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桜並木を、あなたと共に  作者: 真祖しろねこ
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~失踪。奔走。手がかり。~


「お帰りなさいませ、ご主人様」

 今日、通算で21人目の旦那様をお席へ案内をする。

「君、可愛いね。写真撮ってもいいかな」

「申し訳ございません、お写真はご遠慮いただいております。こちらがメニューになります」

 何度目かわからない写真撮影の依頼を断ってメニューを渡す。

 最初は懇切丁寧に断っていたのだが、途中から断るのもめんどくさくなってきて適当にあしらうような形で落ち着いた。

「トーカ!次が来てますわ」

 ヘレーネ様に呼ばれ、僕は次のお客様を案内する。

 結果だけ言えば僕たちの喫茶店は大成功だった。

 他のところを見に行ってないからわからないが、これほど盛況なのはほかにないのではと思う。

 僕たちのクラスでは分担での作業をしていた。

 教室内でドリンクが作れないので家庭科室で作る必要がある。なので3つのグループに分けた。 

 接客担当、調理担当、家庭科室からドリンクを運ぶ運搬担当の3つだ。

「灯華、ユリアが戻ってきませんわ。確認してきてくださる?」

 今の時間の接客担当は僕とヘレーネ様、それから伊々田さんの3人だ。

「ユリアさんがですか?」

 確かに運搬担当のユリアさんがかれこれ10分も来てない。

 ドリンクが来ないのは問題なのですぐに確認してこよう。

「ちょっと見てきますね」

「うん、こっちは2人でもなんとかなるからよろしくね」

 伊々田さんにも離れることを伝えて僕は教室から飛び出た。

 文化祭が始まってからずっと教室に居たのでまず人の多さに驚いた。

「すいません!通ります!」

 まさに人の海をかき分けてなんとか階段までたどり着く。

 この状況下でエレベーターは不可能だと判断したからだ。




 なんとか家庭科室までたどり着くが、ユリアさんとはすれ違うことはなかった。

「ん?灯華じゃないか、どうした?」

 家庭科室には柚希様と神林様、それから椿さんと同じクラスの生徒2人の5人が居た。

「ユリアさんがオーダー取りに行ったっきり戻ってこないので確認に来たのですが」

「ユリアさんが?まだ戻ってないのか。とっくに戻ってるものだと」

 神林様曰く、5分も前にドリンクを持って戻ったそうだ。

 嫌な予感がする。事故に巻き込まれてないといいが・・・。

「オーダーは今から用意して私が持ってく。灯華はユリアを探してくれ」

「わかりました。すいませんがお願いします」

「ん、ユリアは頼んだ。あと椿は接客の方に行ってくれるか。灯華が抜ける分、あっちが辛いだろう」

「えぇ、かしこまりました」

 こういう時、柚希様の指揮力の高さを感じる。カリスマ性とでもいうのだろうか。

 喫茶の方はこのまま任せておけば大丈夫だろう。問題は居なくなってしまたユリアさんのほうだ。

 自分の仕事を放棄することなんてありえない、サボりではないとすると迷子の可能性・・・。

 これだけの人だ、小柄なユリアさんは思い通りに歩けず、人の流れに巻き込まれてしまった可能性もあるな・・・。

 文化祭実行委員に報告し、校内放送を借りようかと一瞬思う。

 いや、やめておこう。

 今このことが実行委員の知るところになれば最悪クラスの喫茶店が中止になってしまう可能性もある。もしそうなってしまった時、ユリアさんがどんな批難を受けるかわからないからだ。

 あと10分、探してダメだったら実行委員に言おう。

 もちろん事件や事故の可能性もあるので制限時間を設け、それまでにユリアさんが見つからなければ校内放送を使おう。




「私と同じ格好をしててーこれくらいの身長です」

「あー!わかった海外の子でしょ、さっきお盆の上にジュース乗せて歩いてたのを見かけたよ」

「ホントですか!?急ぎの用事があるので探してるんですが、どこで見かけましたか?」

「うーん、どこら辺だったかなーエスカレーターを上る列に並んでたんだと思うよ」

「ありがとうございます」

 片っ端から声を掛けて5人目でやっとユリアさんを見かけたという人を見つけられた。

 話では中央のエスカレーターで上に登ってるということなので探す範囲は家庭科室のある2階より上。

 おそらくユリアさんはエレベーターが混雑してるのでエスカレーターで移動してたんだろう。

 僕たちのクラスは4階だから、3階か4階のどちらかにはいるはず。

 でも戻ってないことを考えると3階か?

 3階で聞き込みをするとやはり見かけたという人が何人か居た。

「あーあの小柄の可愛らしいメイドさんね。えぇさっき見たわ。10分くらい前かしら」

「どっちに行ったかわかりませんか?急ぎの用事があるんです」

「うーん、ごめんねわからないわ。急いでいるように見えたから声を掛けたのよ。危ないわよって」

「わかりました、ありがとうございます」

 何人かに聞き込みをしたが誰も4階へ上るユリアさんを見ていない・・・。

 なら3階に居るのは間違いないんだが・・・。

 学校の案内図を広げて確認する。

 この階に使われていない教室なんてない、だとすれば全部の教室を回れば・・・あ!

 その時、あることに気がついた。

 この学校は普通科の棟と芸術科の棟の2つに分かれていて、3階と屋上の連絡通路で行き来できるようになっている。

 この学校の文化祭は特殊で、日程が2日間になっており、1日目は普通科、2日目は芸術科のクラスが催し物を開催することになっている。

 つまり2日目の今日、普通科の棟には誰も居ないということになる。

 スマホが振動したのでユリアさんが見つかった連絡かもしれないと思い新着メールを開くが、差出人は柚希様でユリアさんが見つかったかどうか確認の連絡だった。

 続けて神林様からも連絡が来る。

『何人かで手分けしてるけど全くダメだ。事故の可能性もあるし実行委員と教師に伝えるべきだと思う』

という内容だった。

『あと5分で見つからなかったらそうします』

 そう返信をして僕は2択を迫られる。

 あと5分で探すとなるとこの階の教室を回るか、向こうの棟に行くか。

 連絡通路に視線を移すと、廊下に何かが落ちているのを見つけた。

 封鎖テープをくぐり、近くまで行き、それを拾い上げる。

 それはつい先日、ユリアさんが僕の為に手作りをしてくれた髪ゴムの色違いだった。

 きっとお揃いを用意したのかもしれない。

 作り方やデザインが僕の貰ったものと全く同じなのでユリアさんの物なのは間違いない。

 確信した、ユリアさんは向こうの棟に居る。





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