので成川の人間とは思われないだろう。

 案の定、画材屋の駐車場には車は1台も停まっていなかった。

 買うものはメモに書いてあるが、画材に詳しいわけではないのでパステルと書いてあるがわからないのでこのへんは店主に聞こう。

 メモと財布だけを持って画材屋に入る。

 広さは決して大きくないので、当然店主は入ってきた僕に気がつく。

 「いらっしゃいませー」

 レジ後ろでイスに座って雑誌を読んでいた店主は入ってきた僕を一瞥してまた雑誌に目を落とす。

 どうやらとりあえずバレなかったようだ。



 だが問題はここから。指定された画材を買うのに知識のない僕は店主に聞かないとわからない。

 意を決してレジ前までいく。

「あ、あの」

 できる限りの女性っぽい声をだす

「ん?どうしたお嬢ちゃん」

「画材を買いたいのですが、代理なのでどれを買えばいいのかわからないんです」

 僕は預かったメモを見せる

「わかった。用意するからちょっと待ってな」

 どっと冷や汗が出たが、どうやらバレなかったようで、店主は雑誌を乱雑に置いて売り場の方へ歩いて行った。

 1分もしないうちに店主はカゴに画材を詰め込んで戻ってきた。

「ほらよ、全部で6点、占めて9100円だ」

 思ったより画材って値段高いんだな、と驚きながらも支払いを済ます。

「毎度有り。嬢ちゃんもしかして成川さん家のかい?」

 バレずに帰れる。と思った矢先声をかけられて引き止められてしまった。

「はい、そうですがなんでわかったんですか?」

 バレる要素が1つもなかったはずなのに

「そのメーカーの画材をいつも買いにくるのは成川さんのところだけだからね」

「あぁなるほど、そうでしたか」

 できるだけ早く話を終わらせたかったが、成川家の関係者とバレたし、不自然に切り上げると今後に影響しかねないので気をつける。

「おっと、引き止めちゃって悪いな。今後ともご贔屓に」

 ニカっと笑った店主に一礼をしてから店を出る。

 車に戻ったが未だに心臓の鼓動が収まらない。



 バレなくて本当によかった。

画材の入った袋を助手席に置いて深呼吸を何度もして鼓動を正常に戻す。

 汗でムレるなこれ・・・

ジャケットを脱いでブラウスをパタパタさせて扇いでいると外から高校生らしき人物にガン見された。

「わわっ」

 まさか見られてるとは思わなかったので慌てて肌を隠す。

男だとバレただろうか。

 男子高校生は既に立ち去っていた。

 バレてないことを祈りつつ、お屋敷に戻るまで安心できないんだなと意識を改めた。

 

 


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